「給付の遅れで倒産や廃業が発生するとしたら人災だ」。10日、衆院予算委員会 で令和2年度補正予算案の基本的質疑が行われ、玉木雄一郎代表が質問に立った。玉木代表は経済対策の不十分さを指摘するとともに、雇用調整助成金や持続化給付金の支給や家賃支援、入札のあり方など、補正予算の執行を巡る政府の不手際やその姿勢について、政府を質した。
1.補正予算の規模
「経済的な自殺を防止するという観点から今回の経済対策は十分なものと言えるのか」。冒頭、玉木代表は「失業率が1%上昇すると、経済的理由による自殺者が1,000人から2,000人増える」という過去のデータを引用しつつ、政府の(事業者向けの)経済対策について質した。また玉木代表は、コロナ対策として政府が推進している「新しい生活様式」について、「これは『半自粛政策』」であり、今後の経済回復は「よくてL字回復に留まるのではないか」と指摘。民間企業の残業代が過去最大幅の減少となったことともあわせて、国民一人当たり10万円の再支給を行うよう、安倍総理に迫った。後者については安倍総理から「必要とあれば、果断な対応をしていかなければならない」という、一定程度前向きな答弁を引き出した。
2.補正予算執行の問題
(1)雇用調整助成金のオンライン申請
玉木代表は安倍総理が色々な政策を述べているものの、それらが「届いていない」と指摘。その一例として厚生労働省が開始した雇用調整助成金のオンライン申請を取り上げた。オンライン申請は5月20日スタートしたものの2度にわたり中断、再開の目処が立っていない。答弁に立った加藤勝信厚労相は、事業の見直しをするために第三者事業者の選定を行っている最中だ、と弁明した。これに対し玉木代表は「これからやる、などと言っていたら、多くの会社が倒れてしまう」と、早急な対応を政府に求めた。
(2)持続化給付金の申請受付を巡る問題
持続化給付金についても「書類に不備がなくても申請を弾かれるケースが後を絶たない」という、申請受付業務を受託している下請け事業者からの内部告発や、コールセンターに「3日間で241回かけたが繋がらなかった」といった事例を取り上げ、政府に対し、業務の改善を厳しく迫った。
玉木代表は「給付の遅れで倒産や廃業が発生するとしたら人災だ」と述べ、安倍総理に対し責任を感じるかを問い質すとともに、「五重の塔のような多層的な下請け構造が、業務改善のなさや無駄、予算の中抜きを生んでいる」と指摘し、政府事業の多層的な下請け構造について、その全容をきちんと把握するよう、政府に求めた。
(3)家賃支援の算定基準について
家賃支援給付金については、現在の算定基準では5月から3か月間連続で売り上げが前年比-50%以上に落ち込んだ事業者、などとされていることついて取り上げた。玉木代表は、「自粛要請で、売り上げが最も落ち込んだのは4月だったという事業者が多いはず。なぜ起算日を4月からとしないのか。5月からだと5・6・7月までということになり、給付金の受け取りが早くても8月になってしまう」と、政府に制度運用変更の検討を強く求めた。
また同じ質問の中で梶山弘志経産相は、家賃支援給付金支給の委託費として約942億円を計上し、委託先の事業者に(株)リクルートを選定したことを初めて明らかにした。玉木代表は「900億円といえば、文化庁の年間予算に匹敵する金額だ。適切に執行されるのか、きちんとチェックしていかなければならい」と述べた。
(4)消費税減税:一旦集めた税金を返すことの非効率について
政府の給付金の支給に遅れや、様々な問題が発生していることから、玉木代表は一旦集めた税金を納税者に「給付」の形で返すことが「いかに大変なことかが分かった」と述べた上で「税の徴収の停止を政策としてやれば(経済に対して)一番幅広く効く」と指摘。国民民主党が100兆円経済対策に含んでいる消費税減税(1年間に限り、消費税の税率を現行の10%から5%に引き下げる)など税徴収の停止の検討を求めた(これについて玉木代表は、委員会質問後の会見の中で「飲食店や自動車産業といったところは、消費税を引き上げた時に一番影響があった。消費税を軽減したりすることで、かなりそういった商品への悪影響を軽減できるのではないか」と、政策の意図を説明)。
(5)事業者と政府の癒着疑惑について:民間の知恵を借りながら透明性を確保する「サウンディング型市場調査」の提唱
持続化給付金について、経済産業省が入札前に特定事業者と何度も打ち合わせを行っていたことについて、経産省と事業者との接触記録の提出を求めた。また民間の知恵を借りながら透明性を確保するため国土交通省が行っている「サウンディング型市場調査」(聞き取りの内容を入札前に公表)のノウハウを経産省でも活用することを求めた。
これに対し梶山経産相は、接触記録を公表することを約束した。
3.その他のテーマ
(1)外交:「国家安全法」やコロナ水際対策
先般、中国の全国人民代表大会(全人代)で香港に「国家安全法」を導入する方針が採択されたことについて総理の見解を質した。玉木代表は香港の「1国2制度」を蔑ろにするような中国政府のこの動きについて、G7で共同声明を出すべきではないか、との考えを述べた上で、安倍総理にそうした声明の発出を率先するつもりがあるかどうかを質した。
これに対し、安倍総理はG7の存在意義について、「自由、民主主義、人権、法の支配」といった価値を推し進めていくことにあると述べ、「1国2制度といった考え方を前提にそうした動きをリードしていきたい」と前向きな答弁を行った。
(2)アフターコロナの社会像と経済安全保障
「アフターコロナ」の世界について玉木代表は、1)グローバル化、2)東京一極集中、3)富の分配、の3つについて再考が求められている、との見解を述べた。その上で経済安全保障に関し、コア技術を有する非上場の国内中小企業の外国資本による買収の予防策について、政府の考えを質した。
玉木代表は、最後に国会延長を強く求めて質問を終了した。