玉木雄一郎共同代表は6月30日、茨城・水戸市内で開かれた党県連設立報告会に出席してあいさつするとともに、「国民民主党の今後(4つの時代を生き抜く)」と題する基調講演を行った。前段のあいさつでは、国民民主党の結党の理念とその目指す社会像を、後段の講演会では、日本が直面する長期的な課題と、これを克服するための具体的な処方箋についての考えを披露した。

「働き方改革」関連法案の参院採決について

 基調講演の冒頭で玉木共同代表は、「働き方改革」関連法案の参院での採決で国民民主党がとった行動の理由や背景について説明。(1)厚労大臣の問責決議案は参院ですでに他党と共同提出していた(2)衆院では厚労委員長による強引な委員会運営が目立ったのに対し、参院では委員長による職権立て(与野党の合意なく、委員長の職権で委員会の日程を立ててしまうこと)も1回もなく、衆院ではなかった地方公聴会も開かれた(3)党が反対してきた高度プロフェッショナル制度の1年ごとの合意更新を含む47項目に及ぶ付帯決議をどうしても付けたかった(4)もし仮に付帯決議を付けるとするならば、解任決議案を提出して解任を求めている委員長の下でその協議を行うことは困難となっていた(5)委員長解任決議を提出した場合、対立構造を演出することはできても、法案の成立をせいぜい1日2日先延ばしする程度の効果しかなく、法案の中身は与党の言いなりのまま通ってしまった(6)与党との合意の上で付帯決議が付けられれば、後に法律の施行の際にチェック機能が働く――などと説明した。

 付帯決議のかなりの部分については、立憲民主党の議員からの提案も含まれていたことなども明らかにした。そして「結果を出すことが大事ということであれば、問題の多い、立法事実もない法案をそのまま通すよりは、一つでも多く付帯決議を取ろうとしたのが、今回の参院の国民民主の振る舞いだった」と総括した。

県連設立報告会あいさつ

国民民主党が目指す理念について

 旧民主党が野党となってすでに6年経とうとしているが、もう一度政権を担う、その核となる政党を作ろうとして結党したのが国民民主党だと結党の目的を説明した上で、党の理念について「私たちの理念、それは『暮らしはリベラル、そして対外政策は現実的に行っていく』この組み合わせだと思う」と述べた。

 内政の理念については、「働く個人が報われる社会を目指す」と説明。共働き世帯が増えたのに、世帯の所得が20年間で約122万円も減少しており、人々の所得がどんどん減っていっている。それにも関わらず、「いわゆる国の再分配機能が必ずしも十分に機能していないというのが現状だ」と分析した。「これをきちんと機能させ、働く個人が報われるようにしていく。トップ1%や5%の人たちだけでなく、普通に働く人たちが、しっかりと幸せを手にすることができる社会を目指していく」と、所得再分配の強化に軸足を置いていくことを表明した。

 外交安保政策については、「北朝鮮の問題や、中国の海洋進出など、安全保障のさまざまな現実は厳しいものになっている」と日本を取り巻く国際環境を指摘。「こういうものには、私たちは現実的に取り組みたい」とする一方で、「アメリカに言われたからといって、私たちは地球の裏側にまで行って武力を行使する、こんなことは絶対やってはいけない」と、与党などとスタンスの違いを説明。「メリハリをしっかりつけた外交安全保障政策を推進するのも私たち国民民主党だ」とした。

政権獲得への道のりについて

 また政権獲得への道のりについては、「安倍政権にはしっかりと対峙(たいじ)していく。私自身、1年以上にわたり森友・加計問題に取り組んできた。これからも、政権のおかしなところは厳しく追及していく」と政権追及の重要性を認める一方で、「しかしそれだけではだめだ。今はとにかく安倍政権がおかしいと思っても、代わりに政権を託せる政党、乗っかれる政策がないことが、今の日本の政治の最大の問題だと思っている」と日本の野党が直面する課題も指摘した。

 そして出身地の香川県にうどん屋さんが多いことを引き合いに出し、「競合が多く、流行り廃りも激しい。しかしお客さんが入っているお店には共通の特徴がある。それは簡単で、『他店にはない、美味しいうどんを出している』ということ。『あそこのお店のうどんは不味い不味い』とケチをつけるだけでは、お店に入ってくれない。やはり人に入ってもらおうとしたら、他店にはない、より美味しいうどんを出すしかない」と、やはり政党も、独自の魅力的な政策を取りそろえることの重要性を強調した。

 「より住みよい社会を作るための、私たちなりの解決策を示していくこと。このことを出来ずして、政権を担える政党にはならないと思っている。『対決も大事だが、解決もしっかり示していく。これが私たち国民民主党だ』と堂々と私は言いたい。この点を、党員・サポーターの皆さんとぜひ共有したい」「そういった意味で、しっかりとした政策を練り上げて、内政・外交にわたる堂々たる政策を練り上げて、しっかりと全国に訴えていきたい。これからの社会像、それを支える政策をしっかりと、青山大人さんや浅野哲さん、藤田幸久さんなどの仲間と一緒に魅力的なよい政策を出していきたい」と訴えた。

