東京電力福島第1原子力発電所を視察する増子輝彦本部長、玉木雄一郎代表、小沢一郎・自由党共同代表

東電福島第1原発を視察する増子輝彦本部長、玉木雄一郎代表、小沢一郎・自由党共同代表

 党東日本大震災復興・福島・原発事故対策本部(本部長=増子輝彦幹事長代行・参院議員、事務局長=大島九州男参院議員)は4日、玉木雄一郎代表とともに福島県を訪れ、東京電力福島第一原子力発電所の廃炉へ向けた進捗状況や、大地震と津波、原発事故からの復興を目指す福島県双葉地区を視察するとともに、試験操業に取り組むいわき市の漁業関係者と意見交換を行った(写真は東京電力福島第1原子力発電所を視察する増子輝彦本部長、玉木雄一郎代表、小沢一郎・自由党共同代表)。

■東京電力福島第1原子力発電所

いま発電所が抱える課題について説明を受け

いま発電所が抱える課題について説明を受ける視察団一行

 玉木代表ら対策本部一行はまず、小沢一郎・自由党共同代表とともに、東京電力福島第1原子力発電所を訪れた。原子炉建屋敷地内に入る前に、磯貝智彦所長と野呂秀明部長より、いま発電所が抱える課題について説明を受け、汚染水への対処、1号機から3号機内にある溶融した燃料の取り出しと使用済核燃料の対処、廃炉に従事する作業員の労働環境の確保、廃棄物を含め放射性物質を安定的な保管設備の整備などを大きなテーマとして取り組んでいることが示された。その後、発電所構内に入り、免震重要棟や多核種除去設備(ALPS)等の設備外観を視察したほか、強い風雨の中、直接目視で俯瞰できる高台に立ち、1号機から4号機原子炉建屋の現状を視察した。

 視察中、東京電力から、現在は平日には約4000人が作業に従事しており、汚染水対策作業を中心に約8000人が従事していた以前の状況と比べれば、凍土壁やサブドレン設備を整備した効果もあって、汚染水管理も安定して行われている、との説明を受けた。また、燃料デブリの取り出しと廃炉措置へ向けて、先月13日には2号機の原子炉周辺の格納容器の底面にある燃料などの堆積物についてロボットを使用して接触調査を実施するなど、順次工程を進めていくことが報告された。

 視察後、記者の取材に応じた玉木代表は、一口に廃炉と言っても、ものすごい時間と、技術や人が必要なことを改めて認識した。原子力エネルギーに依存しない社会に向けて、廃炉も含めた現実的な道筋を示していくことが大切で、党内で議論を深めていきたい、と述べた。

東京電力福島第1原子力発電所を視察する一行

東電福島第1原子力発電所を視察する一行

■双葉地方町村会訪問

 続いて一行は、双葉地方町村会(楢葉町、広野町、富岡町、大熊町、双葉町、浪江町、川内村、葛尾村)を訪問し、各町村長との意見交換を行った。

 冒頭、玉木代表があいさつし、震災以降、行政の長としてさまざまな困難を乗り越えてきたことに敬意を表すとともに、震災から間もなく8年が経つが、決して風化させることなく、私たちも政治の責任を果たし、しっかりとご意見を賜って反映させていきたい、と述べた。

 自由党の小沢共同代表は、この問題は一企業の問題でもなく、皆さんの地域だけの問題だけでもなく、日本の国・社会全体の課題として国が前面に立って解決しなければならない課題だ、とあいさつした。

 双葉地方町村会の会長である楢葉町の松本幸英町長は、双葉郡内の復旧・復興は着実に進んでいるが、未だ避難指示を余儀なくされている自治体もあり、町村ごとに進捗状況に違いがあることを感じてもらい、それぞれの山積する課題について聞いていただき、今後の反映してもらえればと思う、とあいさつした。その後、復興への取り組み、まちづくりと企業誘致、鳥獣被害対策など意見交換を行い、増子本部長は、復興のステージが変わっていく中でも、復興庁の後継組織はしっかりと組織し、専任大臣を置き、財源をしっかり確保すべきと要求しており、引き続きしっかりと対応していきたい、と応じた。

