「フレームなき未来」——政治と情報のあり方を考える_200696_後編_07_角田陽一郎氏(左)と玉木雄一郎代表(右)

角田陽一郎氏(左)と玉木雄一郎代表(右)

「新しい政治の流れを作る」をコンセプトに、政治家・玉木雄一郎が各界で活躍するゲストを迎え、約束事なく遠慮なく、本音で語る。第2回ゲストは、バラエティプロデューサーの角田陽一郎氏。長きにわたりTBSで人気バラエティ番組を手がけ、2016年にTBSを退社後独立。「バラエティ=色々やる」という、本来の意味でのプロデューサーとして活動する角田氏とともに、情報革命によって「フレームなき時代」となった今を踏まえ、政治と情報のあり方について語った。(後編)

前編はこちらです


角田陽一郎(かくた・よういちろう)
1970年千葉県生まれ。バラエティプロデューサー。94年東京大学文学部西洋史学科を卒業し、東京放送(TBSテレビ)に入社。『さんまのスーパーからくりTV』でディレクターに昇格し、さらにチーフディレクターとして『中居正広の金曜日のスマたちへ』を立ち上げるなど、数多くのバラエティ番組の制作を担当。2016年12月にTBSテレビ退社。明石家さんま氏、いとうせいこう氏、水道橋博士氏、キングコング西野亮廣氏などの人気芸能人や著名人と親交を持ち、現在も革新的なアイデアを基に、さまざまなビジネスを創造し続けている。近著に『13の未来地図 フレームなき時代の羅針盤』(ぴあ)、『運の技術 AI時代を生きる僕たちに必要なたった1つの武器』(あさ出版)などがある。
https://kakutayoichiro.themedia.jp

玉木雄一郎(たまき・ゆういちろう)
1969年香川県生まれ。国民民主党所属の衆院議員、国民民主党代表。東京大学法学部卒業後、1993年に大蔵省(現財務省)入省。1997年ハーバード大学ケネディスクール修了。2005年に財務省を退職、衆院選に出馬し落選。2009年に初当選し、現在4期目。
https://www.tamakinet.jp


■メディアの情報は「おもしろ編集」化している


「フレームなき未来」——政治と情報のあり方を考える_200696_後編_08

角田: 玉木さんが前述された、「テレビが何回も同じような映像を放送する」ということですが、ポジティブな内容であれ、ネガティブな内容であれ、僕も本当に良くないことだなと思います。だからテレビが変わらないと駄目だなと思って、長く勤めていたテレビ局を辞めて独立したんですけども。変えようと思いましたが、変わらなかったんですね。その変わらなさを僕は、「一部上場企業病」と呼んでいるんですけども。

玉木: なぜ変わらないのですか。

角田: テレビ局に入社する方というのは、大体において優秀なんですよ。高学歴で、なおかつ学歴だけではなく、忖度力も半端ない。熾烈な面接をくぐり抜けて勝ち残っているので。

玉木: 忖度力。最近、最も求められる能力ですね(笑)。

角田: その忖度力が、半端じゃないんです。そうすると何が起こるかと言うと、「角田の言う新しい企画の重要さは分かるんだけどさ」と裏では言ってくれるのに、いざ会議になるとその新しい企画が通らない。別に、僕の敵にはならないんですよ。でも、「お前の言うことは、いつも正しいな」とは言ってくれるものの、「ってことで、もうその話はいいから、早く今期の売り上げを出して」みたいな、そういう“いつも目先のことだけ処理する話”の連続になってしまう。

玉木: 視聴率3冠王をどう取るか、みたいな。

角田: そういう話になっちゃうんです。テレビ局だけじゃなくあらゆる一部上場企業は、その集合体じゃないのかなと思っていますね。それも先程の話と同じで、日本が今イケイケドンドンなら、忖度で動いていけば、政治も経済もいいと思うんです。でも今年の夏なんて40度を超える猛暑が続いて、もう未曽有の状況ですよね。「新国立競技場にクーラーを付けておけば良かった」って、全員思っているんじゃないでしょうか。でもそれも、この夏の気温を体験する以前に決められたことだから。

玉木: だから、変えればいいんですよね。

角田: そう、変えればいい。僕は、そこは関心を持たせることができれば、変わるかなと思っています。だから、どう関心をどう持たせるか。ブームは作れるものだと思うので。

玉木: 私は今、「永田町のYouTuber」と称して街に出て、街の人の意見を聞いて動画でアップしているんです。YouTube公式チャンネル「たまきチャンネル」(https://www.youtube.com/channel/UCLJNZ7osIjNix4bbkM-rj5w)というのをこの夏に立ち上げまして。例えば新橋のSL広場へ行って、通りすがりの方に「私のことを知っていますか」とお聞きして、認知度調査をやってみたりして。結果、26.8パーセントでした。

角田: いい数字ですよね。

玉木: 数字としてはいいんですけどね。でもそれで気付いたのは、私のことを認知している方の多くは、「YouTubeを見て知りました」とか「橋下徹さんとの対談したネットテレビで知りました」とか、どのメディアで認知しているのかというとネットで、テレビは一人もいなかったんです。
 そういうご意見を聞くと、ネット社会での認知や世論は決して無視できなくなっていると改めて実感しますね。同時に、その裏にある、毎日バンバン流れている地上波のテレビ番組は一体何だろうと思えてしまいます。例えば予算委員会とか党首討論とか、NHKで国会中継をずっと放送するじゃないですか。そのときに言い合いになったり、騒ぎになったりした場面が切り取られて、夜の報道番組で取り上げられる。これまでは、「いかに報道番組に取り上げられるか」によって、認知度と支持率が上がるというビジネスモデルだったんですよ。でも今や、地上波で訴求している人は、もはや一定層だけですよね。

