東日本大震災復興・福島・原発事故対策本部の増子輝彦本部長(幹事長代行=参院議員)、階猛副本部長(衆院議員)、大島九州男事務局長(参院議員)らの一行は22日、震災発災後7年半が経過し、被災地ごとに復興の速度に差がみられることから、各地を視察することにより復興ステージの違いを把握するとともに、現地の要望・課題を調査するため、岩手県の一関市と陸前高田市、宮城県の気仙沼市を訪問した(写真上は岩手県一関市のシイタケ生産ホダ場視察の様子)。
(1)岩手県一関市(シイタケ生産、ホダ場、清掃センター)
■シイタケ生産・ホダ場にて、生産者(岩渕謙一様)・一関市役所農林部から説明を聞いた。
- 2008年から生産を開始(同地にて栽培が盛んになったのは1970年代頃から)
- 2012年3月に県は出荷制限を指示(2015年4月出荷制限解除)
- 処理する必要のあるホダ木は推計14400トン発生。破砕して混合することで放射性濃度を低くし、事業者用燃料等として適切に処理する方法で実証試験を実施、昨年度より本格的な処理を開始。年間4000トン程度の処理量を見込むものの、2022年度程度まではかかることから、引き続きの支援をお願いしたい。
- ホダ場から除去した落葉(推計8500平方メートル)については、8割方集中管理等での埋設処理を実施しているが、あくまで一時保管であり最終的な処分については、国の方針が待たれるところ。
- ようやく流れが出来てきたところで、まだまだこれから。次の世代に引き継ぐためにも頑張っていきたい。
黄川田徹元議員及び菅原巧一一関市議が参加した。
■一関地区広域行政組合大東清掃センターにて、一関市役所農林部・同センターより説明
- 施設自体は1999年から稼働、測定器については2016年に導入。
- 本焼却炉で、入口/出口ベースでの検査を実施、混焼して4000ベクレルまで下げている。
- 牧草についてはペレット化し一般ゴミとの混焼により概ね処理が済み、本年中には焼却完了予定。
- サンプリングについては、400万円程度の簡易測定機により実施している。
- 測定してみると、200~3000ベクレルと地域によって差があるので、高低をブレンドして焼却を実施。
- ペレット化したものは、周辺住民の理解を得ながら、農家が一時保管している。
- 稲わら、たい肥については、殆ど処理できておらず一時保管を続けており、焼却以外の処理方法の検討も始めている。
黄川田徹元議員及び菅原巧一一関市議が参加した。
(2)岩手県陸前高田市(仮設店舗、復興祈念公園)
■仮設店舗「カフェフードバーわいわい」にて、太田オーナーより説明及び昼食
- オーナーご自身は千葉県八千代市出身で、お連れ合い様が当地出身なことから、こちらでの開業を決意。
- オープンは2012年5月。7~8割は市外からの客。物販を中心にした商店街という位置づけではないので、昼よりは夜の方が客の入りが多い。
- この仮設店舗は全15区画、NPOや飲食店など現在は10団体が入っており、デイサービス・マッサージ・各種サロン活動など、みな得意な分野で開業している。
- 中小機構から払い下げて、地主には個人として賃料を支払っている。この準備に2年くらいかけたが、実際に手続きが行われたのは本年10月16日、市役所内の事務手続きにかなり時間がかかった。
- ただで払い下げてもらったが、一時所得や登免税など、全部で700万円を超えることがわかったが、全く知らなかったし、知らされてもいなかった。今は、減免を申請しようか検討中。
- この施設を維持しようとすると毎月約70万円経費がかかり、出ていくときに更地にするには2500万円かかるとのこと。そのあたりを入居者と正直に相談し、坪単価2500円/月程度、1店舗あたり6~8万円の家賃を設定している。
黄川田徹元議員及び菅野稔陸前高田市議が参加した。
■復興祈念公園(仮称=国営追悼・祈念施設)にて、武藤東北公園事務所長、陸前高田市農林部長より説明
- 市営公園と県営公園合わせて全体で130ヘクタール、2020年度末を目途に整備予定、現状50%程度の進捗。
- 震災前は40万人程度が訪れていたので、ハードの整備とともに、完成後にどうやって人を呼ぶかが重要な課題。
- 道の駅の整備とともに、現物で遺構を残すなど、奇跡の一本松が残ったこの場所で、犠牲者への追悼、鎮魂とともに復興の象徴としたい。
黄川田徹元議員及び菅野稔陸前高田市議が参加した。
(3)宮城県気仙沼市(水産加工施設、気仙沼市役所、漁協気仙沼地区支所)
