──なぜ政治を志したのですか?


 国民民主党衆院議員1期生の浅野哲(あさの・さとし)です。選挙区は茨城県第5区(日立市・高萩市・北茨城市・東海村)です。前職は民間企業の研究者として、半導体の技術を開発していました。世の中のクルマや家電製品や社会を支えているシステムの中にも、半導体の製品は使われています。実際に携わった製品は、あるメーカーのよく流通している自動車に搭載されています。
 政治を志す前から、産業が活性化していくためには、働く人たちがもっと自由に自分たちの力を発揮できる環境をつくらないといけないと、ずっと思っていました。また、大都市部だけではなく、地方で働いている人たちの立場に立ち、働く環境の改善や産業の活性化により、力強い日本をつくっていきたい。それが政治を志した原点です。


 ──昨年の当選から1年間の国会活動の感想を。


 率直に感じるのは与党の国会の進め方があまりにも独断的すぎること。予想以上にそういう現実があると感じました。具体的な例を挙げれば、働き方改革関連法や、臨時国会でも入管法の強行採決がありました。何といっても、野党側が提出した議員立法が、ほとんど審議をされずにたなざらしになっている。
 私自身も今年4つの法案を提出しましたが、一つの法案しか質問の機会をいただけなかった。それ以外は委員会の俎上(そじょう)にものっていません。非常に偏っているという印象を持っていて、これを何とかして変えていきたいと思っています。

【浅野哲議員インタビュー】実態に基づく政策論議を


 ──地元はどのような課題がありますか。


 選挙区の茨城県第5区は県北の地域で、近年課題になっているのは人口減少です。例を挙げれば茨城県の人口は、この10年で10万人減りました。高齢化率も20%から30%に上がった。あとは医者の数が足りず、全国で下から2番目。小児科医の数は全国で最下位。こういう状況では人口減少に歯止めがかからない。人口減少、医師不足を何とかして解消していきたいと思っています。

【浅野哲議員インタビュー】実態に基づく政策論議を


 ──特に重視して取り組んでいる政策は何ですか?


 この1年間は、初めから3つに決めて取り組みました。
 1つ目は「産業政策」。元々企業の研究者ということもあって、今、第4次産業革命の力で地方の産業の活性化や、IT技術を使って地方の医師不足やさまざまな課題を解決したいと考えています。
 2つ目は国民民主党税制調査会の事務局次長として、「税のあり方」を見直しています。これまでは現役世代が多くて、少ない高齢者の方々を支えていくというモデルで税がつくられていたが、これからは高齢者が増えて、現役世代が減っていく中で税のあり方、国民に対する還元の仕方も変えていかなければなりません。
 最後は「エネルギー」。国民民主党エネルギー調査会の事務局次長として、日本の産業・経済活動の根幹を支えるエネルギーを現実的に考えていかないといけない。イデオロギーなどの主張の対立だけではなく、対立の中から見えてくる、全体がまとまれる一致点をぜひ探していきたいと思っています。

【浅野哲議員インタビュー】実態に基づく政策論議を


 ──浅野さんの「新しい答え。」とは。


 産業政策において、これからは情報やデータをいかに使いこなしていくかが、日本の国内産業の活性化に非常に重要。新しい答えの一つは「データの使いこなし」。それをいかに実現するか、だと思います。
 少子高齢化、人口減少という問題については、税のあり方を変えていかなければなりません。現役世代が子どもたちや高齢者を支えていくという形から、全員がお互いを支えあうという形に変えていかなければいけない。「All for All」という概念は、一つの新しい答えだと思います。
 エネルギーに関しては、自然エネルギーを、いかに円滑に社会実装していくか。その前提として省エネは当然。電気は無駄遣いしない。しかしながら、自然からほぼ無限に手に入れることのできる自然エネルギーを、いかに経済的に社会に実装していくか。そしてさまざまなエネルギーの中でも自然エネルギーにこれまでよりも注目していきます。世の中的には、自然エネルギーはまだまだ「新しい答え。」になっていませんが、価格が高かったり、設置する場所がなかったり、後片付けをどうするのか、このあたりを解決した時に「新しい答え。」になっていくと思います。

【浅野哲議員インタビュー】実態に基づく政策論議を


 ──アメリカでは浅野さんのような理系の政治家が増えていると聞きます。


 研究者の友人は海外にいますが、政治家の友人はまだ少ない。最近言われるのがエビデンスベースド・ポリシー・メイキング。しっかりとしたデータに基づく政策作り。そして社会実装。それは間違いなく求められていく。逆に言えば、今の政府はそれが出来ていない。たとえば裁量労働の問題も、データが間違っていました。技能実習生の問題でも実態が把握されていません。まさにそれが政権の課題。われわれはエビデンスベース(実態に基づく)のポリシーメイキング(政策立案)をして、データに基づく政策論議を展開していくべきだと考えています。

【浅野哲議員インタビュー】実態に基づく政策論議を


 ──ご覧の皆さんへのメッセージを。


 国民民主党という政党は、まだ出来て半年のため、政策の内容、政党としてのカタチがこれから変わっていく余地のある、将来性のある政党です。私のように若い1期目の政治家が多くいます。これまでの考え方にとらわれずに、大胆で現実的な変革を起こしていける政党だと思っています。実際、中で活動していても感じます。もうすぐ年が変わりますが、2019年は国民民主党としてももう一段ステップアップできる、一人でも多くの国民の皆さまに理解いただいて、応援していただけるような中身、そして情報の発信の仕方を目指していきたい。もちろんわれわれ政治家自身がそういう意識を持って取り組んでいきたいと思っていますし、それができる政党だと思っています。