総論

  • 「労働基本法(仮称)」をつくり、働くことの価値と重要性を再確認するとともに、雇用については「無期、直接、フルタイム」という三要素を基本原則に位置付けて、雇用の本来あるべき姿を取り戻していきます。

  • 未批准のILO中核条約(第105号強制労働、第111号差別撤廃)の早期批准を目指すとともに、ILOからの勧告等を尊重し、批准済みのILO条約の遵守徹底を図り、ディーセントワークの実現に努力します。あわせて、強制労働や児童労働などによって生産された製品等の輸入・取引をしないようにする取り組みを推進します。

  • 雇用形態に関係なく、会社等で働いていれば原則として社会保険の適用を受けられるようにします。

  • 社会に出る若者が自らの権利等を守る力を養えるよう、「ワークルール教育推進法」を制定します。その中で、社会に出てからの継続的な知識の習得や、使用者のワークルール教育についても行い、健全な労使関係の醸成にも寄与します。

  • 雇用や労働に関わる全ての政策について、「三者構成原則」を徹底し、政府、労働者代表、使用者代表が対等な立場で協議して、決定し、お互いに尊重して実行することを徹底します。

  • 過半数労働組合が存在しない事業場については、従業員代表が対象労働者による民主的な手続で選抜され、代表制が確保されるよう、現行制度の徹底と監督の強化を図りつつ、労使団体と協議の上、「従業員代表法案(仮称)」の検討に着手します。

  • 政府が実現を目指し、厚生労働省の検討会で議論が進められている「解雇の金銭解決制度」の導入については、現状ではかえって経営者による解雇権の濫用を助長しかねないことから、反対します。不当な解雇が多発している現状に対して、紛争解決や救済制度の拡充による労働者保護の強化を図ります。

  • 地域や職務を限定する「限定正社員」の名を借りて正社員を解雇しやすくしたり、賃金引き下げなどを狙う見かけ正社員づくりなど、現政権が「世界で一番企業が活躍しやすい国」をつくると称して目指している労働規制緩和は認めません。

  • 雇用形態の多様化により、フリーランスやフリーシフト制、個人請負や一人親方、副業・兼業など、同じ働く者でありながら、労働法令等による保護から除外されてしまう働き方(働かせ方)が拡大している中で、労働時間や賃金、安全衛生など労働者保護ルールの適用のあり方を検討し、働く者全ての命と健康と暮らしが守られる環境を整備します。

  • 毎月勤労統計調査の不正により、この調査をもとに算定する雇用保険、労災保険、船員保険、事業主向け助成金について、多くの人の給付が支払い不足となっていました。1人でも多くの方の被害が回復されるよう、あらゆる手段を尽くすことを政府に求めていきます。

長時間労働の是正

  • 長時間労働の是正のため、実効性のある規制を定めた「安心労働社会実現法」を制定します。

  • 過労死や労災を防ぎ、働く者の命や健康を守り、自分や家族の時間を確保するため、仕事の終業時間から翌日の始業時間までに十分な休息時間の確保を義務付ける勤務間インターバル規制を導入します。インターバルの時間は、交代制勤務や通勤時間なども考慮した上で、EU指令並みのインターバルを目指して議論します。

  • 長時間労働の温床となっている裁量労働制について、健康管理時間(社内と社外での労働時間の合計)の把握と記録を義務付け、それを上限規制の範囲内とすることを制度導入の要件とする、企画業務型の裁量労働に関する法令違反をした企業に、制度の利用を一定期間中止させる制度を導入するといった規制強化によって制度の適正化を図ります。

  • 違法残業など法令違反に対する罰則を強化します。

  • 1週間に1日は必ず休日をとることを法定化し、違反への罰則を設けます。

  • 事業主に個々の労働者ごとに労働時間管理簿を作成して、始業・終業時刻や実労働時間等を記録することと、本人等の要請で情報開示することを義務付けます。

  • 「ブラック企業ゼロ」を目指して、企業及び事業所ごとの働き方情報(3年離職率、残業時間、有給・育休・産休の取得率、過労死・労災死の有無など)の開示義務の法制化を目指します。青少年雇用促進法における新卒求人者への企業情報開示についても、対象情報を拡充します。問題となっている固定残業制については、基本給と残業代(所定外賃金)の明示を義務化します。