■水産加工施設(加和喜フーズ)にて、同社川村会長と面談
- 元々、気仙沼で操業していたが、発災半年後に、陸前高田にも工場を建設。顧客を逃すことなく操業を継続。2016年3月には、被災した全ての施設・設備が再稼働。
- とにかく人手が不足している。今は全体の2割(40人)程度の外国人を採用している。(ミャンマー、インドネシア)
- 陸前高田では60歳以上が半数程度占める(45~50%)。働き手が少ないから、介護施設も200人待ちとなっている。
- 外国からの実習生も賃金の高いところに移る。最低賃金は宮城が798円、岩手が762円。今は都会も地方も差はないので、東北全体で一律にすべき。
- 販路はほぼ回復している。内外のバイヤーを連れてきて商談をセット。20社で組合を作っているが、今のところ1社の脱落もない。
- 基本は国産品で製造しているが、ないからといって諦めず、ないものは輸入品を活用するなど、柔軟な対応が重要。
- 補助金は貰ったものではなく、税金で返すという意識が大事であり、今後も震災前と違うことをやって生き残りをかけていく。
黄川田徹元議員及び内海太元宮城県議が参加した。
■気仙沼市役所にて、留守洋平副市長と面談(市役所到着時、菅原市長が出迎え)
- ハード事業ももちろんだが、職員の確保が喫緊の課題。現状は、他自治体からの派遣(応援)職員や任期付職員で対応しているが、任期付の採用拡大は既に限界に近い。2020年度以降も職員派遣を継続してもらいたい。
- 被災者生活再建支援制度については、再建方法について、時間が経つごとに状況も変わることから、毎年の締め切りではなく、もともとの申請期間の2019年4月を締め切りにすると使いやすくなるのではないか。
- 復興基金については、復興ステージが進むにつれて、使途が緩和されてきてはいるが、その分、新たなニーズも出現しているので拡充、期間延長をお願いしたい。
黄川田徹元議員及び内海太元宮城県議が参加した。
■宮城県漁業協同組合気仙沼地区支所にて意見交換(菊田運営委員長、佐々木支所長、小野寺カキ部会長、三浦わかめ部会長、他)
- 震災で全てが更地になってしまった。それでも何とかして、出来るところを使って、なんとかわかめ漁を続けてきた。いろいろ情報を収集し、役割分担もしながら、新しい世代を担うめかぶを種苗にして進めているところ。
- 7年間は長いようで短かったという感覚。水産庁の制度を使ったりして、著しくはないが一歩ずつ進んでいる。
- われわれは岸壁を使わざるをえない。成長期は岸壁の工事を休んでくれているが、それ以外は狭いところでやり繰りしている。そのあたりもう少し工夫できないかと感じている。
- 震災前に比べて収量は概ね回復しているが、ロープや包装などの資材、燃料が高くなっている。
- 津波により全てが浚われてしまったが、津波後は栄養が豊かになったのか、数年間は豊富なカキが出来た。ただ、それもあまり続かず、最近は元に戻ってきている。過去もそういうことがあったらしい。
- いま心配なのは、築地から豊洲に替わった流通過程。しばらくは様子を見る必要がある。その影響で4日間休んで、生ガキとして流通できず価格が下がった。1800~2000円/キロだったものが1500円程度に。通年で2000円以下だと赤字。
- 使えなくなったロープや網が今でも上がってくることがあるが、それらは自分達で処分している。それに何か助成制度みたいなものがあると助かる。
内海太元宮城県議が参加した。
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増子本部長は視察後、「震災後7年半が経過して、地域によって復興のステージが違ってきていることに伴い、必要な支援も各地一律ではなく柔軟な対応が必要になっている。高齢化・人口減少も相まって、各種産地等の現場はもちろん、その支援を実施する行政機関等も必要な人数が足りず、復興支援事業の進捗に影響を及ぼし始めている。一方で、今回訪問したしいたけ農家や、仮設店舗で営業を続ける飲食店のような存在が、復興に向けてのキーパンソンになることから、今後もこのような人材と積極的に意見交換をして先進事例(失敗談)の収集、その発信をしていくことも重要である。東日本の復興なくして日本の再生なしと肝に銘じて、引き続き、党をあげて被災者に寄り添い、要望を丁寧に聴き取り、政府に対しきめ細かい被災者支援を求めていく」と述べた。