日本理化学工業の川崎工場を視察

 玉木雄一郎代表は16日、日本理化学工業株式会社川崎工場を視察した。1937年創立の同社は、学校で使うチョーク市場の国内シェア50%を誇るトップメーカーで、社員86人のうち64人の知的障害者を雇用している。

 まず、大山隆久社長から障害者を雇い始めた経緯や障害者とともに働くとはどういうことかについて話を聞いた。大山社長は次のように語った。

学校で使うチョークの国内シェア50%の日本理化学工業株式会社

学校で使うチョークの国内シェア50%の日本理化学工業株式会社

 養護学校の先生から卒業する生徒に働く経験をさせてほしいと根気強く要請され、60年に15歳と17歳の少女を受け入れたところ、二人の真面目な仕事ぶりに感心して雇用したのが最初の障害者雇用だった。二人は定年をすぎても嘱託として60代まで勤めた。

 障害者の採用にあたっては、身の回りのことは自分でできる、簡単な意思表示ができる、一生懸命仕事をする、周りの人に迷惑かけないという4つの基準を設けている。会社は雇った以上、定年まで責任をもって雇用し、戦力となってもらう環境をつくるよう努力している。

 障害者とともに働くなかで、障害者はいろいろな能力を持っている人だと気づかされた。集中力、持続力があり、会社にとって貴重な戦力になっている。

大山社長から同社の障害者雇用の歴史や考え方を聞く

大山社長から同社の障害者雇用の歴史や考え方を聞く

 ともに働くなかで、一人ひとりの理解力に合わせて作業の仕方などを伝えるのは難しい。教えたことが通じなかった場合は、相手が理解する能力がないのではなく、教え方が悪かったと受け止めることにしている。長年、障害者を雇用し続けた経験から、必ず伝わると信じて、諦めることなく努力することが大事だと思っている

――と大山社長は話した。

 次に、チョーク製造の作業場を見学した。従業員は棒状に延びたチョークの材料を切断して鉄板に並べたり、規格外のチョークをえり分けたり、ケースに詰める作業を熟練した手つきで黙々と作業を進めていた。

チョークを選別して箱詰めするなどの作業の様子を見学

チョークを選別して箱詰めするなどの作業の様子を見学

 作業場では一人ひとりの理解力に応じて分かりやすい道具を用意している。たとえば、チョークの材料の計量は種類ごとに色を決め、色の容器と同じ重りをはかりに乗せて測ることにより、文字や数字を読めなくても作業できる。

 別の作業場では、多種な製品を指定に合わせて決められた時間内に箱詰めする、より複雑な作業を行っていた。

 見学後の意見交換で社長から、「すべての人に働く場があり、働いて人の役に立つ幸せを感じられる「皆働社会」を目指したい。ベルギーで企業が重度障害者を雇う場合に国が最低賃金分を負担する制度を参考に、日本でも障害者を雇用する企業に国が賃金を助成する制度を導入すべきではないか。障害者が雇用されれば障害者福祉にかかる国の負担が軽減される。中小企業は、一人ひとりの障害者に合わせた柔軟な対応をしやすい。賃金補助があればより多くの企業で受け入れやすくなる」との提案を受けた。

 玉木代表は視察後、記者団に「障害者一人ひとりの能力に合わせて仕事ができる環境を整え、最低賃金以上の給料を支払う経営をしている素晴らしい会社を見せてもらった。障害者雇用のお手本というべき取り組みで、日本全国に広めなければならない」と感想を述べた。また、「本日の視察を厚生労働委員会等での質問や政策立案に生かし、党を挙げて障害者雇用政策に取り組みたい」と決意を示した。

 視察には小宮山泰子総務副会長、小熊慎司役員室長、大西健介国民運動委員長、川合孝典社会保障調査会副会長、三村和也神奈川県第18区総支部長が参加した。