衆院本会議で29日、政府提出の漁業法改正案の採決が行われ、与党の賛成多数で可決した。採決に先立ち国民民主党・無所属クラブを代表して近藤和也議員が反対の立場から討論を行った。
漁業法は戦後間もない1949年に制定され、今回の改正は、62年に漁業権の定義に関する規定の見直しが行われて以来の、日本の漁業政策の大きな見直しを行うもの。漁獲割当ての実施等による水産資源の保存及び管理のための制度の創設、漁業の許可及び免許に係る要件等に関する規定の整備、沿岸漁場における水産動植物の生育環境を保全及び改善するための制度の創設、漁業協同組合等の事業の執行体制の強化――等を主な改正項目とする。
近藤議員は冒頭、「この法案に『浜の香り』がするか」と本会議場の出席議員に呼びかけた。「私のまわりで漁業をされている方から、この法律を早く通してくれという声は聞こえてこなかった。分からない、知らないがほとんどだ」との実態を示した。新しい時代へ向けた水産業を構築していこうとするならば、漁業関係者、行政の双方が共通の資源である水産環境のあり方について十分協議しつつ調和ある発展に導く環境づくりが求められると指摘。「しかしながらこの改正案は作り上げるまでのプロセスも、法案の内容そのものも、率直に言って『浜の香り』が全くしない」と断じた。
本法案の第1の反対理由として、「漁業権の見直し」内容が粗雑であり、結果として沿岸漁業従事者らに大きな混乱をもたらす懸念があると指摘。漁業権について国が法律ではなく政省令で何らかの指針を示すとしていることについて「(漁業権は)沿岸漁業従事者が事業を行うための核心的部分だ」「実際に漁業権を付与する立場にある知事は、都合よく『適切かつ有効』の意味を解釈でき、半ば『白紙委任』をするようなものだ」と問題視した。
第2の反対理由として、漁業権の見直しに対する問題に加えて、拙速な審議のために法案に対するさまざまな懸念や課題が払しょくできていないことを挙げた。「漁獲可能量(TAC)と個別割当(IQ)譲渡権(ITQ)の課題、遠洋・沖合漁業のトン数制限の見直しによる漁業の変化への検証など、議論に付すべき論点が山積している。これを丁寧にこなすことを通じて、いま従事する漁業関係者や水産資源加工業者の方々の十分な理解を得ることが必要だ」と提案した。
最後に、石巻市を視察した際に漁業者が今回の漁業法改正について「何がどう変わるんだかよく分からないけれども、とにかく漁業者が食べていけるようにして欲しい」と訴えていたことを紹介し、「この法律改正によって、現場の声が混乱とともにかき消され、いま以上に沿岸漁業が衰退するのではないかと私は危惧(きぐ)する」と述べ反対討論を終えた。