田村まみ議員

 参院本会議で5日、地域共生社会の実現のための社会福祉法等の一部を改正する法律案について討論が行われ、国民民主党の田村まみ議員は反対の立場から質疑に立った。冒頭、新型コロナウイルス感染症への対応を検討する政府の専門家会議の議事録が残されていないことについて、安倍総理に、国民の知る権利を守り、政府対応を事後的に検証するためにも、後世の貴重な遺産となる専門家会議の議論を、議事録のかたちで残すことを強く求めた。

 反対する大きな理由の1つとして、介護福祉士養成施設卒業者の国家試験の義務付けに係る経過措置の延長をし、介護職の社会的地位向上を妨げるものだと主張した。今回の改正で、国家試験に合格しなければ介護福祉士になれない福祉系高校卒業者の不公平感は高まり、介護福祉士の社会的評価が今以上に損なわれるとし、介護人材の不足に拍車をかけているのは厚生労働省ではないかと懸念を表明した。

 次に、介護人材の確保に関する改正も極めて不十分だと指摘した。「今、本当に必要なのは、新型コロナウイルス感染症の感染リスクと隣り合わせで働く介護現場の職員の献身的な御尽力に報いるような、賃金アップに直接つながる具体的な処遇改善策を規定した法案だ」と述べ、国民民主党等が衆院に提出した処遇改善のための助成金を支給する法案への理解を促した。

 また、介護の現場におけるハラスメント対策も極めて不十分だとし、UAゼンセン介護クラフトユニオンが2018年に行った介護従事者へのアンケートでは、ハラスメントを受けたことがあると答えた割合は、74.2%(1790名)に上ったと懸念を表明した。

 認知症施策について、「4月に公表された調査研究報告書では、認知症の本人に、認知症施策に関する意見を聞いていない自治体が半数に上っており、政府が目指す方向が、市町村と十分に共有されていないことが浮き彫りになった」と述べ、現場を見ていない政府の姿勢を問題視した。

 「地域共生社会の実現」に向けて新設される「重層的支援体制整備事業」について、介護、障害、子ども及び困窮に関わる地域課題を既存の支援取組を活用しつつ、包括的な支援体制を構築する考えは否定しないが、事業内容、人材、処遇、事業予算の確保と配分方法、事業実施の際の事務委託先など、質疑では明らかにならなかったと、審議時間の確保が必要だと疑問を呈した。

 1人ひとりの多様性を認め合い、人のつながりや支え合うことを基軸に誰もが参画し、持続可能な社会の実現が必要不可欠だが、「本法案の施策・法律改正は国民へ明確に説明できる状態になっていない」と結んだ。

 法案は与党等の賛成多数により可決され、成立した。