参院で8日、政府提出の「卸売市場法及び食品流通構造改善促進法の一部を改正する法律案」の本会議質疑が行われ、国民民主党・無所属クラブの田名部匡代議員が質問に立った。
「卸売市場法」の改正案は、中央・地方の卸売市場の開設を従来の認可制から認定制にし、民間事業者の参入も認めるというのが主な内容。その結果、現行卸売市場法では細かく規定されている各種取引ルールが新制度ではすべて各卸売市場が自由に設定できることになる(※)。 また卸売市場の取り扱い品目が食品と花きであれば制限がなくなり、例えば現行制度では扱えない米も扱えることになる(医薬品目的など特殊なものについては制約が課せられる)。
田名部議員は、本法案が農業競争力強化プログラムに基づく農業改革の積み残しを実現するためのものであり、元々は、現在さまざまな問題が指摘されている規制改革推進会議の提案であると指摘。この一連の改革を実施・推進するための「農業競争力強化支援法」は昨年の常会で成立しているが、その当時の審議の冒頭で田名部議員は「現場の声を全く無視した政策が次々と提言されている、現場を無視した、誰のためか分からない法律は、これ以上つくるべきではない」と訴えていた。
その上で、以下のような法案の問題点を指摘した。
(1)卸売市場に関する規制改革推進会議の提言には、「受託拒否の禁止を一律に適用することはやめるべき。これがあると品質の劣るものを安易に出荷するという生産者の不適切な活動を助長しかねない」との趣旨の記述がある。しかし、卸売業者が正当な理由がない限り、出荷者からの申し込みを拒否できないという受託拒否禁止のルールは、自然相手の農林水産業の特性を踏まえたものであり、提言は第1次産業に対する理解のなさや、生産者を一方的に見下す姿勢を露呈している。
(2)これまでの卸売市場では、取引する数量の大小などで出荷を不当に差別する「差別的取扱い」が禁止されてきた。これにより、小規模な生産者や小売にとっても、いつでも利用可能なオープンシステムとなっていた。ところが、規制改革推進会議農業ワーキンググループがとりまとめた提言書では、卸売市場を通さない直接販売の推進を強調している。直接販売は、複数の販売先に出荷する場合、小ロットの作物ごとに流通経費がかかることになる為、結果的にコスト増となるおそれもある。それに加えて、直接販売にアクセスできる生産者も消費者も限定されているという、デメリットも存在している。政府の一連の改革は卸売市場の持つオープン性を著しく軽視している。
(3)今回の改正により、卸売市場の開設は原則「禁止」の許認可制から、原則「自由」の認定制へと大転換する。しかし、これまでの卸売市場は、自治体が開設者であるからこそ、公平公正な運営が担保され、卸や仲卸の市場使用料が低く抑えられてきた。今後、市場開設者が民間事業者に替わることで、これらの使用料が上がり、生鮮品の価格や委託手数料の上昇にもつながるのではないか、との不安が広がっている。
最後に、そもそも規制改革推進会議の議論から始まる農政改革は、全く現場を知らない無責任な議論で、結果責任は負わないことを指摘した上で、「丸投げの無責任な政策決定にはうんざりだ。官邸主導の農政は現場を分かっていないと感じている与党議員の皆さんも少なくないはず。与党の皆さんしっかりしてほしい」と訴えて演説を締めくくった。
※それらの取引ルールには、例えば第三者販売(卸売業者がその市場の仲卸業者や、売買参加者以外へ販売をすることで、現在は原則的に禁止)や、商物分離(例えば、卸売業が在庫を持たず、顧客からの注文があると、直接メーカーから配送してもらう直送卸売など)、直荷引(仲卸業者が、その許可にかかる取扱物品の部類に属する生鮮食料品等を、その中央卸売市場の卸売業者以外のものから買い入れて販売すること)といったものが含まれる。