参院本会議で質問する徳永エリ議員。「さらなる企業参入を進めようとする漁業法改正には賛成できない」と表明
 徳永エリ議員は30日午前、参院本会議で国民民主党・新緑風会を代表して「漁業法等の一部を改正する法律案」の質疑に立ち、吉川農林水産大臣に質問した。
 冒頭、徳永議員は「70年間続いてきた漁業の現場に定着してきた秩序を、大きく変えることを、漁民は、誰一人として望む声など上げていない。しかも、企業には配慮、漁民にはごまかしながら、短い臨時国会の会期の中で、急いで成立させようとするやり方に全く納得がいかない」と強い懸念を表明した。
 次に、徳永議員は漁業法改正案の問題点を以下のとおり挙げた。(1)政府は船内の生活環境を改善し、若い人たちが漁業に参入し易くすると説明しているが、資源管理の観点から大変な問題。トン数規制をなくすことによって、漁船の大型化が進み、企業が沿岸漁業にこれまで以上の圧力をかける。また、魚類資源を「乱獲」し、資源管理どころか、資源の減少や漁場の荒廃につながりかねない。(2)漁業権の付与は、法律で優先順位を定めた現行制度を廃止し、養殖業への新規参入や規模拡大を促すとしているが、漁業権は、地元の海で働いてきた漁業生産者に優先的に付与されるべきものであり、企業や新規参入者と同列に扱うべきものではない。
 吉川農林水産大臣は現行制度が施行された当時の課題は解消されており、今回の法改正は今後の漁業の経営の安定性や地域の活性化につながると回答した。
 最後に、「水産資源を守り、海の安全を守ってきた、漁協や沿岸漁業の役割は非常に重要だ。沿岸漁民の生活を守ること、持続性を確保することが確認出来ない場合はさらなる企業参入を進めようとする法改正には賛成できない」と述べた。
 質問要旨は以下のとおり。
1.なぜ、漁業権付与の優先順位を定めた現行制度を廃止するのか
2.「適切かつ有効に活用」について都道府県知事が恣意的に判断するのではないか
3.過去の実績を考慮したIQ(漁獲割当)設定とは具体的にどういうことか。また沿岸漁業の特性を踏まえて、十分な準備と体制ができるまではIQ設定を行わないなど、小規模漁業者への配慮が必要ではないか
4.この法案で導入されるのは、IQではなく、実際には譲渡可能個別割当制度ITQではないか
5.小規模漁業者に配分された漁獲割当割合が、リースや売買によって、特定の企業に集積され、廃業に追い込まれやしないか
6.海区漁業調整委員の漁民委員の公選制を廃止することで、浜の秩序が損なわれ、対立や分断が起きるのではないか
7.国民の食料や食文化、浜の暮らしを守るためにも、国内に於いて、減少している魚食の普及に努めることが必要ではないか
8.養殖事業について、企業参入により生産力をさらに拡大すれば漁業者の経営に大きな影響がでるのではないか。また環境への影響はどう考えているのか
9.地域の経済とくらしを支え、歴史と文化をつなぎ、国土を保全してきた漁協や沿岸漁業の役割は法改正後も果たしていけるのか