1強政治では今までの戦い方は通用しない。
 高プロ反対を貫きつつ、労働政策審議会で議論する労働環境の課題を「付帯決議」として盛り込んだ。
 これが国民民主党の働き方改革審議での国会論戦

 働き方改革関連法案について参院厚生労働委員会で野党筆頭理事として委員会運営にあたった小林正夫議員に話を聞いた。

――難しい委員会運営だったと思う。国民民主党としてはどういう方針だったのか。

 働き方改革関連法案は70年ぶりの労働基準法の大改革で、働く社会に今後大きな影響を与える法案。国民民主党は、働き方に関する様々な検討を重ねてきた。

 今回の法案の重要なポイントは、大きくわけて2点ある。

 私たちが理解できると受け止め、実現すべきと判断した点は、時間外労働の上限規制を設けることや、中小企業の時間外労働の割増率を大手並みに揃えることなど。これらは理解できる、通すべき内容と判断した。

 一方、過労死を促進する高度プロフェッショナル制度(高プロ)導入はどうあっても認められない。高プロが入っている以上、この法案には反対という立場で臨んできた。そして審議の終盤になり、法案に反対の立場を貫きつつ、「付帯決議」を付けることが大変重要だという認識に至った。

 働く人たちの労働条件を守るために、法案に反対すると同時に、これからの法律の内容審議を労働者の立場にたってしっかり縛る付帯決議をつけることが重要と判断し、委員会内で厳しい協議を進めた。

 ――付帯決議ではどういう点をしばるべきと考えたのか。

 高プロという、将来に禍根を残すような制度について、国民民主党は大臣からきちんとした答弁を引き出すため集中して審議に臨んだ。しかし、大臣はきちんとした答弁をなかなか行わない。今回の法案は8本が束ねられており、そのうち60以上の制度が今後、労働政策審議会にかけられ、省令をつくっていくというもの。だからこそ大臣は、今は踏み込んだ答弁を行わない。こういう状況の審議だった。

 従って法案を提出した責任者として不充分な答弁ということで、厚生労働大臣の問責決議案を提出したが、残念ながら本会議で否決された。問責決議が否決されたあとも、審議を続けるべきだと私は主張し、28日の法案質疑が実現した。この段階で与党として採決したいと強く言ってきた。

 仮に法案は成立したとしても、これから労働政策審議会などで、省令作成に向けた法律の内容を審議していくことを考えると、労働者代表がしっかりと審議できるように十分な付帯決議をつけることが重要だと判断した。この点を与党にも理解させつつ、国民民主党として、実質的に労働者のためになる交渉と対応に腐心した。

 きめ細かく、何が課題で何を検討すべきかを書き表すために整理を進めた結果、47の項目について付帯決議をつけることを勝ち取った(詳細PDF参照)。

 法案が成立したとしても、それでおわりではない。むしろ具体的な内容審議の方が極めて重要だ。その意味で、付帯決議に、与党も賛成させて採択したことは大きな一歩だと思っている。この付帯決議を橋頭堡にして、これから労働政策審議会で審議が行われていく。働く者の代表として、付帯決議の内容を実現するために、今後も労働政策審議会の審議を注視するとともに、場合によってはしっかりと関与し、労働法制の内容を詰めていく決意だ。

――今後の労働政策審議会の議論を適切なものにするため「付帯決議」での縛りを優先したということか。

 その通りだ。国民民主党は、十分な付帯決議をしっかりつけさせるということに全力を傾注した。しかも、与党も賛同させる、そして採択させる。このことが何より重要だという認識に立って、付帯決議を提案し、28日の採決のあと、付帯決議を採択させた。その結果、今後の政省令の策定において、与党もその内容を守らなくてはならなくなった。そこに付帯決議の意義がある。

 なお、理事会において、立憲民主党からも付帯決議に賛同し、提案者になりたいとう申し出があった。しかし、立憲民主党は参院厚生労働委員長の解任決議案を出していたことから、その解任決議案が吊るされたまま、取り下げられない状況では、付帯決議の提案者になることはできなかった。最終的には参院厚生労働委員長が、委員長議事整理権に基づく判断で提出会派が決まったという経過だ。

 残念ながら数の論理で法案を否決はできなかったが、付帯決議をつけることで、今後やるべきこと、あるいは働く皆さんが求めることを明らかにして、これからの労働政策審議会などでしっかりとした審議をできる基礎を作れることができた。法案には反対しつつ、一歩前進ができたのではないかと思っている。

 私が強調したいのは、反対法案ではあったが、時間外労働の上限規制など、大事なところは通しつつ、今後議論しなければならない点を与党を説得して付帯決議をつけ、拘束することができたということ。

 極めて与党が強い状況での国会運営では、今までの野党的手法は通用しない。そんな中で、民意をしっかり反映させるために、付帯決議で与党を拘束するやり方は、適切な戦術の一つだと実感した。参院の野党第1会派として、国民民主党の責務を果たせたと思う。

 ――ありがとうございました。

付帯決議について

働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案に対する付帯決議(参院厚生労働委員会)