「世の中に納得のいかない法律や制度があれば、変えることができる唯一の職業は政治家だ」という公募要項を見て政治家を志した伊藤孝恵議員。
これまでに何を変えることができて、今後何を変えていきたいのかについて話を聞きました。
伊藤孝恵(いとう・たかえ)参院議員
愛知県選挙区
1975年名古屋市生まれ。98年金城学院大学文学部国文学科卒業、同年テレビ大阪株式会社入社。2006年株式会社資生堂入社、同年株式会社リクルート入社。13年金城学院大学文学部日本語日本文化学科非常勤講師着任。16年第24回参院議員選挙に愛知県選挙区から立候補し、51万9510票を獲得し初当選。東日本大震災復興特別委員会理事、予算委員会委員、文教科学委員会委員を務める。
──国政を目指した理由は何ですか。
2年前の参院選の候補者公募に、自ら手を上げて立候補しました。我が家の3歳の次女は生まれた時、片方の耳が聞こえないと言われました。いろいろな制度を調べる中で、この世の中は、みんな一緒だと言いながらぜんぜん一緒ではない。障害者を守る法律が実はその方たちの生きる場所を制限したり。そういう悔しい現実を目の当たりにする中で、(当時民主党が)参院選候補者の公募をしていました。その要綱には「世の中に納得のいかない法律や制度があれば、変えることができる職業が一つだけある。それが政治家だ。政治家の仕事は一つだけ、子どもの未来を作ることだ」と書いてありました。私は涙を流しながらその場で応募し、そして本当に立候補することになりました。
──国会議員になって、変えることができたものはありますか。
この第196通常国会で私が取り組んだものは「バリアフリー」です。バリアフリー法改正案について本会議登壇をした際、車いすの友人らが傍聴に来てくれたのですが、その時「国会議事堂はサイトライン(視線)が確保されていないから見えなかった」と言われました。車いすの方が見ることができない場所でバリアフリー法のどこを改正したらいいかを話し合うなんておかしな話です。そこで早速申し入れをし、来年の通常国会からサイトラインが確保された場所を作ることができました。
加えてですが、衆参では傍聴規則が異なっており、衆院では子どもたちも傍聴できるのですが、参院では10歳以下は原則傍聴できませんでした。「なぜ? 子どもたちの声を煙たがる場所で、子ども達の未来を議論するの?」という疑問から、1年半にわたって申し入れを行い、今月遂に、子どもたち又は子どもを抱いたお母さんたちも傍聴できるように規則(運用)を改正することができました。
あらゆるバリアフリーを進めていくには仲間が必要です。ということで、子ども子育て世代の課題解消と、その世代の声を我がものとして聞ける議員を増やしていくことを目指した「超党派ママパパ議員連盟」なるものも作りました。会員は現在76人、衆参国会議員の707人の1割、女性議員に限れば3割となりました。また議論に参加する議員は既に100人を超えています。
──地域で取り組んでいることはありますか。
自治体議員の仲間たちと、ランドセルを買えない家庭の子どもたちに、就学前に援助費を届けようという活動をしています。学校教育法という法律の建て付け上、小学校入学年の4月1日からの子どもを児童と呼び、その前日までは幼児と言います。児童にしか就学援助費は出せないということで、ランドセルがないまま入学式を迎える子どもが日本にはたくさんいます。1人の子どもをある日を境に幼児といったり児童といったり、そんなおかしな取り決めで、必要なときに必要な人に必要なものが届かない。この状況を変えるべく動いた結果、法律の要項に「就学予定者にも支給することができる」の一文を加えることで、就学前支給が出来るようになりました。しかし就学援助費は国が1/2、自治体が1/2負担していることから、国がスタンスを変えるだけでは何も変わりません。そこで自治体議員達と協力して各議会で取り組んで頂いた結果、愛知県下54市町村のうち、昨年は2自治体でしか行っていなかった就学前援助が、今年は28自治体まで増えました。日本中の子ども達が、ピカピカのランドセルで入学式を迎えられるよう、引き続き全国の仲間達に協力を仰ぎながら進めていきます。
──議員会館の執務室ですが、楽しそうなキッズスペースになっていますね。
下の子どもが待機児童で、家にいるか議員会館に連れて来るかしかありませんでした。最初は「ここは税金で賄われている施設だ」「子どもがいるところで国会議員の仕事ができるのか」「子どもが可哀そうだ」など批判もありましたが、今では要請に来たお母さんたちが便利に使ってくれたり、与党の議員のお孫さんも遊びに来たりしています。この4月から次女もようやく保育園に入れたので、畳んでしまおうかなと思ったりもしたのですが、あまりにもいろいろな方が子どもを連れて来てくれるので、このまま残しておこうと思っています。このジャングルジムは衆院の先生が持ってきてくれましたし、パズルは与党の先生から頂きました。まさに超党派のキッズスペースとして使っていただいています。
──今後取り組みたいものは。
児童虐待防止です。これは、とにかく一生懸命、長く、しつこくやっていきたいと思います。党にもワーキングチームができましたので、そこで議論していきます。それとセクハラ問題です。「セクハラ罪という罪はない」とどこかの閣僚が言いました。その通りです。この国にはセクハラ罪という罪はありません。しかしそれでいいのでしょうか。しっかりと取り組んでいきます。