衆院厚生労働委員会で24日、児童虐待の防止策を強化するための政府案と野党案の両案が審議され、政府案に野党案の一部を取り入れた与野党共同修正を行うことが全会一致で可決された。採決に先立って国民民主党の玉木雄一郎代表、泉健太政務調査会長、岡本充功議員らが質問に立ち、安倍総理大臣らにただした。大西健介議員は修正案に賛成の立場から討論し、稲富修二議員が法案可決後に付帯決議の趣旨説明を行った。
与党の予算委審議拒否
「総理、お久しぶりです。それもそのはずで、3月に予算委員会が開かれてから80日以上、予算委員会が衆議院で開かれておりません」。冒頭、玉木代表は衆参の野党からのさまざまな働きかけにもかかわらず、与党側が予算委の開催に応じていない点を指摘。
その上で、「タイムリーに内外のさまざまな問題を議論することによって、世論を喚起し、立法府だけでなく行政がその問題を共有し問題の解決につながっていく――そのことが議論の重要性であり、国会の重要な意義だ」と予算委開催に消極な政府の姿勢に強く疑問を投げかけた。
児童虐待防止法案
玉木代表は、昨年3月に東京の目黒区で、そして今年の1月には千葉県の野田市で、地方の児童相談所から転居先の児相へケースの引継ぎがあった2つの事例で、児童の虐待死が相次いだことを取り上げた。
昨年3月の船戸結愛(ゆあ)ちゃんの虐待死事件のあと、野党各党がヒアリングのために6月8日に現地の児相などを訪問した後、6月26日には野党で対案(議員立法)を作って国会提出したが、ずっと棚ざらしにされ、議論さえしてもらえなかった、と述べた。
またさまざまな制度の狭間に落ちてなかなか対応できない案件があることや、1人で100人以上のケースを抱えてメンタル面で病んでしまう児童福祉司の存在などについて触れた上で「こういった体制そのものを変えていくのが政治の責任だ」「子どもの命を守れない社会に未来はない」と訴えた。
2004年には、児童福祉法が任意規定として、中核市に児相設置を推奨するようになったが、今現在、設置されてるのは「58のうちの3市のみだ」と指摘。「多くの市が設置できない理由は、やはり予算と人員。でもこれは総理がまさに、国がリーダーシップを発揮して、しっかりと予算も人もつけるんだと。必要な対応するんだ、ということをはっきりと示せば、総理の判断で、子どもたちの命を救うことができる」と訴えた。
安倍総理は「本法案では一律の(設置)義務化等はしていないが、今後、地方団体と十分協議しつつ、設置を満たすための支援を抜本的に拡充し、設置促進に取り組んでいく」と答弁した。
これに対し、玉木代表は「しっかり対応することが私は国家の責務だと考える。是非、私達が野党案の中にしっかりと書き込んだことを、政府も受け止めて対応していただきたい」と応じた。
消費税率の引き上げ
「やはり国内で多くの国民の皆さんが今、心配してるのは、今後の景気の行方だ」として、玉木代表は、消費税率の引き上げについても質した。玉木代表は「政府が出す(統計上の)数字も極めて不安定なものになってきている」と述べ、(1)今後、さらに日本経済が悪化するということがあれば、再び税率を引き上げることを延期することがあるのか(2)仮にそうなった場合は、あらためて国民に信を問うということか、とただした。これに対して安倍総理は、「これまでも申し上げている通り、リーマンショック級の出来事が起こらない限り、今年10月に10%に引き上げる予定に変わりはない」と従来からの答弁を繰り返した上で、国民に信を問う事に関しては「それは必ずしも国民の信を問うことには(ならないかもしれない)」「その時の状況等に依るので一概にはお答えできない」と、正面からは答えなかった。
質疑を終えて記者団の取材に応じた玉木代表は、野党案が提案している児童の転居に係る対応の強化に関して「かなり国民民主党案、野党案の意見を入れてくれた」と与野党共同修正案を評価。一方、野党案にある中核市及び特別区への児童相談所の必置に関しては「予算がない、人員がたりないと拒否をされたが、そのことによって救われない命がでてくるのではないか。やはり政権の熱意がまだまだ不十分だ」と指摘した。