記者の質問に答える玉木代表

 玉木雄一郎代表は29日、衆院本会議の代表質問を終えた後、国会内で記者の質問に答え、質問の手応えや答弁の感想などを述べた。以下はその要旨。

 Q:代表質問を終えて、総理の答弁全体を聞いての感想を。
 玉木:こちらは内外の諸問題についてかなり本質的な質問をしたつもりだったが、まともに答えてもらえなかった。一つ気になるのはTAGの質問で「GATT24条の自由貿易地域における協定がFTAにはない」という答弁だ。あんなことを言っていたら国際法局長の首が飛ぶような気がする。答えないか、答えても間違っている答弁もあったので、これから各委員会で今日のやりとりを精査した上で同僚議員にそれぞれ厳しく追及していってもらいたい。

 Q:今回、代表が重視する「提案」だった、北方領土2島返還や平和的改憲論に、総理から何も回答がなかったようだが。
 玉木:何もなかった。2島返還論では、日ソ共同宣言が両国に議会が承認した唯一の合意だというところは歴史的事実と総理も認めた。私も、基本的には「4島の帰属を解決してから平和条約」という立場だが、ご存じのとおり、日ソ共同宣言は平和条約を結んでから2島を引き渡す(内容)。この膠着した状況を打破するためには、あるいは4島返還の起爆剤にするためにも、日ソ共同宣言に基づく2島先行返還がありうるのかもしれない。平和条約を先に結んでも、領土問題を棚上げしないという約束が取れるのなら、そういった選択肢もあると建設的に提案したが、残念ながら総理は「交渉中のことは言えない」ということだった。

 Q:憲法9条に関して自衛権の範囲についてほとんど言っていなかったと思うが。
 玉木:総理が言ったことは結果的にはうそだと思う。何も変わらないということではなく、9条2項を残してさらに書くと言うことだが、「前項の規定にかかわらず必要な自衛の措置をとることを妨げず」ということは、結局2項は関係なく、必要性があれば何でも出来る。自衛隊だけ書いて自衛権の議論が何もないと、私たちもこれまで指摘してきたが、結果として自衛権を書いている。それは無限に広がる自衛権なのだが、これをそのまま認めるのは、さすがに多くの国民の皆さんにも、地球の裏側まで行って、わが国の国益にほとんど関係ないことまでやることを求めている人は少ないと思う。
 今日聴いても分かるように(総理は)感情的だ。自衛隊が違憲でかわいそうだ、と言うと、自民党の(議場の)前のほうに座っている人が、感情にあおられて拍手する。(それを見て)ああ、これは(国民投票での)CM広告規制がいるなと思った。冷静ではない憲法議論が行われてしまうことをこれからいかに防止していくかが大事だ。今後党内で具体的な条文イメージは検討していくが、やはり安倍政権が出したものに単にだめだとだけ言っているだけでは、「議論もしないひどい人たちに任せられないからこれを通しましょう」という感情論に火をつけることになってしまう。冷静に憲法論、法律論として、安倍改憲案のおかしさを浮き上がらせていくことが大事だ。そのひとつの検討項目として、『平和的改憲論』を提案させていただいた。これから党内でも議論を深めていきたいし、それと比べることでいかに安倍改憲案が改悪であることがわかると思う。

 Q:野党からは枝野代表が質問に立って、対照的なスタイルだと見えた。玉木さんは提案が非常に細かくて、枝野さんは厳しい批判がトーンだと思ったが、枝野さんの質疑についてどう感じたか。
 玉木:枝野さんのことを論評する立場にはない。ただ、私は提案もしたが、相当怒って追及もした。追及項目も負けず劣らず多かったと思う。「許すまじ!」という感じで、壇上でやっているうちにこちらもだんだん腹が立ってきた。安倍政権のおかしなところはやっつけないといけない。冒頭申し上げたように、国民民主党はおかしなところは他の野党と一緒に徹底追及する。あわせて、日本の進むべきこれからの新しい道を示すことが私たちのもう一つのキャラクターだ。この二つを合わせて、自民党を凌駕するような議論をやっていきたい。引き続き、力を込めて魂を込めてやっていきたいと思う。

 Q:本会議に先だって、議院運営委員会(議運)が高市ペーパー(国会改革私案)をめぐって紛糾し、初日にもかかわらず本会議開会が遅れる事態になった。
 玉木:高市議運委員長が先の国会で示された大島議長談話を全く理解していないことがよくわかった。行政と立法府の関係において、立法府が重視すべきこと、立法府の権限として守らなければいけないことを守るのが議長やそれを支える議運の役割。なのに、閣法の成立を優先し、残った時間で議員立法と一般質疑をやろうだなんて、議運委員長が絶対に言ってはいけない言葉だ。そういうことを議運委員長のクレジット(署名)で出しているなんて、大島議長が談話で出した議会制民主主義の前提が崩れることを全く理解していない。自らそれを崩そうとしている議運委員長が就任したという印象だ。

