参院本会議で20日夜、特定複合観光施設区域整備法案(IR法案)の採決が行われ、与党の賛成多数で可決した。採決に先立ち国民民主党・新緑風会の田名部匡代議員が反対の立場で討論を行った。
田名部議員は「誰よりも全力で命を守り、全力で被災者の支えとなり、復旧への対応をしなければならないはずの国会では、賭博推進のカジノ法案の成立に躍起になり、その間、災害対応に集中すべき石井国交大臣はずっと委員会に出席。石井大臣は『災害対応は万全の体制で行っている』と答弁していたが、瞬時の判断や対応が求められる中で、陣頭指揮をとる国土交通大臣がカジノ法案の審議に出ていることを万全の体制と言えることを、私は全く理解できない」と指摘した。「こうしたなかでカジノ法案を審議していることを被災地ではどう感じておられたか。これは総理や他の閣僚にも言える」として、被害の拡大が予測される危機迫る状況で、総理や防衛大臣、多くの議員が宴会を継続していた自民党の姿勢を問題視。「衆院で内閣不信任案が残念ながら否決されてしまったが、命の重さ尊さを受け止めれば、誰に言われるでもなく、安倍内閣は自ら責任を取るべきだ」と不信任に値すると語った。
そのうえで法案の問題点について、(1)多くの国民は、旧刑法時代から禁止され続けてきた賭博を合法化し、民間事業者に開放することに不安・不信感を持っていること(2)IRのプラスの経済効果の試算も政府はシンガポールの実情を紹介するのみで具体的には何も示さず、ギャンブル依存症対策の費用も明らかにされていないこと(3)ギャンブル依存症の問題は、対策が明確でない上、政府が効果があるとする規制の週3日かつ28日間で10日も利用できることは依存症対策になるとは到底思えないこと(4)政府は当初、カジノは海外の富裕層などを対象とする施設と説明してきたが、結局は入場者は日本人が多数になると見込まれていること――等を列挙した。
田名部議員は「さらに問題なのは、本法案には多くの事項が政省令・規則に委任されていること。法案では、カジノの設置や事業運営に関して、さまざまな規制が加えられるが、その詳細のほとんどは政省令やカジノ管理委員会の規則に委ねられており、その数は331項目にも及んでいる」と問題視。「被災地を置きざりにし、法案の内容も問題だらけ、依存症で苦しむ人を増やしかねないこの法案を、本会議で成立させることには、断固反対」だと表明した。
最後には「この法案の審議で、わが党の矢田わか子議員は委員会の理事として、これまでも、与野党を超えて被災者のために行動すべきと訴え続け、与党の強い採決要求に対しても断固反対と主張し現場で与党の説得に努めたが、与党が採決方針を変えることはなかった。依存症被害を少しでも食い止めたいという議員の努力により、最終手段として31項目の付帯決議を要求し、そこであらためて問題点を浮き彫りにし、付帯決議を成立させた。その努力は早速、ギャンブル依存症問題を考える会の代表のブログで取り上げられ、1ミリでも進展させようとした勇気への感謝が記されていた」と述べ、「その思いを受け止め、今後もギャンブル依存症問題に取り組まれている全国の皆さまとともに私たちも取り組んでいく」と表明。「あらためてこんな法案を通すことに断固反対だ」と力を込めて訴え、討論を締めくくった。
参院本会議特定複合観光施設区域整備法案反対討論(予定稿) 田名部匡代議員