政策解説漁業法改正

 閣法「漁業法等の一部を改正する法律案」が11月15日、衆院本会議で趣旨説明が行われ、今後、衆院農林水産委員会で審議が行われます。漁業法は戦後間もない1949年に制定され、今回の改正は、62年に漁業権の定義に関する規定の見直しが行われて以来の、日本の漁業政策の大きな見直し案となっています。

●新たな資源管理システムは漁業者の理解をどこまで得たのか。

 大きな論点の1つは、新たな資源管理システムの構築です。大きく変動する漁獲量に対応するための資源管理の基本原則について、改正案では、これまでの操業船舶のトン数制限や各魚種の総漁獲量で制限することのほか、資源評価に基づく漁獲可能量(TAC)による管理を行い、「持続可能な資源水準に維持・回復させること」を主眼に置いた。また漁獲可能量を漁業者または船舶ごとに割り当て、その割当量を超える漁獲を禁止することによって漁獲可能量の管理を行う「個別割当方式」(IQ)を準備が整った魚種から採用することにしています。漁業とは言うまでもなく、それぞれの海域に特性があり、まさに海洋自然を相手にして仕事をすることです。そのさじ加減次第では、漁業の円滑な操業にも制約が出るおそれもあります。TACの対象魚種の拡大やIQ方式導入について、政府内ではこれまでに、どのような検討が行われ、漁場環境が地域によって異なる現場の漁業者の理解、納得をどこまで得ているのかが問われます。

●あいまいな漁業権付与基準で漁業の現場が混乱するおそれ

 大きな論点のもう1つは、漁業権を付与する者の決定方法の見直しです。改正案では沿岸の漁業権の種類について、「共同漁業権」、「定置漁業権」、「区画漁業権」という従来の種類は維持しつつも整理を行い、「定置漁業権」「区画漁業権」にあった法定の優先順位を廃止することとしています。これに伴い、漁業権を与える新たな判断基準として、漁業者が「水域を適切かつ有効に活用している」ことを条件に漁業権の継続利用をさせ、既存の漁業権がない場合は、地域水産業の発展に最も寄与する者に免許を与えるとしております。その基準については法案の成立後、農水省令などで定めるとしており、あまりにも法的に漠然かつ曖昧で、運用次第では、現場の漁民の皆さんの混乱が起きかねません。また、こうした制度に変わるということについて、実際の沿岸海域の現場の理解が進んでいるのか、きちんとした検討が必要です。

 このように大きな課題があることから、国民民主党は、漁業に従事する現場の方々や事業者、食の安心・安全を求めつつ実際にそれを手にする国民全体が納得できる結果を得られるよう、拙速に法案を成立させるのではなく、丁寧かつ慎重な議論をじっくりと行っていくべきと考えています。