「改革中道政党」として、国民生活に現実的に向き合う

 私たちは、多様な価値観を寛容に受け入れる政治姿勢をとります。よって、リベラル・保守といった単純な二項対立や、特定の主義主張に拘泥するのではなく、国や国民が直面している諸問題に対して現実的に向き合う「改革中道政党」として、具体的な解決策を示します。私たちが重視するのは、「対決」ではなく「解決」です。常に、客観的事実の追求と建設的な解決策の提案を行っていきます。特に、国民の生活に直結する社会保障政策や経済政策に最大限の力を入れます。私たちは、社会保障と経済に強い新党を目指します。

根本理念としての「共生」

 私たちは、もう一度、政権を担える選択肢を国民の皆様に示していきます。今回の新党結成は、野党のバラバラな現状に終止符を打ち、かつ、右か左かといった二元論的な対立を乗り越え、社会全体を包み込む温かさをもった政治勢力の結集をはかるための「第一歩」です。

 私たちは、新しい政治に向けた思いを、綱領としてまとめ、その基本的考え方を整理しました。私たちが最も大切にしたい価値は、綱領に掲げた「共生」の理念です。今、世界中で社会の分断が広がっています。だからこそ私たちは、人間が個人として生きる存在ではなく、歴史的な時間軸、社会的な関係性、地球的な空間の中でのみ存在し得るとの自覚に立って、「共に生きる=共生」を、新党の基本理念として掲げました。

 第一に、私たちは、先人の努力と営みの上に生きる存在として、「時間的な共生」を重視します。つまり、私たちは、過去の世代が幾多の犠牲と労苦の結果としてつくりあげた基盤の上に生活し、その基盤を将来の世代に引き継いでいく歴史的存在です。それゆえに、「未来に対する責任」と同時に「過去に対する敬意」を大切にします。

 第二に、私たちは、他者との支え合いによって生きる存在として「社会的な共生」を重視します。私たちは、ひとり一人が、家族や友人、働く仲間、同じ地域や国に生きるすべての人たちによって生かされていることを認識し、同時代を生きるすべての人々に対する責任を担います。また日本は、東京をはじめとした都会だけでなく、多様な特徴を持った地方から成り立っており、都会は地方からエネルギーや食糧に加え、人材の供給も受けていることを忘れず、地方の存在を重視します。日本の基盤は地方にあります。

 第三に、私たちは、自然環境の中に生きる人間として、「地球的な共生」を重視します。私たちは、人間が自然の生態系の中で「生かされている」存在であることを自覚し、地球環境や生物多様性に対する責任を担います。

 以上のような立ち位置に基づく私たちの政策的方向性は、次のとおりです。

日本をアップデートする

 まず、私たちは、「未来を先取りする改革政党」です。世界は驚くべきスピードで変化しています。日本には過去の成功体験に囚われている暇はありません。私たちは、錆びついたレールを磨くのではなく、未開の荒野に新たなレールを敷くつもりで改革に取り組まなくてはなりません。人工知能(AI)をはじめとしたテクノロジーの進歩は、従来のライフスタイルや、経済社会のあり方を大きく変えつつあります。

 例えば、治らないと言われていたガンや認知症が革新的な薬や治療法で治るようになります。ブロックチェーン技術を取り入れた地域通貨の発行で、地方が補助金に頼らず、自立して経済を活性化させることも夢ではありません。また、自動運転を世界に先駆けて実現することで、どんな過疎の地域でも移動困難者をゼロにすることができます。こうしたことが可能になれば、少子高齢化や人口減少などの問題の解決につながり、未来の幸せと豊かさを追求することができます。

 だからこそ私たちは、最新の科学技術の発展を官民あげて応援するエコシステム(生態系)をつくり上げ、革新的イノベーションによって経済成長の実現や社会問題の解決をめざす「イノベーション・ニューディール政策」を推し進めます。私たちは、最新のテクノロジーで、経済社会システムと人々のライフスタイルを次世代型へとアップデートしていきます。そのために、投資を促す大胆な規制緩和や減税・非課税策を講じていきます。

