児童虐待により子どもが死亡する事件が相次いでいます。痛ましい事件を2度と起こさない社会をつくるために政治家に何ができるでしょうか。党第三(厚労・文科・消費者)部会長であり、昨年6月に国民民主党が中心となって提出した「児童虐待防止法改正案」の提出者である岡本充功衆院議員に城井崇広報局長が話を聞きました。


城井:国民民主党が「新しい答え。」を出していくシリーズ「こくみんアンサー」と題して、動画を皆さんに発信しています。今日は児童虐待防止対策ということで、党第三部会長の岡本充功衆院議員にお越しいただきました。
さて、岡本さん、国会ではいま予算委員会真っ最中ですが、児童虐待防止対策は昨年からもかなり取り組んできましたよね。今回も千葉県野田市の事件を受けて、残念な痛ましい事件が起こって対応を求められていますが、まずどのあたりが課題だとお考えですか。

岡本:今回、目黒区に続き野田市でもこういうことが起こり、私も心が痛いです。去年、香川から東京に転居した5歳の女の子がお父さんに「許して」という文字を残して亡くなった。大変痛ましいと思っていた矢先にこれですね。国民民主党は、昨年のこの事件を見て直ちに調査を開始しました。当時、厚生労働委員会の理事として与党にも働きかけましたが、「時間がない」の一点張りで、結局与党は調査にも行かなかった。大変残念でしたが、われわれ国民民主党は野党の皆さんに声掛けをして、わが党中心に現地香川の状況を見に行きました。大きなポイントはやはり「引っ越し」。ここですよね。

城井:やはり引っ越し前の場所と引っ越し後の場所との、情報の連携ですかね。

岡本:結局、私香川でも聴きましたけど、香川から愛媛、香川と岡山であれば、これまでの情報連携を担当者が直接出向いて引継ぎをやっていました。

城井:担当者同士が会いながら情報共有していたんですね。

岡本:ところが、前回香川と東京ということで、それがかなわなかったというのが、現地で聴いてきた現場の声でしたよ。今回は、沖縄と千葉ですからね。やっぱり同じような話で、距離がある転居というのはまったく同様のケースで事件が起こったことに、私は本当に心が痛いです。

城井:たしかに担当者の数もギリギリで、両方の現場がそれぞれ業務を回している中で、情報共有を対面で行うとなるとなかなか難しいですよね。

岡本:話を聴いて思ったのは、香川の児童相談所2カ所。この2カ所で働いている児童福祉司が極めて少ない。1人の児童福祉司が担当しているケースは、自分たちで把握ができないくらい日々の業務に追われているのが現状です。

香川を訪れ丸亀市長から実態を聴いた

香川を訪れ丸亀市長から実態を聴いた

城井:1日1件とかじゃないですよね。

岡本:物凄い件数を抱えているんですね。これが大きなことです。そこで昨年6月26日に私たちが出した法案(https://www.dpfp.or.jp/feature/200233)では、児童福祉司の数を劇的に増やそう。劇的に増やして、こうした増大するケースに対応できるようにしていこうということで、法案を出したんですね。やはり児童福祉司の皆さん方も、それぞれがきちっと責任をもって、対応できるケース、コントロール可能なケースにしておかないと、残念ながらまた同じようなことが起こるんじゃないかという思いがあって、昨年の法案提出になったんですね。

城井:対応する大人の数を増やすという意味で、今政府の取り組みや緊急対策で、まずは来年度1000人、最終的には2000人となっていますが、この配置のスピード感を上げていくということですね。

岡本:そうですね。私たちが法案を出した当時、ご記憶の方も多いと思いますが、与党は「働き方改革」の強行採決をしていました。自分たちのやりたいことは強行採決をして、強行採決をすれば会期の残った時間があるわけですから、残った時間でわれわれの出した法案審議をしようと提案したにもかかわらず一顧だにしなかった。そして7月20日になって政府で対策を出し、これまた法律でも政令、省令でもない、いわゆる児童相談所の運用指針の見直しという、ちょっとよくわからない本当にマイルドな形で対応策を出したんですね。そこに載っている7月20日にできたプランでは、私たちが来年実施をしようと思っている児童福祉司の増員の数に比べると少ない。長期的には増えるかもしれないけれど、来年度はまだまだ少ない。もっと多くの予算を確保できると思うんですよ。そういう意味で、今回私たちは、昨年6月26日に出した法律をまず成立させて、さらなる対策をこれから打っていくことをしていきたいです。

