国民民主党は、悪質クレームや暴力行為の被害から労働者を守るため、国全体で悪質クレーム対策を推進する「悪質クレーム対策推進法案」(通称)を党総務会で了承しました。法案を取りまとめた川合孝典参院議員に法案の目的や概要などについて解説してもらいました。


城井:それでは今回のこくみんアンサーは、川合孝典参院議員にお越しいただきました。川合さんと言えば、最近は悪質クレーム対策。ついに法案ができましたね。

川合:ここに至るまでの間、随分苦労もしましたし時間もかかりましたけど、ようやく形になって少しほっとしています。

城井:どれくらい時間をかけて作ったのですか?

川合:構想し始めてからおおむね2年半かかりました。それにはいろいろ深い事情もあるのです。

城井:なるほど。まず狙いから伺います。

川合:城井先生もご存知だと思いますが、最近ハラスメントの問題が非常に大きくクローズアップされています。そのことと同時に近年、お店で接客する従業員側とお客様との間でのさまざまなトラブルが社会問題化しつつあります。多くの当事者からこの状況を何とかしてもらいたいという意見があり、それに対応する形で何らかの動きをしなければいけないというのが元々の取り組みの端緒にありました。

城井:なるほど。そのお客さまからの過度な嫌がらせやハラスメントが今回のターゲットということですね。それでは例えば、取引先の会社さんや上司さんというところは、また違う形で対応するのでしょうか?

川合:いわゆる取引先とか職場の上司部下の関係は、一般的なパワーハラスメントということであります。今回はそうした方々は対象者から除いて完全にお客様個人を対象としているのがこの法案の特徴です。

城井:なるほどですね。個人になりますと、明らかにクレーマーだなと、数度にわたって暴言を寄せられたとか。わかりやすいところはいいですが、これも相手のあることだとすると、お客さんが静かにいわゆるクレームを言ったつもりだったけど、悪質クレーマーとして扱われたということにならないか。つまり法律で縛りをかけることによって、かえって違う形で使われないかという心配が法案を作る過程でも議論がありましたよね。この辺りはどんなふうに整理されたのですか。

川合:この法案を作る上で非常に重要なポイントが今のご指摘の点でした。言うまでもなく消費者の利益がきちんと擁護される。正当な申し入れやクレームがきちんと受け入れられることがまず前提とならなければいけない。そのことをきちんと担保した上で、社会通念上度を超え、常識を逸脱したクレーム行為や暴力行為に対してどう歯止めをかけるのかがこの法案を作る上で一番難しかった点でした。従いましてお客様の正当な権利を擁護するということが法案の前提になっています。

城井:お客さんがきちんと意見、クレームを言いつつ、それが度を越えた形になっている時に会社やお店が、お客様に「それは度を越していますよ」と言える1つの足がかりということでしょうか。

川合:この法案を作るにあたり、さまざまな関係者からヒアリングを行いました。消費者保護の立場から取り組みをしている人々からの指摘は、自分自身に非常に響くところがありました。消費者・お客様をだましてもうけさえすればいいというスタンスで事業を行っているような本当に悪質な事業者は、「悪質クレーム防止法ができた」と言って、それを盾にしてお客様の正当なクレーム・申し立てを排除しようとする動きに出るかもしれない。それがあったら困りますねと。従いまして、「どういう行為が悪質なクレーム行為なのかという定義をより明確にしていただかないと懸念が残る」と関係者からご指摘を受けました。そうしたことを踏まえて法案を作っています。

城井:なるほどですね。時代の移り変わりでマルチ商法とか原野商法とかデート商法と、方法がさまざまに変わりいたちごっこになっていることに今回の取り組みがある。法律の見直しとか、今後これを仮に与野党に呼びかけていくとして、スケジュールや見直しの方向性をどのように考えていますか?

川合:まず、これはあくまでも悪質クレーム対策を推進するための法案であります。細部にわたってのさまざまな仕組みやルール作り、取り組みの方法については、対策を推進するための協議会を作って、関係者や有識者に集まってもらい、そうした人々の意見を踏まえて具体的な対応策を作りあげていきます。このプロセスでさまざまなご意見が必ず反映される仕組みがあります。ただし、その取り組みは国が主導して、行政機関や経営者の皆様に対して働きかけを行ってもらうことを義務化する法案です。今後のスケジュールですが、可能であれば野党の皆さまと連携しながら共同で国会に提出させていただきたい。現在そのための法文や関連資料の詰めを行っています。

城井:いつ頃を目途に仕上がりますか?

川合:未定稿はすでにできあがっています。実はできたのが昨日の午前中でした。これを持って野党の各窓口の皆さんに来週中に投げかけを行って、各党で検討を始めてもらいたいと思っています。

城井:協議会で煮詰めていく旨の話でしたが、会社やお店の人々ですと、その業界団体や労働組合を含めて声を代表する仕組みがあると思うのですが、今回の場合は消費者が相手ということで、
多様な消費者の声を受け、反映させていく協議会は、消費者サイドの声をどう反映していく仕組みにしていますか?

川合:協議会の構成メンバーの対象者ですが、当事者である従業員や事業者の代表者、それから専門的知識を有する人というくくりで構成メンバーを定義しています。この専門的知識を有する人々の中に、当然のことながら消費者団体の代表の皆さんや消費者にかかるさまざまな問題に対応している法律家もメンバーに入らないと、一方からのバイアスのかかった結論につながってしまいます。公平、公正に議論を進めてもらう上で協議会の中に消費者団体の代表者が入るのが筋だと思います。

城井:悪質クレームに苦しむ現場の声の先にある新しい答えが、悪質クレーム対策推進法案ということでよろしいでしょうか。

川合:ぜひそうしていきたいです。

城井:一日も早い成立を目指して与野党への声掛けを頑張りましょう。

川合:ありがとうございます。頑張ります。