エネルギー政策の基本姿勢~スマート・コミュニティ社会の実現へ~

  • 狭義のエネルギー利用のあり方にとどまらず、労働人口減少や高齢化に伴う社会保障、地域社会の消滅、高齢地域対策などの社会のあり方といった課題へ対応するため、これまでのエネルギー政策の基本的視点である「3E+S」(エネルギー安全保障を含む安定供給(Energy Security)、コスト・経済性(Economic Efficiency)、環境(Environment)、安全・安心(Safety)にとどまらず、「持続性(Sustainability)」と「社会(Society)」を加えた「3E+3S」の展開を目指します。従来のエネルギー政策に加え、災害に強く安定的で、ストック効果が期待できるエネルギーのあり様を指向するとともに、少子高齢社会や消滅可能性都市やインフラ更新などの社会課題に対して、エネルギーを呼び水として、新しい社会の創造を模索します。

  • 自治体・エネルギー企業・組合形式の運営主体などが共同参画し、地域内の発電所等からの熱を積極的に活用するまちづくり、地域の状況に合わせた親和性の高い再生可能エネルギーの導入の推進、エネルギーの地産地消を通じた分散型エネルギー社会を目指すスマート・コミュニティへの転換を推進します。これにより、地域の産業と雇用の創出や、職住近接・ディーセントワーク(働きがいのある人間味あふれる仕事)の実現加速を促し、地域のつながりと共生社会に貢献していきます。

  • スマート・コミュニティの拡大を進める中で、あらゆる政策資源を投入し、2030年代を目標として、できるだけ早期に原子力に依存しない社会(原発ゼロ社会)を実現します。この目標に向けて、新技術の開発、人材の育成に最大限注力し、現実的な工程表の作成に早急に着手の上、エネルギー・ミックスのあり方を可及的速やかに提示していきます。

  • エネルギーを取り巻く環境が日々連続的に変化している中で、政治の責任の範囲を明確にしつつ、原子力エネルギーに依存しない社会に向けた現実的なシナリオを描いていきます。

  • あわせて、徹底した省エネルギーと再生可能エネルギー30%以上の導入等により、2030年に1990年比30%以上の温室効果ガス削減を目指すなど、エネルギーと環境の調和について積極的に取り組みます。

法規制の整備を通じた省エネルギーの推進

  • 建築物については、新築、リフォーム、賃貸・販売のそれぞれの場合に法的規制を講じるとともに、省エネ・断熱の見える化を促進します。

  • 公共建築物においては新築の際の断熱・省エネ工事、及び断熱改修を義務化してコスト低下の誘因を図ります。

  • 省エネはストックとして長期にわたり安定的に貢献する、持続性を担保するカギであり、補助制度を拡充して民間の省エネ・断熱等のコスト回収時間を短縮していくほか、高効率の機器や省エネ家電への買い替え促進を図ります。

  • BEMS(Building Energy Management System)導入等による省エネの見える化を推進するのみならず、建築物の賃貸や販売の際に断熱性能の説明を義務化し、工場やオフィスの省エネ進捗度の公表や金融機関の省エネ融資を点数化して実績を公表する等の制度設計を行い、必要な規制の法制化を進めます。

  • わが国が得意とする技術を活かし、エネルギー管理システム、太陽光パネル、家庭用燃料電池などを組み合わせたZEB(Zero Energy Building)やZEH(Zero Energy House)などの導入を力強く後押しし、スマート・コミュニティ形成の促進を図ります。

  • 発電の際の熱だけでなく、地熱、地下水熱、太陽熱、温泉熱等について、それぞれの地域与件に合わせて熱利用を促進するとともに、これらの熱を大気中に逃さないような仕組みを検討し、コミュニティ単位での活用、面でのエネルギーと熱の活用を推進し、より有効かつ柔軟なエネルギー利用を図ります。

地域分散型エネルギーとスマート・コミュニティの構築

  • 現在の系統の変電所以下のレベルを一つの単位とするイメージで、その中での発電(LNGや自然エネルギーなど)を核としたコンパクトシティをつくり、最先端のIT技術等で結ばれ、電力と熱を有効に活用するスマート・コミュニティの構築と、それを支える次世代型送電網の整備を目指します。政府がスマート・コミュニティを強力に推進し、その下で地方公共団体、エネルギー企業、組合形式の運営主体、地域に集うあらゆるステーク・ホルダーが参画できる体制を構築していきます。