  • 医療や介護分野などでの夜勤・宿直・連続勤務問題や、労働基準法上で労働時間規制や36協定上限告示の適用除外となっている業務(名ばかり管理監督者を含む管理監督者、農業、建設業など)等の問題について、当事者と一緒にそのあり方を検討し、労働者の命と健康と生活を守る観点から規制改革を図ります。また、深夜勤務が健康等に与える影響についての研究・調査を進めます。

  • 政府の働き方改革の法案では、法施行5年後に適用される自動車運転業務の時間外労働の上限が年960時間と長いため、一般則である年720時間とします。

  • 子育てや介護など、家族的責任がある方も就労の継続や両立が実現できるテレワークやサテライトオフィスなど、在宅型の新しい就労スタイルを推進します。

  • 生活と仕事とを両立するために必要な有給休暇や出産・育児休業など、各種休業・休暇制度を希望通り取得できるよう、法を整備し、企業文化改革を促します。男女共同参画社会実現のため、男性の育児休業取得を促進します。

  • 労働基準監督官の人員体制を増強し、監督署による監督・指導を強化・厳格化して、企業によるさまざまな労働法例違反の取り締まりを徹底します。

  • 労働時間規制の適用が除外される労働者を生み出す「高度プロフェッショナル制度」は過労死や過重労働を助長するものであり、断じて認められません。

  • 長時間労働の温床と指摘されている裁量労働制の対象業務拡大は、過労死や過重労働を助長するものであり、断じて認められません。

賃金の引き上げ

  • 同じ価値の仕事でも、非正規雇用などを理由に賃金が低くなることが多く、不公平です。性別や正規・非正規の違いを問わず、同じ価値の仕事をすれば同じ賃金が支払われることを目指し、「同一価値労働同一賃金」を法定化し、合理的理由のない賃金・待遇の差別を禁止します。差をつけた場合は合理的理由があるかどうか、企業に立証責任を負わせます。制度導入にあたり、非正規労働者の賃金・待遇に全体を合わせることがないようにします。

  • 中小企業に適切な支援をしつつ、最低賃金は、『全国どこでも時給1,000円以上』を早期に実現し、さらに暮らしを底上げします。

ハラスメント対策

  • 会社内のパワハラ、取引先などの他の会社の労働者からのパワハラ、下請け会社などの他の会社の労働者へのパワハラに対して、労働者の安全・健康を守る観点から必要な予防・保護のための措置を講ずることを事業者に義務付ける法律を制定します。

  • 悪質クレームの被害から労働者等を守るため、国全体で悪質クレーム対策を推進する「悪質クレーム対策推進法」を制定します。法律には、①政府内に協議会を設置し、基本方針を策定すること、②事業主による悪質クレーム対策を促進するための施策(対応マニュアル策定のための指針の策定、情報提供、助成等)、被害者に対する相談、保健・医療面でのケア、再就職促進、国民の理解を深めるための啓発・教育などの対策を推進すること、③悪質クレームに対する規制の検討を政府に義務付けること等を盛り込みます。

  • 会社間のセクハラ・マタハラ対策を強化するため、事業主に対する義務を新設する法律を制定します。具体的には、①被害側の事業主は、加害側の事業主にセクハラを行わないよう求める、または厚労大臣に是正を図るよう求める、②加害側の事業主は、加害者(社員)に対し、セクハラを行わないようにするための必要な措置をとる(加害側企業の事業主は、被害側企業に対して不利益な取り扱いをしてはいけない)こととします。

  • 就活生やフリーランスとして働く人に対するセクハラも含め、セクハラ行為を法律で禁止します。

非正規雇用対策

  • 非正規雇用については、臨時的・一時的なものであるべきことを明確化し、入り口規制(雇い入れ要件)の導入と出口規制(更新期間や回数要件など)の改善を図るとともに、社会保険の適用や差別禁止の徹底により安心を確保します。

  • 2015年に改悪された労働者派遣法については、戦後に労働者供給事業が禁止されたこと、及び1985年の派遣制度導入時の原点に立ち返り、真に労働者にメリットがある専門職や臨時的・一時的業務等に限定した形に戻すべく、再改正の論議に着手します。