 また、急速な労働力人口の減少が進む中、日本経済、とりわけ地域経済において外国人労働力の影響が大きくなっている現状に正面から向き合い、必要な法制の整備を行います。

 原発政策については、国有化を含めた国の責任の明確化と、計画的な人材育成・確保により、2030年代原発ゼロをめざし、あらゆる政策資源を投入します。

責任ある再分配政策でくらしを守る

 今、世界中で格差や貧困が進んでいます。子どもの貧困が深刻な状態であるなど、日本も決して例外ではありません。OECDの報告書にあるように格差は経済成長の阻害要因です。だからこそ、私たちは、政府の再分配機能を重視した政策を採用します。個人の自己責任に全てを押しつける立場はとりません。

 ただし、そこに最新のテクノロジーを活用した分配の仕組みを取り入れ、過重な行政コストのかからない効率的な政府を実現していきます。

 当然、負担のあり方も逃げずに議論します。全ての人が負担と受益を共有するという、いわゆる一体改革的な考え方は、私たちが「未来に対する責任」を綱領に掲げている以上、避けられないアプローチです。持続可能な生活保障の制度は、「人生100年時代」には不可欠であり、私たちは、給付と負担のバランスのとれた政策をまとめあげ、建設的議論を展開していきます。

 ただし、来年予定されている消費税増税については、中小零細企業に過度な負担を負わせ、かつ、低所得者対策としては不適切な軽減税率の導入を前提としていることに加え、経済情勢の見極めも必要であることから、慎重に対応を考えます。

 企業の経済活動については、可能な限り自由を尊重する一方で、社会的責任を果たさない強欲な経営姿勢とは対峙していきます。労働者を単にコストとみなす考え方ではなく、人を大切にし、人への投資を重視する経営(人本主義経営)を後押しします。

 同時に、一部のグローバル企業などによる租税回避措置には厳しく対応します。

現実的平和主義

 私たちは、日本が戦後ずっと追求してきた平和主義は、絶対に守り続けます。現政権のように、従来の憲法解釈を恣意的に変え、野放図に自衛権の範囲を拡大する立場はとりません。しかし同時に、厳しさを増す安全保障環境の中で、現実的な対応を示さなければ、安心して政権を任せてもらえる政党にはなれません。

 実りある安全保障議論には、国民の間に、日本が希求すべき「平和主義」の中身や、自衛隊が行使する自衛権の範囲についての合意が不可欠です。さらに、ドローンや無人機による攻撃、あるいはサイバー攻撃といった従来想定されていなかった新しい技術に対応する安全保障上の問題意識にも応えていかなくてはなりません。

 こうした要素を踏まえ、総合安全保障政策を取りまとめます。その際には、「近くは現実的に、遠くは抑制的に、人道支援は積極的に」との考え方を受け継ぎ、朝鮮半島をはじめとする周辺地域での有事に対する備えは万全にしつつ、地球の裏側で戦うことがないよう、必要な法制の見直しを行います。

まちに出て、国民の声に耳を傾ける

 新党の綱領と基本政策がまとまりました。いよいよ私たちは、マイクを握り、チラシを配り、国民との対話を始めます。国民民主党に集う党員・サポーター、自治体議員、国会議員が一緒になって、地道な活動を全国各地で展開していきます。厳しいスタートですが、全議員がもう一度、それぞれの原点に立ち戻り、まちに出て、国民に直接訴え、そして、国民の声に耳を傾けていきます。

 「国民が第一の政治」を実現するため、もう一度、ゼロからはじめます。一致結束して全力で取り組みますので、どうか、よろしくお願いします。

「4つの時代」を生きぬくビジョンと戦略

 これからの日本は、「人生100年時代」「AI時代」「人口減少時代」「アジアの時代」を生きていくことになります。この認識をもって、私たちは「基本政策」を策定しました。未来から現代を眺め、新たなビジョンと戦略で日本をアップデートしていきます。

「人生100年時代」の尊厳ある生活保障

 「人生100年時代」とも言われる長寿社会です。高齢化が進み、同時に、少子化によって人口が急速に減少しています。そんな中、人口増加を前提とした時代に設計された社会保障制度は、超高齢化社会における安心を提供できなくなりつつあります。また、多死社会とも言われる時代、尊厳ある生と死の問題と正面から向き合わなければなりません。私たちは、尊厳ある生と死を保障する政策を積極的に議論します。