  • 工場立地地域や商業地域、田園地域など、それぞれの地域にある特徴を最大限尊重し、高度化したLNGガス火力発電やバイオマス発電、水力発電、地熱発電、地上・洋上風力発電などの再生可能エネルギーを組み合わせ、発電で生じる熱は、熱伝導管で施設へ融通し冷暖房に活用するなど徹底した有効利用を図り、スマート・コミュニティのまちづくりを進めます。

  • スマート・コミュニティのエネルギー運営及び系統側との電力の連接、エネルギー運営組合への支援や運営主体に既存のエネルギー企業の参加を促し、経験を活かした系統との効果的な連接、オンサイト発電へのエネルギー供給、スマート・コミュニティ内の契約者との円滑な調整が行えるようにし、社会や経済の変化に対し、そこで働く者や組織が「公正な移行」に乗れるようにします。

  • IoT・5G・ブロックチェーン等の最新技術を活用し、分散協調型の電力網を構築するとともに、電力取引市場を高機能化し、総合的な経済性、地域社会間の連結性、持続可能性を向上させます。

  • BEMS・HEMS(Home Energy Management System)を利用した需要側と供給側のデジタルでの連携とデマンド・レスポンスによる制御を行う熱伝導管、送電線、データ通信網等の適切な施設の配置や技術を構築するため、地域のインフラ更新時に合わせて、自治体と国が一体になって取り組みます。

  • オンサイトで発電された電力については、系統向けの売電や固定価格買取制度(FIT)を経由させない地産地消を原則的に優先させ、有効に利用するために規制を緩和して域内送電線を適切に敷設するとともに、昼夜のバランス等を勘案し、スマート・コミュニティ内で適切に電力消費できるような環境の整備を図ります。その移行的な期間においては、容量市場、及び市場調整力の整備等を含めた安定的な電力の確保と並行し、再生可能エネルギーの促進を図ってまいります。これにより、FITへの過度な負担を削減する一方、再生可能エネルギーの推進機運を削ぐことなく継続していきます。

  • 再エネ・省エネの類型別に以下のように強力な開発・普及支援を行います。

    • 太陽光: 技術開発、需要創出などによるコスト低減、農地などの規制改革
    • 風力: 建築基準の適正化、環境アセス法の適切な運用、系統対策
    • バイオマス: バイオ燃料の国内生産・流通体制の構築、導入目標を定めた国内消費の促進、品質を公正評価する体制整備の推進
    • 地熱: 環境と調和のとれた開発の推進、技術開発促進
    • 水力: 水利権への柔軟な対応、ポテンシャル調査補助事業
    • 海洋: 技術開発及び実用化・事業化の促進、海洋利用ルールの法制度の整備
    • スマート化: スマートメーターの普及促進
    • 燃料電池: 研究開発・コスト低減支援、燃料電池自動車の普及促進
    • 蓄電池: 新設病院などへの設置、規格の国際標準化への取り組み

化石燃料の安定的な確保と流通基盤の整備

  • 一次エネルギーとしての利用に加え、スマート・コミュニティ内でのオンサイト発電用燃料として、あるいは系統側での信頼の置ける電源に用いるため、化石燃料が果たす役割は多くあります。安定的な確保と流通基盤の整備のため、複数の調達手段を確保し、価格の競合を可能にする環境の醸成と中期的な安定供給の確保に取り組みます。

  • 石油並びに保存性に優れるLPGについて、暖房・給湯部門における分散型エネルギーの中核の一つとして位置付け、多様なエネルギー選択肢を保持していくとともに、製油所の強靱化、災害時の避難所での燃料や病院などの非常用発電燃料等の確保、及び供給体制の万全の確保を図ります。

  • 災害に強い実績を有する国内の広域基幹ガス・パイプライン整備を政府主導で推進します。また国内ガス取引市場の活性化の促進と、LPガス事業者の天然ガス市場への参画を推進できるよう支援措置を検討します。

  • エネルギーの効率的利用のため、石炭火力やLNG火力発電施設の高度化・高効率化が必須であり、新設火力には効率的な熱利用を促すよう必要な措置を講じます。また発電所にとどまらず、製油所の熱回収の高度化、施設の効率化を推進し、LNG気化の際の冷熱を有効活用する制度を検討します。

  • CCS(二酸化炭素回収)、CCUS(二酸化炭素回収・利用)などの次世代エネルギー関連技術の実用化に向けた支援を推進し、これらの技術の進展を前提として石炭火力の活用を検討します。