  • 国・自治体が率先して非正規問題に対応するため、公務部門における非常勤雇用問題や官製ワーキングプア問題の解決を目指し、公務員にも労働契約法等の趣旨を適用すること等、具体的取り組みを進めます。また、公契約基本法の制定を図り、公正労働基準や労働関係法の遵守、社会保険の全面適用等を公契約の基準とします。

雇用の創出・雇用の確保

  • 新規の正規労働者に係る社会保険料の事業主負担を軽減する「中小企業正規労働者雇入臨時助成金の支給に関する法律案」を成立させます。

  • 成長分野で新規雇用を増やし、希望する人が成長分野への新規就労や転職を実現できるよう、個人や企業の取り組みを支援します。経済政策の最大の目的が質の伴った雇用の維持・拡大であることを明確に位置付け、グリーン(環境・エネルギー分野)、ライフ(健康・医療・介護分野)などの成長分野での産業育成を進めます。

  • 青少年雇用促進法を改正し、新卒求人における企業情報の公開・提供義務を拡充します。また、自ら起業したり、農林漁業やものづくりなどの専門職への道を希望する若者を応援する制度を強化します。

  • 就職氷河期時代に学校を卒業し、不本意ながら非正規雇用で社会人としてのスタートを切り、その後も正規雇用への道が閉ざされている世代にも、各種の積極的労働市場施策を実施し、正規雇用・無期転換の促進を図ります。

  • 職業訓練や社会的セーフティネットなどを強化して、成長分野への移動を希望する人材の円滑な移動を支援します。科学者、芸術家、起業家など、クリエイティブ人材の育成と集積を進めます。イノベーションや人材開発に必要な海外からの高度人材の受け入れは、労使との協議に基づき計画的に認めていきます。

  • 働き続けたいシニア世代が働き続けられるよう、高年齢者雇用安定法の徹底により、定年の引き上げや継続雇用制度の導入に加え、高齢者の積極採用などを企業に促す取り組みを着実に実行します。再雇用後の労働条件については、労働契約法20条の規定に則り、非合理な差別待遇とならないよう周知と指導を強化します。

女性の雇用

  • 女性活躍推進法の実効性を高めるため、男女の賃金格差と女性労働者の非正規比率などについて、企業等が把握し目標を設定するよう義務付ける法改正を行います。

  • 女性の多くがパート、有期、派遣等のいわゆる非正規雇用に従事していることから、パート労働法、派遣法、労働契約法等の見直しにより、合理的理由のない処遇格差の禁止対象を拡大することや、無期転換・正規雇用転換制度を促進すること、さらには全ての労働者が必要な休業・休暇を取得できる環境を確保すること等の改革を進めます。

  • 「2020年30%」(社会のあらゆる分野において、2020年までに指導的地位に女性が占める割合を少なくとも30%程度とする目標)の達成に向けて、女性の採用や管理職・役員における女性の登用についての具体的な目標を設定するなど、実効性のある推進計画を策定します。

  • 政策・方針決定過程への女性の参画の拡大に際しては、「継続就業のための環境整備」にとどまらず、物理的な「職場環境の整備」も進めます。

  • 男女雇用機会均等法を「男女雇用平等法」とするとともに、「男女労働者の仕事と生活の調和を図る」ことを目指します。

  • 女性の平均給与額は男性の約7割しかなく、賃金格差が大きく開いたままです。ILO第100号条約の遵守徹底を図るためにも、同じ価値の仕事をすれば同じ賃金が支払われるよう、「同一価値労働同一賃金」を法定化します。また、日本が未批准のILO第183号条約(改正母性保護条約)の批准を求め、雇用形態に関係なく全ての女性労働者に対する母性保護と母性を理由とした差別の禁止が法令で担保されるよう改革していきます。

  • 在宅就労を可能とするテレワークの普及、教育訓練給付制度を活用したスキル習得機会の拡大などにより、特にボリュームゾーンである団塊ジュニア世代を中心に女性の社会参加を促進するとともに、結婚・出産前後の女性が働きやすい環境を整備する企業への支援の拡充を行います。

