障がい者政策

(総論)

  • 「障害者の権利に関する条約」の批准のための一連の障がい者制度改革の成果を踏まえながら、2014年に批准した同条約を誠実に履行するため、条約の規定に基づいて、住み慣れた地域で、誰もが居場所と出番がある社会を実現します。

  • 精神障がい、知的障がい、身体障がいの当事者の政策決定過程への参画を実現し、ともに議論しながら障がい者政策を進めます。内閣府に設置した政策委員会の機能強化など、障害者基本法の改正を検討します。

  • 障がいのある人のニーズを踏まえ、障害種別や程度、年齢、性別を問わず、難病患者も含めて、家族介護だけに頼らずに、障がいのない人とともに、安心して地域で自立した生活ができるよう、仕組みづくりや基盤整備、人材育成に取り組みます。精神疾患による患者やその家族への支援を充実します。また、改正された障害者総合支援法の附則を踏まえ、2011年の障がい者制度改革推進会議総合福祉部会の骨格提言の理念の実現を目指します。重度訪問介護の支援区分中度者への対象拡大や、常時介護を要する障がい者等に対する支援、障がい者等の移動や就労の支援、障害福祉サービスのあり方、障害支援区分の認定を含めた支給決定のあり方、意思疎通を図ることに支障がある障がい者等に対する支援のあり方等のうち、積み残された課題について検討します。

  • 障がい者・難病患者が住み慣れた地域で安心して自立した生活が送れるよう、「障害者差別解消法」の実効性ある運用を目指します。

  • 障害福祉サービス等報酬の改定に当たっては、全ての障害福祉事業者のサービスが安定的に提供されること、障害福祉従事者の賃金が改善して生活が安定し、離職が防止されることにつながるよう配慮します。

  • 障害福祉従事者の賃金を全産業平均の水準に引き上げることを目指して、着実に処遇改善を行います。障害福祉サービス事業所における事務職や技術指導者等の職種の処遇改善も行います。

  • バリアフリー法の対象に災害時の避難対策も含めて、避難所等のバリアフリーを実現します。

  • 第三者によるチェック体制を整備することなどにより、病院や学校、施設等での障がい者の虐待防止を進めます。

  • 障がい者の活躍の場を広げるとともに障がい者本人の意思決定を尊重するため、成年後見制度のあり方を検討します。

  • 2019年の通常国会で成立した「旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律」に基づき、旧優生保護法の下、多くの方々が、生殖を不能にする手術等を受けることを強いられ、心身に多大な苦痛を受けてきたことに対して、真摯に反省し、心から深くおわびするとともに、国が旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた方に対し、一時金を支給します。

(障がい者の就労、社会参加等)

  • 「障害者の権利に関する条約」の第27条(労働及び雇用)が「締約国は、障害者が他の者との平等を基礎として労働についての権利を有することを認める」と謳っていることに鑑み、働く全ての障がい者にディーセント(働きがいのある人間らしい)でインクルーシブな就労の場を確保することを目標に据え、政策に取り組みます。

  • 福祉的就労利用者の一般就労への移行を進めるため、現行の雇用率制度に基づく一般就労のあり方にさらなる検討を加え、すでに地方公共団体で導入事例のある多様な就労の場の創出や、尊厳ある生活を維持できる稼働所得の確保を目指します。また、法定の雇用障害者数を下回っている企業が支払う障害者雇用納付金の金額が低く、法定雇用率を達成していない企業も多いため、障がい者雇用を促進する観点から、納付金のあり方を検討します。

  • 短期的には、現行の福祉的就労における低工賃問題への対応を図り、事業者への支援策の拡充を含めて、安定的な就労場所の確保や一般就労への移行促進も含めた自立可能な仕組みの構築を図ります。

  • 障がい者雇用の水増し問題を受けて、中央省庁等で障がい者の法定雇用率達成に向けた取り組みが進められていますが、障がいの特性に配慮することや当事者の意欲と能力が十分に発揮されるようにすること等を政府等に求めていきます。