原子力エネルギーに依存しない社会の実現

  • スマート・コミュニティの拡大を進める中で、あらゆる政策資源を投入し、2030年代を目標として、できるだけ早期に原子力に依存しない社会(原発ゼロ社会)を実現します。この目標に向けて、新技術の開発、人材の育成に最大限注力し、現実的な工程表の作成に早急に着手の上、エネルギー・ミックスのあり方を可及的速やかに提示していきます。

  • 東京電力福島第一原発事故の教訓を踏まえ、原子力発電については、①40年運転制限制を厳格に適用する、②原子力規制委員会の安全確認を得たもののみ、再稼働とする、③新設・増設は行わないことを原則とします。

  • 原子力発電所の再稼働については、厳格な安全基準の徹底は当然のこととして、避難計画の作成と地元の合意を必須とします。

  • 廃炉を決定した原子力発電所の安全かつ着実な廃炉、原子力発電関連施設の徹底的な安全管理などに向けて、原子力に関する技術の継承・開発、人材の確保・育成、廃炉技術の確立について、国の主導で最大限取り組みます。

  • 原子力発電所の海外輸出については、個々の案件について企業単独のリスクヘッジが難しくなりつつある中で、ライフサイクルコストを透明化した上で、慎重に検討します。

  • 原子力損害賠償制度について、国と事業者の責任分担のあり方等を踏まえ、検証、見直しに取り組みます。

  • 原子力安全の向上に向けて、原子力規制員会のあり方や、原子力規制全般について、不断の検証、見直しに取り組みます。

使用済核燃料の処分、核燃料サイクル事業

  • バックエンドの問題は、政府が前面に出て対応すべきであり、使用済核燃料や最終処分の問題は国民全体が共有すべき課題であることを国が積極的に啓発していきます。

  • 電力会社の保有する使用済核燃料について、一部は政府の責任の下、ドライキャスク(乾式キャスク貯蔵)での一時保存を行うなど、全量再処理政策の見直しを含め、将来における最終的なあり方を検討します。

  • 使用済核燃料の総量管理については、日本国民や国際的にも理解が得られるよう全体計画を総合的に検討するとともに、使用済核燃料の減容化、減量化、低害化の研究開発を国際的に進めます。

  • 再処理事業については、「利用目的のないプルトニウムは持たない」との原則を堅持します。核燃料サイクル事業に対する国の責任を明らかにし、今後の原子力発電所の稼働や、技術革新、国際情勢等を踏まえ、そのあり方について検討を進めます。

  • 青森県を高レベル放射性廃棄物の最終処分地にはしません。

原子力発電所立地地域の経済、雇用

  • 原子力発電所立地地域の経済、雇用に関する政策については、地方自治体、地域住民との話し合いと合意形成を大前提として取り組みます。

  • 国の新たな要請によって影響を受けることになる原子力発電所立地地域の理解を得るため、スマート・コミュニティ推進のモデル地域として位置付け、エネルギー代金を削減できるような財政的支援、先進的技術産業の誘致、グリーンエネルギーの導入支援を含めた各種施策を優先的・重点的に行う等、経済、雇用が安定的に維持できるよう措置を講じます。

  • 防災対策の重点区域などの見直しにあたり、避難困難者対策を含め、周辺地域における原子力防災対策を強化します。

地球温暖化対策

  • 徹底した省エネルギーと再生可能エネルギー30%以上の導入等により、2030年に1990年比30%以上のCO2削減を目指します。

  • 全ての国が参加する将来枠組みを採択するため、我が国から具体的な将来枠組みを提案し、主導的な環境外交を展開します。

  • 地球温暖化対策に関する①国際社会に通用する新たな中長期数値目標の設定、②再生可能エネルギー導入目標の設定、③省エネルギーの徹底、④技術開発、⑤環境外交の推進、⑥環境適応等を盛り込んだ基本法の制定を図ります。これにより、地球環境・生態系の保全、新たな産業の創出、就業機会の拡大など環境と経済発展の両立を図ります。

  • 温室効果ガスを大量に排出する火力発電所については、一定効率以上の発電所以外の建設を認めないなどの規制の導入に向け検討を進めます。

  • 強力な温室効果ガスであるフロンについては、回収を徹底するとともに、速やかな自然冷媒など代替物質への転換を推進します。