 特に、基礎年金の最低保障機能を高め、安心できる生活保障の制度を導入します。また、高齢者に最低限の衣食住の安心を提供するため、空き屋を利用した低家賃の高齢者住宅の提供も計画的に行います。

 また、抜本的な少子化対策として、子ども手当などの現金給付や、教育の無償化などの現物給付による大胆な子育て・教育負担の軽減策を講じます。また、低所得者対策として、英国のユニバーサル・クレジットなどを参考にした給付付き税額控除などの基礎的所得保障制度を導入します(日本版ベーシック・インカム構想)。

「AI 時代」の教育と人づくり

 近い将来、人工知能(AI)が人間の知性を超えて私たちの生活に大きな変化が起こるとも言われています。これらのテクノロジーの発展は、我が国が直面する人口減少問題などの解決につながる前向きな意味がある一方、現在ある職業の多くがAIに置き換わるとも言われており、雇用や所得、そして私たちのライフスタイルに大きな影響を与える可能性があります。そんな中、子どもたちの教育を、AI時代に適したものに変革していくことが不可欠です。

 イノベーションに必要な人材を戦略的に育成する必要があります。そのため、どの仕事に、どのくらいの人材を要するかを把握し、長期の人材育成計画を立て、教育や研究の「質」の向上に取り組みます。また、すべての子どもたちが読解力などの基礎学力をあまねく習得できるよう、公教育の充実を図ります。

「人口減少時代」の賢く縮むスマート・シュリンク戦略

 人口減少は、我が国が直面する最大の問題だといえます。しかし、150年前の明治維新以前は、日本の人口は約3000万人で、分散型の豊かな社会を築き上げていました。今でも、外国から来る観光客が訪問する目的地の殆どは江戸時代以前に作られた施設や文化です。このように、人口減少を悲観するだけでなく、人口減少時代の新たな国のかたち、とりわけ地方で暮らす人たちの豊かさや幸せをどうつくり上げていくかが問われています。これまで同様、すべての政策制度を中央で企画立案し、地方の面倒をみるというやり方は、もはや持続不可能です。これから必要なのは、地方の分権・分散化と、賢く縮む「スマート・シュリンク」戦略です。

 具体的には、居住地域と大規模農地などの非居住地域を分け、非居住地域から居住地域への移転を決めた人々には移転費用を支援し、コンパクトで効率的なまちづくりに切り替えることも一案です。また、農業分野へのソーラーシェアリングの積極導入など、農業者所得の増加とエネルギー供給構造の分散自立化を進めます。さらに、課税自主権の強化や仮想通貨を使った地域通貨発行権の付与など、地方自治体の権限を拡大させる諸施策も議論していきます。

「アジアの時代」の国家戦略

 国際的な観点から言えば、2030 年までには、GDPの水準で中国が米国を抜き、インドが日本を抜くことが予想されています。経済的な発展の中心がアジアに移り、米国の国際的地位が相対的に小さくなっていく「パワーシフト」の時代です。日本を取り巻く環境も大きく変わらざるを得ません。安全保障分野のテクノロジーの進化も著しい中、私たちは、古くなった冷戦構造の枠組みにとどまるのではなく、世紀単位の変化に適応できる新時代の経済、通商、外交、安全保障のあり方を模索することを迫られています。

 米国が世界の覇権を握った「パックス・アメリカーナ」の時代が終わりを迎え、政治や経済の中心がアジアに大きくシフトしつつあります。そうした中で、日本はアジアの平和と繁栄を主導します。とりわけ、日中韓、そして非核化を実現した場合の北朝鮮を含む北東アジアの新たな平和と繁栄の枠組みづくりに主体的に関わります。

 また、環境に配慮した道義的かつ持続可能な経済開発にも、日本が積極的な役割を果たしていきます。

 グローバルな資本主義の発展とインターネットの進化が相まって、今や世界の富は一握りの国や人に独占されるようになってきています。一方、巨大インターネット企業の国際的な課税逃れも指摘されています。日本は、「公正」や「公平」に重きを置き、世界的な「共生」の実現に向け、国際的な課税逃れだけでなく、富の偏在を防止する国際的な課税ルールや取引ルールの策定にも主導的な役割を果たしていきます。

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