国民民主党をはじめ109人の野党議員で活動するタクシー政策議連の増子輝彦会長は7日、同議連を代表し政府への申し入れを行った。深刻な労働者不足に見舞われる中での労働環境の改善、先送りされている運賃改定の実施等を求める決議を菅義偉官房長官に手渡した。
決議は、深刻な労働者不足の中で、人材確保のためにも労働環境を改善し、長時間労働の縮減等の働き方改革の実現を図ることがタクシー事業者にとっての喫緊の課題となっていると指摘。その上で、全国48の運賃ブロックに係る地域で、かねてから本年10月1日の消費税引き上げと同時に運賃改定を実施すべく、地方運輸局と協議・調整の上、消費者団体、地方自治体に丁寧に説明をしながら手続きを進めてきたが、8月30日の運賃公示日当日、急きょ全国一律で消費税率引き上げの転嫁分のみの改定とされたと説明。このことは、タクシー業界にとり「まさに青天の霹靂(へきれき)であり、到底納得できるものではない。行政不信はこれまでになく高まっている」と政府に対する不信感を露わにしている。
そして(消費税引き上げ分以外の)通常の運賃改定申請の内容は、あくまでも働き方改革への対応や、最低賃金アップへの対応、初乗り短縮運賃の導入やスマホ配車アプリ・キャッシュレス決済用端末機・UD(ユニバーサルデザイン)タクシーの導入等、インバウンド対応も含めた労働者の労働環境と利用者利便の向上を目的としており、「(タクシー事業者にとり)必要不可欠なもの」だとしている。
このため決議は、政府が確実かつ着実に実行すべき事項として(1)全国48の地域で申請がなされている通常の運賃改定について、認可権者たる地方運輸局長の判断により可及的速やかに実施すること(2)タクシーメーターの改定コスト等、今般の措置による影響を考慮した支援はもとより、働き方改革の推進、インバウンド対応の推進等タクシー事業の進化のためのタクシー事業者に対する支援の実施(3)二種免許を持たない運転手が運転可能で自家用車を用いる「ライドシェア」について、利用者保護(利用者の安心や安全性の確保を担保できない等)の観点や、適正な競争環境確保の観点等から問題が多いため、その導入を見合わせること――の3点を挙げている。
官房長官への申し入れ後、増子会長は「タクシー業界の運賃引き上げ問題について積み重ねてきた協議を突然ないがしろにされた。大変不明朗な形での決定に強く抗議する」と述べ、さらに「高齢化社会の中でのタクシーの必要性と価値は極めて高く、昨今の災害でもタクシー事業者は大変重要な役割を果たした。今回の運賃引き上げについてストップがかかった理由が本当に不明瞭であり、不可解。この問題を検証しつつ、官房長官に一日も早い運賃の引き上げ等について野党タクシー政策議連として申し入れた。自民党、公明党の議連も同じように申し入れており、与野党問わず一致してこのタクシー料金引き上げ、合わせてライドシェア解禁を許さないということで共同歩調をとっている」と語った。