衆院本会議で3日、オンラインショッピングモールやアプリストア等に係る「特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律案」及び5G、ドローン等に係る「特定高度情報処理通信技術活用システムの開発供給及び導入の促進に関する法律案」に関する趣旨説明と質疑が行われ、国民民主党の浅野哲議員が共同会派「立憲民主・国民・社保・無所属フォーラム」を代表して経済産業大臣らに質問した。
新型コロナウイルスへの対応
冒頭、新型コロナウイルス感染の緊急事態宣言は可能限り予見可能性を高め、個人や企業が準備できるようにすべきだと指摘し、緊急事態宣言の基準を示すよう求めた。それに対し、西村康稔経済再生担当大臣は、「緊急事態宣言発令の要件である全国的かつ急速なまん延にする状況はいたっておらず、ギリギリのところで持ちこたえている」とし、感染拡大防止への協力を呼び掛けたが緊急事態宣言の基準についての説明はなかった。
また、日本での新型コロナウイルスの検査実施数が諸外国に比べて非常に少なく、その理由の1つとして感染症病床のひっ迫があげられているとし、重傷者と軽症者のトリアージの推進、病床確保のための財政支援を加藤厚労大臣に求めた。さらに、政府による全世帯への布製マスク2枚の配布は、国民の安心感につながるほどの効果がないと指摘し、梶山弘志経産大臣に国内でのマスク生産設備導入、不織布やガーゼ以外の素材を使ったマスク生産への支援を求めた。
関西電力金品受領問題に係る経済産業省の公文書改ざん
関西電力の金品受領問題で3月16日に業務改善命令を出した際、経産省は法律上必要な「電力・ガス取引監視等委員会」への事前の意見聴取を行わず、事後にその事実に気付いて、急遽聞き取りを行ったが、そのミスを隠すため、この聞き取りを命令発出前日の15日に行ったように見せかけるために公文書上の日付を意図的に変更していたことについて、「強い憤りを禁じ得ない。森友問題や統計不正問題などの公文書改ざんが繰り返され、公文書管理法改正をしてまで対策をしてきたにも関わらず、このような不正行為が再び行われたことは国民への背信行為に他ならない」と批判した。本件について管理職が戒告や厳重注意の処分とは軽すぎると指摘し、経産大臣に「今後の公文書管理の適正化を省内に徹底させること、二度とこの様なことを起こさないことをこの場で明確に表明していただきたい」と迫り、大臣は経済産業行政への信頼を損なったと謝罪し、再発防止に努めると答弁した。
特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律案
本法案は、オンラインショッピングモールやアプリストアなどの、いわゆる「デジタルプラットフォーム」に関する取引の透明性、及び公正性の向上、プラットフォームの提供者と利用者の相互理解の促進等を目的としている。
浅野議員は、法案の基本理念として、事業者の創意と工夫が十分に発揮されるために国の関与その他の規制を必要最小限のものにすることがあげられているが、逆に言えば国の関与が強いほど創意と工夫が発揮しにくくなるのではないかと指摘した。その上で、特に取引の透明性及び公正性を高める必要性の高い「特定デジタルプラットフォーム事業者」の選定にあたっての公平性がどのように担保されているのか」ただした。
また、プラットフォームビジネスの競争は激しく、市場変化のスピードが速いことから、国内市場に存在する多様なデジタルプラットフォームの取引規模や社会に対する影響の大きさ、取引現場における規制の必要性などを適切な頻度・タイミングで確認する実態調査を実施し、特定デジタルプラットフォーム提供者を公平かつ公正に見直していくことを政府に求めた。
特定高度情報通信技術活用システムの開発供給および導入の促進に関する法律案
本法案は5G、ドローン等のサイセキュリティー等を確保しつつ、適切な開発供給及び導入の促進を推進することを目的としている。浅野議員は「世の中を見渡すと、アメリカと韓国は1年前から、中国も半年前から5Gの商業運用をスタートさせており、遅れをとっていた日本も本年3月下旬から運用をスタートさた。この状況下での国会審議開始とは、誰の目から見ても遅すぎる。世の中の流れ、産業潮流を捉えられていない。数年前に法整備を行っていれば事業者の皆さんはもっと有意義な準備ができた」と政府の対応の遅れを批判した。
経産大臣は、中国やアメリカが環境整備で先行している事実を認めた上で、開発供給事業者への支援をしていくことで巻き返せるとの見解を示した。
また、浅野議員は5Gやドローンに関する技術やそれらを活用したシステムの開発も進めていく必要があるとし、「新しい技術分野であればあるほど、使うための環境整備と同様に、新しい技術開発やサービス開発への投資が重要になる。本法案では『供給及び導入』に対する支援は含まれるが、『開発』に対する支援は手薄」と指摘し、技術やサービスの開発に対する追加支援を求めた。