党首討論に臨む玉木雄一郎代表と安倍総理

 19日に開かれた党首討論で玉木雄一郎代表は、安倍総理がいくら「年金制度は100年安心」と述べても、最新の財政検証を見ないと判断できないので速やかに出すべきと迫った。また、3月に発表された財政検証のための新しい経済前提は、5年前の経済前提より悪化しており、100年どころか数十年で積立金が枯渇する可能性もあると警鐘を鳴らした。

 安倍総理が「年金制度の持続性は担保されている」と国会で繰り返し答弁している点について玉木代表は、それが5年前の年金の財政検証に基づくものなのか、本年発表される予定の最新の財政検証に基づくものなのかをただした。総理は「財政検証をしている最中であり、(最新の財政検証の)報告を受けていない」と答えた。

 これを受けて玉木代表は、5年前の財政検証では実質賃金伸び率を最悪のケースで0.7%に設定していたが、3月発表の経済指標では0.4%、さらに安倍政権の過去6年間の実質賃金の平均値がマイナス0.6%で、「最悪のケースにも届いていない」と問題視。また、経済成長の前提となるトータル・ファクター・プロダクティビティ(全要素生産性)が5年前に最悪のケースで0.5ポイントだったものが、3月発表の経済前提で0.32ポイントとなり、これは5年前の財政検証の最悪のケースに近いと指摘。

 これらを踏まえて玉木代表は「その結果、何が起こるかというと、あと17年で早くも所得代替率が50%に達し、さらに財政の均衡を達成しようと思ったら、そこからめり込んでいき、なんと100年どころか36年後に積立金が枯渇する」と警鐘を鳴らした。

安倍政権が受け取らないとした報告書を示す玉木代表

安倍政権が受け取らないとした報告書を示す玉木代表

 今回の金融庁審議会の報告書をめぐって、安倍政権が受け取らないと発言したり、なきものにしようしたりしている隠ぺい体質が「国民の皆さんに不安を与え、将来が不安だからもっと貯めなければいけないと消費が喚起されるどころか萎縮しているではないか」と断じた。

 今総理が行うべきは「仮に不都合であっても真実をしっかり出して、国民にどういう年金の姿になっているのか、将来それぞれどうなるのかということを正直に語る政治を実現することではないか。今のままでは数字も信じられない。その数字を扱っている政府を信じられない。これでは国民の皆さんの将来不安は消えない」と政府・与党の政治姿勢に猛省を促した。

 最後に玉木代表は、「今大事だと思うのは家計をしっかりと重視する経済政策に変えていくことだ。これから米中の貿易戦争も厳しくなるから外需に頼れない経済になっていく。そんな中でしっかりと内需とりわけ消費、家計を下支えする経済政策が今こそ必要だ。私たち国民民主党は、『家計第一の経済政策』をしっかり掲げて、子育てや家賃補助などきめ細かく対応し、国民の皆さんの不安に答える政治を進めていく」と表明し討論を終えた。

党首討論後の記者会見

 玉木代表は党首討論終了後に国会内で記者団の質問に答えた。1年ぶりの党首討論では、公的年金だけでは老後2千万円不足する旨が記載された金融審議会の報告書を麻生大臣が受け取らなかった不誠実な姿勢を安倍総理にただし、年金のバックデータとなる「年金財政検証」の発表を求めたが、誠実な回答は得られなかったと振り返った。

 厚労省が5年に1度発表する、年金財政の健全性を検証する「年金財政検証」の前提条件である経済成長、実質賃金の伸び率、物価上昇率や生産性がすべて5年前より下回っており、年金財政の健全性を早急に検証する必要性を示した上で、「安倍総理に参院選の前に新しい年金財政検証を示してほしいと強く求めたが、明確な答えはなかった。真実を隠し、国民の不安をあおる安倍政権ではなくて、事実をしっかりと開示して、国民の皆さんに正直に語る国民民主党あるいは野党を選んでいただくのか、参議院選挙の大きな争点だ」と強く訴えた。

 内閣不信任決議案の提出については、野党第1党の立憲民主党枝野代表の判断を受けて検討していくとし、「野党としては戦う姿勢を失ってはいけない。より良い政治、より良い政策を私たちの方がつくっていけるという気概で臨んでいきたい」と述べた。

 党首討論のあり方について問われると、「いろいろな工夫をしていけば、党首討論は意義がある。それぞれの公党の党首が国の重要政策について議論するのは貴重な機会だ」と述べた。