  • 親亡き後の自立生活を視野に、地方自治体における障がい者雇用配慮型の総合入札方式の拡大を進めるとともに、発達障がいに対する地域や企業、産業医の理解の増進、職場での意志決定支援者の支援導入等により、さらなる障がい者雇用の拡充を図ります。福祉と「農」の連携、遠隔操作のロボットを活用した就労をはじめ、既存の発想にとらわれない障がい者の新たな社会参加・就労機会の場を確保します。また、障がい者のスポーツや余暇活動に対する支援の充実に努めます。

  • 共生社会の創造に向けた地域住民・NPOの活動に対する支援をより拡充するとともに、それらを通じて障がいの軽重にかかわらず、健常者とできる限り同等に社会に参画する選択肢を増やしていきます。

  • 希望する子どもたちが障がいの有無などに関わらず、同じ場でともに学ぶことを追求し、難病や内部障がい、医療的ケア児を含む個別の教育ニーズのある子どもに対し、適切な指導と必要な支援を提供できるインクルーシブ(ともに生きともに学ぶ)教育を大学教育に至るまで実現します。

(障がいの特性に応じた施策)

  • 発達障がい者に対して切れ目のない支援が行われるよう、2016年に施行された改正発達障害者支援法に基づき、発達障がいの疑いのある児童の保護者への支援、教育における配慮、関係機関と民間団体の間での支援に資する情報の共有、就労の支援、地域での生活支援、権利利益の擁護、司法手続における配慮、発達障がい者の家族等への支援等を着実に進めます。また、特別支援教育コーディネーターの役割を担う教員のあり方について検討します。

  • 視聴覚障がい者などの自己選択と自己決定が実現できる社会環境を整備するため、手話言語法、情報コミュニケーション法を制定します。

  • 障害福祉サービスにおける脱施設化、とりわけ知的障がい者の地域移行を促進するため、国として具体的目標値を定め、計画的かつ戦略的に進めます。

  • 精神疾患による患者が地域で自立した生活ができるよう、病院から地域への移行を促進します。移行に必要な生活支援のあり方については、当事者とともに議論しながら検討します。また、患者の尊厳を守るため、精神科病院での身体拘束の削減を進めます。

難病対策

  • 患者のニーズを踏まえ、難病対策を拡充します。2014年に成立した難病法で全国に設置された難病対策地域協議会の実態を把握し、患者・家族の積極的な参画を促すための支援を行い、協議会の活動を活性化します。また、難病法の見直しに向け、医療費の自己負担、医療費助成を受けていた小児慢性疾患の患者が大人になると助成を受けられなくなるトランジション問題などについて検討を行います。検討にあたっては、当事者の声に引き続き耳を傾け、ともに議論しながら進めます。

  • 指定難病の医療受給者証などにより、難病患者にも法定雇用率が適用できるよう、精神障がい者の雇用率算定の状況を見極めつつ、検討を加速します。

  • 「難病の子どもの資金支援法」(仮称)を制定し「○○ちゃんを救え」等の資金を提供した人に対して認定NPO並みの税の減免措置を検討します。

ハンセン病対策

  • ハンセン病患者・回復者への偏見・差別解消に取り組みます。「らい予防法」が廃止された現在でも、社会に残る偏見・差別から、親や兄弟姉妹と一緒に暮らすことができない、自由に故郷に帰ることができない、実名を名乗ることができない、亡くなっても故郷の墓に埋葬してもらえない等、困難を抱える患者・回復者をサポートします。

  • ハンセン病回復者の社会復帰の円滑化を進め、退所者・非入居者への医療・介護・相談等の体制整備と、継続的・安定的な経済支援を行います。

  • 国立ハンセン病療養所の医療、看護、介護の充実を図るため、医師、看護師、介護員等の必要な体制を確保します。

  • 国立ハンセン病療養所については、その入所者の良好かつ平穏な療養生活のため、職員の確保に最大限努め、特に医師の確保に当たっては、地方自治体等関係機関の協力を得て欠員補充に努めます。

