国民民主党・日米地位協定改定案

 「日米地位協定」は、締結以来、一度も見直しが行われていません。この協定を根拠として、戦後70年以上が経過した現在も、多くの米軍基地が存在し、大勢の米軍人や軍属が駐留し、米軍関係の事件・事故が絶えません。基地外で発生する事件の捜査や事故の処理に日本の警察をはじめとする公的機関が排除される事例は珍しくありません。また、自衛隊の航空機には許されない、住宅地や市街地での低空飛行や夜間飛行を行う米軍の航空機を制限することさえできず、米軍基地内で重度の環境汚染が疑われたとしても、その立入調査もできません。

 国民民主党は、自ら主権を放棄し、「治外法権」状態を国内に放置している日本政府の立場を改めることを要求するとともに、以下の「日米地位協定」改定を日本政府並びに米国政府に提起します。日本政府には、真摯(しんし)に米国政府と交渉していくことを強く求めます。

●国内法の適用(独立した主権国家にふさわしい地位協定への改定)

 「日米地位協定」を見直し、日本に駐留する米軍は日本の国内法を原則守り、やむを得ない場合に限り、関連特例法等で例外を認めるものとします。

 すなわち、航空法や環境法、検疫、租税などに関する国内法を、原則として米軍及び軍人、軍属、家族に適用します。

●米軍施設・区域の管理権

 環境法を守っているかの調査、日本に駐留する米軍労働者に対し労働関係法を守っているかどうかの状況調査などのため、米軍基地へ日本側が立入する権利を保障します。基地の使用目的の変更、大規模な建築物等の新設・修繕等を行う計画がある場合には、関係自治体の意見を聴取し、その意向を尊重し、日本政府と協議します。

 日米地位協定で米国に与えている在日米軍基地の「排他的管理権」を改め、平時における基地の使用に関する全ての事項について、日本側との協議の仕組みを構築します。

●訓練・演習への関与

 米軍の訓練、演習等の諸活動の実施について、ドイツやイタリアにおける状況を踏まえつつ、その内容が把握できる具体的かつ詳細な情報を、日本政府及び関係自治体に事前に通知するとともに、日本の関係当局との協議の仕組みを設けます。

●警察権・刑事裁判権の保障

 基地外での米軍による事件・事故等の際、現場で必要な統制は日本側で行うこととし、日本当局が捜査、差押え、又は検証を行う権利を行使します。米軍は、日本側の求めに応じて、捜査等に協力するものとします。

 日本が裁判権を行使すべき米軍の被疑者は、その身柄を米国が管理しているときは、日本が公訴するまでの間、米国が拘禁(比較的長期の拘束)を行うという規定を改め、米軍は被疑者を起訴する前に日本側から拘禁の移転の要請がある場合には、速やかに応じるものとします。

●日米合同委員会における地域意見の反映・体制強化

 日米合同委員会で合意した内容は原則速やかに公開します。日米合同委員会において、基地周辺の住民に影響を及ぼす事柄を協議する場合には、関係自治体の意見を聴取し、その意向を尊重します。また、公共の福祉及び住民生活の安全について関係自治体より要請がある場合には日米合同委員会でその意見を聴取し、検討することとし、日米合同委員会の中に関係自治体の代表者が参加する「地域特別委員会」を設置することとします。

 また、日米合同委員会の両国代表(現状、日本側は官僚、米国側はほぼ全員軍人)のあり方を見直し、日本側の国益と民意を反映できる仕組みとします。

●その他

 日米地位協定に基づくものではないですが、米軍が航空管制を行っている空域等の見直し、駐留米軍基地の返還についても、国際情勢や安全保障環境の実情を踏まえたうえで、真摯な協議を行っていきます。
 これまでの経緯を踏まえると、日米合同委員会において、政府が日本の国益、民意を十分に反映してきたとは考えられず、このままでは、沖縄の負担軽減も日米地位協定改定の実現も見通せません。日本政府には、日米合同委員会の権限、構成、運営等の抜本的な見直しを図るとともに、日本側の政治の関与を強め、国益と民意を十分に反映できる体制を実現することを求めます。
 安倍総理は、北朝鮮、ロシア、中国などとの課題解決を「戦後日本外交の総決算」として掲げていますが、日本の主権の擁護と米軍基地問題の改善、解決に真摯に取り組んでいるとは思えません。

 在日米軍は日米安保の基盤であり、日本の安全保障の根幹です。しかしながら、在日米軍専用施設面積の7割が集中している沖縄が抱える過重な犠牲・負担は、政府はもとより日本全体で受け止める必要があります。基地周辺地域・住民の安心・安全を守るために、国家として全力を挙げる第一歩として、国民民主党は日米地位協定の改定に取り組んでいきます。

PDF「日米地位協定の改定案」日米地位協定の改定案