 Q:総理は憲法についてあまり答えなかったということだが、総理は自身で質問を投げかけておきながら、そのような態度を取ることについてどう思うか。
 玉木:態度悪いね。私は、憲法の議論というのは、議論する人の認識や良識や知性、最高法規を変えようという者のたしなみや見識が必要だと思う。人権やこれまでの長い歴史の中、立憲主義や憲法が権力と向き合ってどう出来てきたのかを分かった、権力に謙虚に向き合う者しか、憲法改正に手をつけてはならないと思う。安倍総理には全くそれがない。国家の理想を語る、そういう面が憲法にあることは否定しないが、ただ理想を語るだけが憲法ではなく、権力者を縛っていくものだ。まず行政府のトップとして、憲法遵守義務に自らが縛られている意識が全くない安倍総理の憲法観には極めて違和感を覚えるし、あの改憲案をあのまま通しては絶対にだめだという思いを今日も新たにした。その意味では、私たち自身も議論を深めて、安倍改憲案がそのまま通らないように作戦、戦略を立てていきたい。

 Q:国民投票でのCM規制は、総理は現在の法律が議員立法で成立した経緯に触れ、あり方については国会で議論いただくことだとして、ほぼ答弁の中身はなかったが。
 玉木:確かに議員立法で成立しているが、あの時は民放連(日本民間放送連盟)の自主規制が入ることが前提だった。長い年月が経って結局民放連は何もしないので、であれば公平公正な国民投票を実現させるために法規制が必要だと思う。わが党として規制案をまとめたので、その案も憲法審査会の中で議論していきたい。ただ、その大前提として、野党の少数派の意見にも丁寧に耳を傾けるという与党側の環境整備が大事だと思うので、まずはそれを見定めたい。

 Q:外国人労働者の受け入れの答弁について疑問が解けるような部分はあったか。
 玉木:一つ思ったのは、医療保険の対象になる外国人がどれだけ増えて、それで保険料収入や国庫負担がどうなるのか、極めて大事な問題だが、このことについて知らないと言うかと思ったら精査しているとのことだった。まずは何人入ってくるのか、定住を見込んでいる人がどのくらいで、社会保険とりわけ医療保険の対象になるのはどのくらいなのか。こういった資料が出てきて初めて国会での審議が出来ると思いますから、総理が言ったようなデータが出てこない限りはまともな議論はできない。まずは今日質問した項目に関係するような資料データを出してもらうことが審議入りの条件だ。あわせて、重要広範議案にすることが審議入りの条件だと思う。

 Q:ガソリンの値段を安くする経済政策のために、トリガー条項の凍結解除を今国会に提出する考えか。
 玉木:早ければ今国会に提出したい。先日(1リットルあたり)160円を超えたが、3カ月連続で超えることが解除の条件なので、できるだけ早く国民、とりわけ地方の皆さんの生活負担を軽減するためにも成立を急ぎたい。税調会長ともよく相談し、今国会中の提出を目指したい。

 Q:安倍総理はトリガー条項解除は適当ではないと答弁したが。
 玉木:冷たいなと思った。やはりガソリン価格の高騰は国民生活に身近なところで大きな影響がある。生活に密着したところの負担軽減の感覚が総理には全くないのかと思った。地方の生活に根ざした経済支援とか対策には関心が薄いのかなという印象だ。

 Q:昨日投開票が行われた新潟市長選で野党共同推薦候補が敗北した結果をどう受け止めるか。
 玉木:地域ごとの事情はあるが、今ひとつ浸透しきれなかった印象だ。敗因はよく分析して、特に国政政党の地方選挙における関わり方をよく分析してみたいと思う。

 Q:先般、日中首脳会談を受けて安倍総理が「3つの原則を確認した」と述べたが、その後外務省がそのような原則では確認していないと否定。最近首脳間のやりとりについて混乱が多い印象があるが、今後の国会で追及するか。
 玉木:今回のTAGもそうだが、国内向けの宣伝と、実際の外交交渉で行われたことに乖離(かいり)があると疑わざるを得ない状況がいくつか出てきている。選挙を意識して、反発を抑えるために、独自の言葉を使っている。あるいは、今回の中国の話は逆に盛って、向こうが言っていないが一般的な言葉でいうと「3原則」がわかりやすいだろうと、官邸の広報がPRをしている可能性があり、それが外務省の現場と実際の会談と乖離している。印象操作というか、メディア操作のようなことを官邸中心にやっているのではと疑われるので、国会で詰めていきたい。

ぶら下がり形式での会見

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