角田: テレビ側はなぜ、不偏不党でなければいけないのでしょうか。放送法4条というのはもちろん理解していますが、もう少し根本から議論してもよいのではないかと。例えば「この放送局は自民党完全支持」とか、「ここは国民民主党完全支持」とか、それが視聴率と直結しているほうが、僕は皆が政治に興味が出てくると思うんですけども。おそらく、YouTubeのほうでの認知度が高いという結果は、その表れではないでしょうか。

玉木: 私自身も、テレビでの切り取られ方をもっと変えたいんですが、「この切り取り方が一番視聴率につながる」というフレームの中で、ずっと報道番組は作られているのではないでしょうか。
 以前、安倍総理と国会の予算委員会で北朝鮮のミサイル問題について議論をしました。それは本質的な議論で、「トランプ大統領は、米朝首脳会談で、アメリカに届く大陸間弾道ミサイルをやめろと必ず言うだろう。でも日本にとって問題なのは、東京に届く1300キロ飛ぶノドンと、主に西日本を射程に置いているスカッドER(いずれも中距離弾道ミサイル)だ」と。北朝鮮に大陸間弾道ミサイルをやめさせても、日本まで飛ぶ中距離ミサイルが残っていては、わが国への脅威は変わらない。「朝鮮半島の和平が進んだから、あとは日本が金を出してくれとアメリカから言われても、そんなのは1円だって出すべきではない」と言ったんですね。
 ところがそのときに、総理の隣に座っておられた麻生財務大臣が、「この人は、言いたいことだけ言っているんだよ」とやじを飛ばして、それが放送された。すると夜のニュースでは、ミサイル防衛の本質的な話は一切なくて、「やじを飛ばした麻生さんに怒った玉木」みたいな図式になっている。

角田: それは僕らのようなテレビ側の人間から言うと、「おもしろ編集」なんですよ。テレビ番組では、「おもしろい人しか出られない」というセオリーがあるんです。さらに言うと、おもしろい人には2種類あって、「おもしろいことを言う人」と、「おもしろいことを考えている人」。でも後者は、テレビでは“尺を食う(時間が取られる)”んですね。
 なので、おもしろいことを考えている人は、テレビには出られない。先程の玉木さんと麻生さんのように、言い争いのシーンだけが短く切り取られる。例えば「角野卓造じゃねえよ!」なんていう芸人さんのフレーズは、どうだっていいことなんですけども、でもそういうおもしろそうなフレーズばかりテレビで流れるというのは、結局、そういうおもしろいことを言う人しかテレビに出られないという現れなんですね。
 僕がTBSでずっとプロデュースをしていた『オトナの!』という、いとうせいこうさんとユースケ・サンタマリアさんがホストのトークバラエティ番組があるんですが、そこではあえて、「おもしろいことを考えてる人」にしか出演オファーをしていません。おもしろいことを考えている人が、どれだけおもしろいことを考えているかを伝えるには何週もかかるので、3週でも4週でも放送するというスタンスでやっていました。でも報道番組ですら、テレビのセオリー通りで、おもしろいことを言う人しか出さない。つまり、報道でも「おもしろ編集」だけをやるようになっちゃっているんですよ。

玉木: 報道がバラエティー化している気がします。

角田: それも、パソコンの進化のせいなんですよ。みんながパソコンを使って、自分で簡単に編集ができるようになったせいです。それまでは録画したビデオテープを編集室で編集していて、一回編集したものを直すのは時間がかかりました。なので直しが出ないよう、緊張感をもって編集をしていたんですね。「もっと文脈を捉えて編集しなければ」と。

玉木: それが、今は誰でも簡単に、シュルシュルと編集できるようになった。

角田: となると、玉木さんと麻生さんのやりとりも簡単に編集出来てしまうし、それが「おもしろ編集」になるんです。
 つまりそれは、ヒップホップ文化とも言えますね。ヒップホップというものがこの世に誕生してから、文学もテレビも音楽も、多分ヒップホップ化したんです。もしかすると、そういう意味では政治も。偶然の成り行きの政治家のひと言が、切り取られてしまうという状況がメインになって、むしろおもしろいことを言う政治家ばかりが人気になって、おもしろいことを考えている政治家の人気がなくなってしまっている。そういう傾向が強くなっていることが、政治の今の問題なんじゃないかなと思うんですよね。

玉木: そのヒップホッパーの典型は、トランプ大統領ですよね。

角田: そうです、まさに仰る通り。

玉木: 毎日Twitterでつぶやきまくっていて、ファンキーですよね。でもそれが一定の支持を集めるという世の中にもなっている。そういう変化の真っ只中にありながらも、でも政治には非常に本質的に大事な部分があるんですよね。明治のフレームで入っていくと、そうは言っても「国会は国権の最高機関」と憲法には書いてあるので。その中で何をどう伝え、われわれ自身の役割をどう果たしていくのかという新しい定義付け、新しい発信の仕方、見せ方は、政治家が今、本当にやっていかなければなりません。

*……放送事業者が国内外で放送する番組編集について定めた条文。4条の中に「政治的に公平であること」がある。