25日、参議院で予算委が開かれ、国民民主党からの二人目のバッターとして、伊藤孝恵議員が質問に立った。

 伊藤孝恵議員はまず森友・加計両学園問題取り上げ、安倍総理の答弁を「国の総理として、あまりにセコイ答弁だ」と一喝。そして「会期を延長してまで政府が通したいセコイ法案が続いている」として、(1)残業代ゼロで働かせ放題の「働き方改革」関連法案(2)外資規制のないまま、五輪開催までになんとしてでもカジノを導入してしまいたいがためのIR関連法案、そして(3)自民党の現職議員を来年の選挙で救済するために、参院の議席数を6議席も増やすという公職選挙法改正法案、の3つの法案を挙げた。

「働き方改革」関連法案

 「働き方改革」関連法案については、立法事実とされていた定量データが虚偽のものだったことを取り上げ、「(高度プロフェッショナル制度(高プロ)の労働者側のニーズについて)法案要綱が示される前に行われたヒアリングが、ゼロだったことが判明している。これは言い換えるなら、立法事実がどこにもなかったという驚愕の事実だ」と指摘。
また「時間内に仕事を終えられない生産性の低い人に残業代という補助金を出すのも一般論としておかしい。産業競争力会議の出発点は経済成長。労働市場をどんどん改革しなければならず、高プロはその一歩」という、総理ブレーンで産業競争力会議の民間議員である竹中平蔵氏が新聞インタビューで語った言葉を取り上げ、「総理は労働者のニーズがあるからこの制度が必要だと言うが、パソナ会長でもある竹中氏は、堂々と、高プロの目的が過労死や長時間労働をなくすことでも、働き方の多様性・充実の確保でもなく、経営側のニーズだと明言されている」とこの法案導入の目的についての政府側の主張が詭弁であることを指摘した。

麻生財務相の発言(セクハラ罪という罪はない)とセクハラ問題について

 次に福田前事務次官が行ったとされるセクハラ行為に関連し、「セクハラ罪という罪はない」という発言を閣議決定したことが事実かを尋ねた。これに対し麻生財務大臣は、「法律的にはない、ということを申し上げた」と回答。伊藤議員は、「ここは立法府。セクハラ罪という罪がないのだったら、そういう罪を作る必要があるんじゃなかろうか。そういったご検討はされないのか」と麻生大臣の姿勢をただした。

 またILO(国際労働機関)が今月8日、“Me too”運動が世界的な広がりを見せていることを受けて、来年の総会で性暴力やセクハラ等を国際的に禁止する新たな条約の制定を目指す旨を発表したことを取り上げ、「日本ではくだんのセクハラについて麻生大臣が、『女性にはめられた、という意見もある』等と発言するなど、この国が抱える問題の根深さを世界中に露呈した」と述べた。セクハラ防止対策については、雇用機会均等法第11条および指針で事業主に対し、就業規則への明記や相談窓口の整備など一定の義務が盛り込まれてはいるものの、不十分な点は否めないと指摘。政府が最近打ち出した緊急対策についても、省庁幹部への研修の義務化や現行制度の周知にとどまり、実効性のある法整備は見送られている、とした。「現行法では、自社の労働者が他社の労働者にセクハラをしても特段義務は生じない。自社のみならず他社の労働者についてもセクハラをしてはいけない。この当たり前のことが、現行法上、抜けている」として男女雇用機会均等法をさらに法改正することを提案した。

児童虐待防止策について

 児童虐待問題では、「子どもの安全をまず何よりも優先することが最重要であり、そのために時には親から子どもを引き離す必要があることは論を待たない。目黒区の虐待死のケースは間違いなくそういったケースだった」と述べた上で、「しかし多くの虐待事案の場合、親から引き離しただけで本当に子どもが幸せになれるのか」と疑問も呈した。「まず子どもの安全を確保した上で、親には自らを変えるチャンスを与え、家族の再統合を図る制度も必要なのではないか。親権を制限しつつ、親にそうしたセカンドチャンスを与える制度というのが今の日本にはない」と指摘した。

 さらに児童の保護について「児童福祉法に規定されており、親権者が同意しない場合、28条により家庭裁判所が里親委託や施設入所を承認。ここから民法の規定がパタッと適用され始め、親権停止から親権喪失、養子縁組の要件認定などの手続きを踏むこととなる。この制度には『のりしろ』がなく、親権と監護権の概念も曖昧であることから、現場が委縮している、との指摘もある」と述べた。「民法を改正し、児童福祉法との連続性を持たせる、ないしは児童福祉法のレールを特別養子縁組まで伸ばし制度を再構築するなど、抜本的な議論が必要だ」と主張した。

 また児童虐待により亡くなった子どものうちゼロ歳児の割合が約46%にも上り、このうち生まれてすぐに命を奪われた赤ちゃんが約18%も占めていることを指摘した上で、「家族観、宗教観を乗り越えてよく議論する必要がある。妊娠した母親が匿名で出産でき、子どもが後に自分の出自を知ることが出来る『内密出産』制度を検討すべきではないか」と提案した。