 将来の政権獲得については、「地道に訴えて訴えながら支持を獲得して、政権をとるしかない。それは果てしなく長い道のりかもしれないが、私はできると思う」と語った。

地方組織・議員を大切にする政党に

 最後に、国民民主党が地方組織・議員を大切にする政党である点について触れ、「希望の党には、地方組織というものが全くなかった。自治体議員も1人もいなかった。つくづく感じたことは、地方組織や自治体議員、地方の仲間がいかに政党にとって大切な存在か、ということだ」と語った。そして「国民民主党は、地方組織や自治体議員を大切にする。自治体議員との絆を大切にする政党として、私は頑張っていきたいと思うし、そのことを本当に政党の中心に置くような考えをもって、これから党勢拡大をしていきたいと思う」と、国民民主党が地方重視の政党であることを強調した。

 そして「年末の茨城県議選をはじめ、各地の自治体議員選挙。そして来たるべき来年の参院選挙、衆院選挙。各地の選挙を皆さんと力を合わせて勝ち抜き、今申し上げたような新しい政治の野党のあり方を全国に浸透させる。そして近い将来、政権の核となれるように頑張っていきたいと思うので、どうか皆さん、力を貸して下さい。そして私たちの力でもう一度、新しい政権を作り上げていきたいと思うので、ともに頑張っていきましょう。ありがとうございました」と、あいさつを締めくくった。

基調講演

 基調講演では、国民民主党の直面する政策課題について、まず国民民主党の目指す理念が(1)時間的な共生(2)社会的な共生(3)地球的な共生――の3つの共生を根本理念にしていると述べた。そして長期的な政策課題として、これからの日本が「人生100年時代」「AI時代」「人口減少時代」「アジアの時代」――の4つの時代を生き抜いていかなければならないとことを示し、それに対応するために(1)技術革新で人口減少克服(2)日本版ベーシックインカム(3)自立分散で地方を豊かに――という政策の3本柱を提案した。

 また最後に、公文書改ざん防止法案や児童虐待防止法改正案を国民民主党の主導で取りまとめ、他の野党と共同で国会に提出したこともあわせて報告し、国民民主党が他党に先んじて問題に対する解決策を提示していく政党であることをあらためて強調した。

 講演のポイントは次の通り。

人生100年時代

 今や人々が仕事を引退してから人生を終えるまで、40年間近くある時代。そんな時代に一番問題となるのが老後のお金。年金の給付額も、寿命が延びれば延びるほど減少していってしまう。長生きリスクへの不安から、人々は、過剰な貯蓄に走るようになる。過剰貯蓄、過少消費の高齢化社会では、いくら政府が経済対策を打ち出しても、消費も伸びない。日本における最大の経済対策は、年を取る不安を取り除くこと。これをやらない限り、どんな経済対策を打っても効果がないだろう。

日本版ベーシックインカム

  老いも若きも人生100年時代、生活費には困らない所得の保障を、どのようにやっていくのかが重要。皆さんが働いて収入を得るのがもちろん原則だが、なかなか家計収入だけに頼るのが難しくなってきているのも現実だ。家計所得の中央値は、この20年間で30%、約120万円くらい減っている。所得保障の形として提案するのは3つ。子どもを持つ世帯への所得保障、高齢者向けベーシック・インカム(7万円の最低保障年金と個人の医療・介護負担に上限を設定)、農業者向けベーシック・インカム(戸別所得補償制度)

人口減少社会

 恒常的な人手不足の時代。お客さんがいて需要があってもモノがつくれない。人口が減ってくると、空き家が増え、耕作放棄地や鳥獣対策が全ての地方で問題に。人口が減っても、幸せと豊かさは減らない社会をつくっていく必要がある。

AI時代

 教育のあり方についても真剣な見直しが必要だ。AIだ人工知能だ、というが、これらをやる技術者が全然足りない。97年に米国の大学院を卒業した時分には、日本から米国への留学生は、2万数千人いたのが、今は2万人を割り込んでいる。逆に中国人の留学生は、あのころ1万人強だったのが、今や36万人。そのうち4割は理系人材(STEM系=科学・技術・工学・数学)。私たちの子どもの時代には、テクノロジーとイノベーションなくしては生きていけない。

アジアの時代

 今から10年後、インドが日本のGDPを抜き、中国が米国のGDPを抜くと言われている。GDPの規模では、上位4カ国のうち3カ国はアジアの国ということになる。アジアの繁栄をいかに日本に取り込むのか、真剣に議論していかないといけない。