反対討論に立った足立信也参院政治倫理・選挙制度特別委員会筆頭理事

 今国会では参院選挙制度改革に関する公職選挙法改正案が参院政治倫理・選挙制度特別委員会(倫選特)で審議され、私は委員会筆頭理事として対応に当たってきました。そして11日夜、参院本会議で参院定数を6増する自民党案が採決されましたが、国民民主党は反対を表明。私は会派を代表して討論に立ち、強く反対を主張しました(写真は参院本会議で反対討論に立った足立信也参院政治倫理・選挙制度特別委員会筆頭理事)。

 法案に反対した理由は、今回採決された法案が議論に至った入口と強引な採決が行われた出口に大きな問題があるからです。そして法案そのもの、中身に大きな問題があります。そこにはどうあっても納得できない自民党の横暴が延々と展開されました。

参院改革協議会の議論をまったく無視して始まった自民党の暴走

参院政治倫理・選挙制度特別委員会筆頭理事 足立信也

参院政治倫理・選挙制度特別委員会筆頭理事 足立信也議員

 私は2013年9月に当時の山崎議長が設置した「選挙制度の改革に関する検討会」の下に作られた「選挙制度協議会」に31回、そして昨年5月に伊達議長の作られた「参院改革協議会」の下にある「選挙制度に関する専門委員会」17回のすべてに出席しています。参院議員選挙制度を作るという気概の下に熱心な議論が繰り広げられたと自負しています。

 専門委員会委員長は5月7日伊達議長の作った「参院改革協議会」に報告書を提出しました。各専門委員からの意見を受けた報告書の最後には「選挙制度改革についてここまで丹念に論点を整理し、議論したことはあまりないのではないか。報告書を参院改革協議会での議論に役立て、成案が得られるよう、参院の在り方も踏まえた議論を参院改革協議会にお願いしたい」と書かれています。これは専門委員会委員の総意でした。

 ところが自民党は専門委員会でも全く議論にさえ上っていなかった自民党案を6月1日の参院改革協議会に突然提出しました。専門委員の総意も、その集大成である報告書を読むこともなく、全く無視されました。そして、各会派代表者会議の議論の途上、同月14日、自民党案を無所属クラブと共同で国会に提出しました。他の会派に対して「出せるものなら出してみろ」という態度で委員会は紛糾。結論として議長の判断で、各会派で法案を提出して倫選特で審議するということになってしまったのです。参院改革協議会も専門委員会も開かないと、これが議長の判断だということでした。

 私は、参院改革協議会も専門委員会も開かないで倫選特で議論するというのであれば、これまでの議論の積み上げである報告書に基づいて、できるだけ多くの意見の合意が得られるような成案づくりを目指すのが委員会運営ではないかと、その覚悟があるのかと問うところから倫選特での議論をスタートしました。しかし結論として自民党にはそうした姿勢は全く見られなかったわけです。各会派が提出した法案に対して、その会派だけの賛成で成立させてしまうという委員会運営でした。数の力によって自民党案の成立へとつなげるものでした。

 この入口が間違っていました。各会派が法案を提出するという形になり、議論が拡散してしまったわけですから、「委員長から議長に相談してこれでは意見がまとまらない、もう一度改革協議会や各会派の代表懇談会を開いてほしいと言うべきだ」と私は指摘しました。しかし、委員長はまったく取り合いませんでした。

「自民党案」だけを採決させる前代未聞の動議

 採決に至る出口も前代未聞の、自民党による強引な言語道断な運びでした。

 11日夜に本会議が開かれました。それに先立ち11日の倫選特委員会に提出された自民党の動議の内容にはあきれるばかりでした。委員会では自民党案だけでなく先に採決され否決された公明党案を除く国民民主案、維新案、希望・立民案の計4法案が審議されていましたが、自民党案だけ質疑を終局し、討論は省略し、直ちに採決するとの動議が提出されたのです。自分の案だけ通したいとその動議ははっきり宣言しているのです。他党の案はどうでもいいと。前代未聞のけしからん出口です。

 しかもわれわれは言論の府ですから、自民党が強行に採決を求めてくるだろうからということで討論を用意していたわけです。しかし、その討論を封鎖するような動議だったのです。言論の府で討論はさせない、批判されたくないと。私たちは直ちに委員長不信任の動議を提出しましたが否決され、自民党案のみが可決されたのです。

合区対象者を救うための自民党の党利党略改革案

 自民党案は「鳥取・島根」「徳島・高知」の合区を維持したうえで、参院の総定数を比代表で4つ、選挙区で2つ増やして計6増して、比例代表に拘束名簿式を一部導入するという内容です。図らずも、9日の委員会審議で、自民党の発議者が「合区を踏まえて4増をお願いしている」と答弁しているように、合区により選挙区から立候補できなくなる自民党の現職2人を比例で救済する狙いがある、自民党の党利党略以外の何物でもない内容です。

 参院の定数を6人も増加するというのは、今後、消費税の引き上げを実施しようとするなか国民にさらに負担を求めることで到底理解が得られません。また、衆院や自治体議員が定数を削減するなか参院だけが定数増となることにも理解は得られないと思います。

 最も危惧するのは、参院の比例代表は現在、各党の候補者のなかで得票が多い人から順に当選する非拘束名簿式を採用していますが、自民党案は事前の名簿順位に応じて当選者が決まる拘束名簿式を一部導入(特定枠)するもの。特定枠に「合区」対象県の候補者を充て、救済するのが狙いです。この特定枠の導入には重大な欠陥があり、比例代表の名簿中、特定枠でない非拘束名簿の候補者が個人で最大の票を得たとしても、その候補者が落選し、特定枠の候補者が当選するというケースが起こり得ます。つまり、有権者の民意が反映されない恐れがある制度なのです。

 最高裁から憲法上要請されている1票の平等が失われ、投票数に関係なく当選してしまうこともあるわけですから今後おそらく訴訟が起きるし、違憲と判断される可能性もあります。自分たちの都合で違憲と判断される可能性が極めて高い選挙制度改革案を出す自民党とはいったい何なのか。強い怒りをもって反対を表明しました。

■■■国会の「運び」説明■■■

 なお、舟山康江参院国会対策委員長は11日、国会内で定例の記者会見を行い、国会の「運び」について説明しました。

 参院選挙制度改革に関する自民党の審議の進め方を野党は不服とし、石井浩郎・政治倫理の確立及び選挙制度に関する特別委員会委員長に対し10日に維新が問責決議案(本会議の議題となるもの)を提出しました。しかし、法案の審議中に委員長の問責決議案を提出するというケースは前例がないこと、特別委員会の委員長は所属委員の互選で選ばれるため、本来は不信任動議(委員会の議題となるもの)を提出するのが慣例であることから、議院運営委員会で協議の結果、本会議での問責決議案の採決は見送られました。

 11日の質疑が終了した後、自民党から「質疑終局、討論省略、直ちに採決する」動議が提出され、同時に国民民主党をはじめとした主要野党が「石井委員長不信任動議」を提出。委員会での採決の結果、不信任動議が否決され、自民党の動議が可決された結果、野党案は採決されず、自民党案のみ、野党の反対討論の機会が奪われたまま採決されてしまったのです。

 野党第一会派が採決に参加する法案で討論を省略する動議はこれまで前例がなく、こうした自民党の審議の進め方について舟山委員長は「言論封殺だ」と語りました。