双葉地方町村会であいさつする玉木代表

双葉地方町村会であいさつする玉木代表

■福島県立ふたば未来学園高等学校訪問

 次に対策本部一行は、県立中高一貫校の設置が盛り込まれた「福島県双葉郡教育復興ビジョン」に基づき、2015年4月に開校した「福島県立ふたば未来学園高等学校」を訪問した。

 まず丹野純一校長から開校の経緯、建学の精神と理念、学校が目指す人材育成要件(ルーブリック)などについて説明があり、特に、地域の復興の課題を自ら調べて見つめてまとめる演劇製作や海外研修、それらを踏まえて地域復興を探求し実践を行う「未来創造探求」をカリキュラムに入れていることが特徴であることが示された。

 対策本部の出席議員から、ルーブリックに自主的に取り組む生徒と指導する側の教員との調和について聞かれると、丹野校長は、それこそが本質的な課題で、当初は教員として「教える」という意識変えられず悩ましかったが、「教える」のでなく「ともに考える」との意識をもってここまでやってきた、と述べ、同席した南郷一平副校長は、試行錯誤を重ねた結果、今年3月に1期目の生徒が卒業していく姿を見て、教員の意識は一気に変わったと思う、と所感を語った。

 最後に2年生で生徒会長の菅野美桜(みらい)さんからあいさつが行われた。菅野さんは、東日本大震災での大きな地震や津波、避難生活の経験を通じて、自然災害の怖さとともに人と関わることの大切さを知ることができたことや、震災やこの学校での経験を活かして、学んだことを多くの人に伝えたいことなどを述べ、双葉地区唯一の高校として、地域の人たちとのつながりを大切にして、福島をもっと明るく元気にできたらいいと思い、生徒会長として、今よりも楽しく過ごしやすい学校にしていきたい、と抱負を語った。ふたば未来学園高校は本年4月、中学校も開校し、生徒と地域の人たちとの交流を図ることができる新たな校舎へ移転する予定で、対策本部一行は、建設中の新校舎の模様を視察した。

■福島県漁業協同組合連合会訪問

 対策本部一行は最後に、いわき市の福島県漁業協同組合連合会を訪問した。

 東京電力福島第1原発に地下水が流入することで汚染水が発生し、それを浄化して敷地内のタンクに保管しているが、放射線の一種であるトリチウムは取り除けない。タンク建設に向く用地は限界に近付きつつあり、国の検討会議では、処理方法をめぐり、トリチウムを含んだ水を希釈して海に流す方法などを検討している。福島県の沿岸漁業は2012年6月から、規模を限定し操業と販売を試験的に実施する試験操業を始め、県によるモニタリング、水揚げ日ごとに各市場で自主検査を厳格に行いつつ、段階的に拡大してきた。当初は福島県内のみだった出荷先も、現在では39都道府県へ拡大してきているが、いまなお風評被害が残っている。福島漁連の野崎会長は、東京電力福島第一原発の安全な廃炉は重要な課題と認識して協力してきているが、今度のトリチウム水の課題については我々だけが判断する事案でなく、国民的議論を行って、その合意の下で進めてもらいたい。国にも協力をいただいているが、課題の解決に向けて与野党ともに模索してもらいたい、と要望した。玉木代表は、皆さんの声をしっかり聞いて、丁寧な合意形成を図りつつ、国民的議論を行いながら進めていくことが大事なので、ここでの意見を国会へ反映させていきたい、と応じた。

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福島県漁業協同組合連合会を訪問

■玉木代表、記者ぶらさがり

 一連の視察を終えて記者の取材に応じた玉木代表は、3.11を控えて、過酷だった東京電力福島第1原発事故を風化させてはならないとの思いを強く持った。原発の廃炉は30~40年もかかることであり、国をあげて取り組んでいかなければならない。トリチウム水の処理に関しては、関係者の理解なく処分することはあってはならず、しっかりと国民的な議論を行うことが必要だ、と述べた。

 今回の視察には、国民民主党は玉木代表、増子本部長のほか、泉健太政務調査会長、小熊慎司対策本部長代理、吉良州司衆議院議員、近藤和也衆議院議員、森田俊和衆議院議員が参加した。