  • ハンセン病家族訴訟の原告団の取り組みを後押しするため、国民民主党「ハンセン病問題に関するプロジェクトチーム」を設置しました。

孤独対策

  • 国民民主党は、政党として日本で初めて、孤独対策に取り組みます。

  • イギリスでは孤独問題担当大臣が設けられ、フランスでも高齢者の孤立問題を担当する大臣が置かれるなど、孤独への取り組みが始まっています。わが国にも、孤独対策の担当大臣を置きます。

  • 相談ダイヤル「よりそいホットライン」の大幅拡充や、ソーシャルワーカーによる対面相談、社会とのつながりを持てるようにするための居場所づくりなど、個々の課題解決のためのサポート体制を強化します。

  • ソーシャルワーカーの養成を推進することや民生委員・児童委員の経済的負担を軽減することなどにより、地域で相談や支援活動を行う人材を確保します。

生活保護・生活困窮者支援

  • 真に支援が必要な人に適切に生活保護認定を行う一方で、不正受給を防止し、医療扶助に関する電子レセプト点検の強化や後発医薬品使用の促進など適正化を進めます。不正受給への罰則を強化します。

  • 貧困が命に関わる危険な状態を招く事例も少なくありません。生活保護受給資格の要件をわかり易く提示し、要件を満たした場合は適切に受給資格を付与するとともに、受給資格があるにもかかわらず、給付を受けない事態が放置されないように対応します。また、就労インセンティブを損なわないようにするために、生活保護の収入認定や生活保護の各扶助を単独で支給することの是非等について検討します。

  • 2017年に行われた生活保護の基準の検証に用いられた水準均衡方式を見直して必要な措置を講ずるとともに、その間、要保護者に不利な内容の保護基準を定めないようにします。

  • 「生活困窮者自立支援法」について、実施率が低迷する任意事業の必須事業化を強力に進めます。なお、本制度とホームレス自立支援制度については、相互の役割を踏まえて事業の連携を円滑に進めます。

  • 経済的に困窮している人や社会的に孤立している人に対する生活支援を拡充するため、求職者支援制度の活用、ハローワークや自治体の様々な相談機能の縦割りの解消、NPO等との連携により、社会復帰、早期就労や住居確保、学習支援など、自立支援を充実させます。

  • 今後、単身高齢者世帯が増加していくことに鑑み、空き家等の活用を含めて検討し、介護度にかかわらず、低所得の高齢者であれば入居できる支援付き住宅の整備を進めます。

  • 貧困による子どもの不登校、引きこもり、ひとり親家庭の生活困窮の状況、フリーターなどを含む非正規労働者の生活実態などについて、縦断調査を含め詳細な調査と分析を進めます。

自殺対策等

  • 自殺対策基本法に基づき、国が都道府県・市町村の自殺対策計画づくりを支援し、計画に基づく事業への財政支援や事業の結果の検証を行うことで、国が地方と連携して全国的な自殺対策を改善・進化させます。

  • 若年世代への「包括的な生きる支援」の強化や、働く人の尊厳と健康が守られる職場を増やすための枠組みづくり、「よりそいホットライン」の拡充など、「自殺総合対策大綱」に即した対策を実現するための予算等を確保して、引き続き自殺対策を推進し、一人でも多くの命を守ります。

  • 自殺総合対策推進センターが中心的役割を担い、労働や福祉分野など広く関連施策と連動させた総合的・効果的な自殺対策の実施に必要な調査研究及びその成果の活用等を行ったり、地域レベルでの自殺対策を担う地方公共団体の取り組みに対して支援します。

被爆者援護施策

  • 被爆者やご家族、それを支える方々の意見に真摯に向き合い、被爆者援護施策の一層の充実を図るとともに、原爆症認定の遅れに伴う援護措置の遅延など、懸案の諸課題の解決を図ることを検討します。

戦没者遺族等に対する援護施策

  • 一日も早く、一柱でも多くのご遺骨をご遺族の元にお返しできるよう、2016年に成立した「戦没者の遺骨収集の推進に関する法律」に基づき、諸外国や他省庁、民間団体との協力や情報の収集を積極的に行って、ご遺骨のDNA鑑定の対象拡大を急ぐとともに、遺骨収集に集中的に取り組みます。