  • 就業継続のための取り組みを前提として、妊娠、出産、育児により退職した女性を同じ事業所で再雇用した場合に補助金を出すといった再就職支援策を進めます。

  • 母体保護、授乳権の観点からも、結婚・出産前後の女性が働きやすい環境を整備する企業への支援の拡充を行います。
  • 結婚、出産、介護、看護など様々なライフステージにおける休職・離職に対応し、就業の継続・復帰を支援します。その際、不当・差別的な取り扱いをされないよう、職場環境を整備します。
  • フリーランスで働く女性の産前・産後休業、育児休業制度について検討します。

人材の育成、就労支援

  • 情報・通信技術やAIの活用、ロボット等の導入により、仕事と私生活の境界が曖昧になったり、職場における「人間」の役割が大きく変わったりすることが想定されるため、こうした変化の中でも、ゆとりのある働き方ができるよう働き方のルールを見直すとともに、職場環境の変化に対応した人材を育成するため、学校教育や職業訓練の見直しを進めます。

  • グローバル人材と高度技能人材の育成のため、まず人的資源の裾野を広げることに注力し、その上で、産官学の連携による体制の強化を図ります。

  • 若者の就労支援を拡充し、未来を担う人材を育てます。若者が夢と希望をもって働ける社会を実現するため、新卒世代を中心に、学校における職業教育やカウンセラーによる進路指導、ハローワークでの職業相談など就労支援をさらに拡充し、若年者雇用を促進します。

  • 高校、大学等における職業教育・訓練やキャリア教育を大幅に拡充するため、企業に協力を求め、その企業規模に応じて、職業教育・職業訓練やインターンなど生徒・学生の受け入れを行い、様々な仕事を実際に体験する制度を展開します。

  • 公的職業訓練の求職者支援制度について、新卒者も含め、制度を周知徹底し、ニーズをより重視したカリキュラムの再編など抜本的な拡充を行います。特に企業の協力を得て、職場実習を重視するように見直します。さらに訓練期間の大幅延長を図ることで、多様な資格取得の支援も可能とし、確実な就労につなげます。

  • 教育機関が、急増した非正規雇用、女性、高齢者をはじめ再チャレンジを求める方々に学び直しの機会を提供し、複線型のキャリアパスの形成を支えていくことを可能にするため、社会人の学び直しに対応した入学・履修制度、カリキュラム、人員体制を整備しつつ、「教育訓練給付制度」の拡充を図るなど、「学び直し」の最大の課題である経済的負担の軽減を図ります。

  • 大学における社会人学生比率が非常に低いことを踏まえ、大学と企業との連携による再教育機会の推進や通信教育・放送大学の拡充などを進めます。社会人のキャリアアップ促進のための対策を大学・企業等に求めます。同時に大学等高等教育機関における社会人特別選抜枠の拡大等の編入制度の弾力化、夜間大学院の拡充、科目等履修制度・研究生制度の活用、通信教育の拡充を進め、社会人の受け入れを促進します。

  • 高齢者を中心に再犯率が高く、刑務所が福祉施設の代替となっている現状にあります。特に高齢者や障がい者等の受刑者については、その特性に応じて刑務所出所後の就労支援など再犯防止を法務省のみならず厚生労働省との共通事業として取り組みます。

外国人労働者の受け入れ

  • 活力ある日本社会の実現には、外国人労働者が必要であり、その能力が存分に発揮され、国民との協働・共生が地域社会や生活の現場においても推進されることが大前提です。

  • 特定技能制度にとどまらない抜本的な外国人労働者受け入れのあり方について、①地方の人材確保、②客観的かつ合理的な上限の設定、③適切な外国人労働の待遇、④在留資格変更時の一時帰国、⑤現行諸制度の抜本的見直し、⑥適切な社会保障制度と教育制度、⑦家族帯同など人権的な配慮、⑧多文化共生施策の充実の8項目を早急に再検討するよう政府に求めます。

  • 外国人を受け入れるのなら、大都市圏ばかりでなく、人材確保が困難な地方へも必要とされる人材が集まるよう、人材の確保や生活支援、11以上の言語に対応したワンストップセンターの整備などに取り組む地方自治体等に対して、制度・財政上の裏付けをもって支援するよう政府に求めていきます。

  • 地域や職場、学校での交流事業の支援、日本語教育の機会確保、また外国人対応が増えている自治体への政府からの支援を求めます。