国民民主党は20日、悪質クレームの被害から労働者を守るため、国全体で悪質クレーム対策を推進する「消費者対応業務関連特定行為対策の推進に関する法律案」(悪質クレーム対策推進法案=通称)を党総務会で了承した。
労働組合のUAゼンセンが行ったアンケート調査で、客からの迷惑行為に遭遇した人の割合が7割を超えるなど、悪質クレーム(迷惑行為)は深刻な社会問題となっている。しかし、政府は対応に及び腰であり、今通常国会に提出予定のハラスメント対策関連の法案には悪質クレーム対策を盛り込まない見込みである。そのため、党政務調査会第三部会(厚労・文科・消費者)は昨年の臨時国会から、対策の法制化を求めるUAゼンセンからヒアリングを行うなど検討を進めてきた。悪質クレーム対策を進めるにあたっては、消費者の利益を擁護することが前提であることから、法案の検討段階では消費者関係団体からもヒアリングを行った。
総務会後に開いた記者会見で泉健太政務調査会長は、「昨年8月、UAゼンセンから176万筆もの署名が厚労大臣に届けられた。厚労省も腰を上げ始めているが、指針づくりにとどまっている。国民民主党として、悪質クレーム対策を立法化しようと立ち上がらせていただいた」と法案のとりまとめに至った経緯を説明。また、法案の担当者である川合孝典参院議員は「事業者がお客様を大切にするあまり、従業員を多少後回しにしてきた」と悪質クレーム問題が長年にわたって放置されてきた原因を説明した上で、「まずは悪質クレーム対策を議論の俎上にのせて広く社会に問題提起することを目的としている」と法案の意義を強調した。
法案(PDFダウンロード参照)のポイントは、次の通り。
1.悪質クレームの定義
従業者等に対し消費者対応業務に関連して行われる行為のうち、従業者等に業務上受忍すべき範囲を超えて精神的・身体的な苦痛を与えるおそれのある行為。
2.悪質クレーム対策
政府内に、労働者の代表、使用者の代表、専門的知識を有する者で構成する対策推進協議会を設置し、協議会の意見を聴いた上で、対策の総合的な推進に関する基本方針を定める(基本方針は少なくとも5年ごとに見直す)。
政府に基本的施策を義務付ける。
- 事業主による悪質クレーム対策を促進するための施策(対応マニュアル策定のための指針の策定、情報提供、助成、事実の把握・記録の作成のための支援等)
- 被害者に対する相談、保健・医療面でのケア、再就職促進
- 関係省庁、労働者団体、事業者団体その他民間団体等の間における連携協力体制の整備
- 定期的な実態調査など調査研究の推進
- 国民の理解を深めるための啓発・教育 など
国民の間に広く悪質クレームを防止することの重要性に対する関心と理解を深めるため、啓発月間(10月)を設ける。
法律の施行後2年を目途として、悪質クレームに対する規制の検討を政府に義務付ける。
※対策の前提
消費者が苦情の申出等を行う機会を十分に確保すること等その利益を擁護することが重要である。(法案の目的に明記)
消費者からの苦情の申出等を不当に妨げることのないよう特に配慮する。(法案の基本理念に明記)