児童虐待防止法案提出後に記者会見に応じる岡本議員

児童虐待防止法案提出後に記者会見に応じる岡本議員

城井:これまでも目黒区の事件を含め多くの児童虐待の事件があって、救えたはずの命を救えなかった重みは、与野党関係なく国会全体で分かち合いながらやり遂げたいですね。

岡本:そうですね。安倍総理も2月13日の衆院予算委員会での私の質問に対して、「与野党で争うことではない」と言っています。これを私は本心だと信じたいし、だとすれば、野党案であろうとしっかり乗ってきて協議に応じてほしいし、丸飲みしろと言っているわけではない。必要な修正をしながら成立させようじゃないかと言っているわけですから、これを拒否する必要はないのではないかというのが私の思いですね。

城井:児童福祉司の劇的増加、促進もそうですし、情報共有も含めてですけど、いま子どもを守る必要な手立てをわれわれ国民民主党から法律案で提示をして、いま渋っている政府・与党もしっかり説得しながら頑張っていこうということですね。

岡本:そうです。もう1つ重要な話がありまして、2月21日の予算委員会で確認を取りましたけど、私の2月13日の質問を受けて、2月14日に厚生労働省は、いわゆる今回の野田市の事案を受けて行う緊急点検について全国に通知しました。この緊急点検の内容もまた穴が開いているんですね。ポイントは昨年の目黒区の事件ですね。香川県から目黒区に転居したケース。目黒区の事件と同様のケースは、今回の緊急点検の対象になっていないんです。香川から東京に引っ越した後、東京の品川の児童相談所は被害者の女児に会うことはできなかった。この状況で途切れていた支援の届かなった女児に今回の緊急点検は届きません。したがって21日の予算委員会ではっきり答弁しましたけど、あらためて私どもはいま求めています。転居する前後、少なくとも1カ月はきちっと指導を継続しなさいと。転居する前後1カ月で詳細が把握できない中で指導を終了してしまうと、結局、転居先の県で指導開始されるまで空白の時間ができてしまう。このすき間を埋めることを2月21日の予算委員会で審議しまして、そこは早急に対応して周知すると政府は言っていますので、厚生労働省は今日から動くと思います。いずれにしても、いま声なき声を上げたくても上げていない子どもがいるんじゃないか。この観点で緊急点検をやるべきだ、安全確認をやるべきだということを私たちは主張しているわけですね。

予算委員会で総理に迫る

予算委員会で総理に迫る

城井:すき間をしっかり埋めに行くこと。そして、声なき声に耳を傾けるためにはこちらから直接会いに行く。直接の面接を必ずやり遂げるというところまで、国会における行政チェックをしっかり頑張っていきましょう。

岡本:最後に1つ。21日の予算委員会の答弁で皆さんにもぜひ知ってもらいたい残念なことがありました。私は最後に聞いたんです。今回の緊急安全点検をしても、また同様に漏れがあって、そして対策が届かなくて小さな命が失われたときに、責任をとって大臣を辞める覚悟があるかと。文部科学大臣と厚生労働大臣に聞きましたが、どちらとも答弁をごまかしました。私たち国民民主党は、全ての議員が必死になってこの対策とっていきますよ。そういう意味で私たちがもし責任ある立場であれば、これはやっぱり自分たちの職を賭けてやるべき話であって、本来責任者である大臣がこういう対応なのは残念だと。私たち国民民主党は、こうした対策にそれぞれの議員が全力を傾けて、残念ながら政府側ではありませんから大臣の職を賭けてというわけに行かないですが、それくらいの思いでやっていくことを国民の皆さんにはぜひ知っていただきたいと思います。