礒﨑哲史参院議員は5日午前、政府提出の「水道法の一部を改正する法律案」の本会議採決に先立ち、反対の立場から討論を行った。
冒頭、礒﨑議員は今年7月の豪雨や北海道胆振(いぶり)東部地震により水道管が破裂し、断水日数が30日以上に及ぶなど、重要な生活インフラの一つである水道の甚大な被害に触れた。また、水道が国民の日常生活や命にも直結する貴重な財産であること、そして水道の基盤強化を図ることの重要性を主張した。
次に、政府が推進するコンセッション方式(水道施設の所有権を地方公共団体が有したまま、運営権を民間に設定できる)の導入による国民生活上の問題点を以下のとおり説明した。(1)災害時に復旧対応の責任の所在が地方公共団体にあるのか民間事業者にあるのかが不明瞭となるなど十分な災害対応が行える保障がない(2)外資系などの水道関連企業が運営権を得ることになれば、企業収入を増やすために水道料金を引き上げられる(3)日本がこれまで築き上げてきた世界に誇る水道事業が世界に売られてしまう――。
また、委員会での参考人質疑で、コンセッション方式を導入するのであれば、水道事業を適切にモニタリングする新たな機関を創設しなければならないという指摘があったことに触れた。「コンセッション方式を導入する本来の目的は、民間のノウハウや技術を活用して事業の効率化を図り、結果として事業コストを削減することであり、新機関の創設は本末転倒だ」と指摘した。
そして、コンセッション方式は、水道を所管し現場を知る厚生労働省が推進してきたものではなく、大規模事業者に焦点を当てて小規模事業者への配慮がないまま官邸が強力に推し進めてきた政策であるとし、十分な海外事例の調査も行わないままに、多くの水道事業者が必要ないと考えているコンセッション方式を押し進めていると批判した。
最後に、「本法律案が成立することになれば、国民の生活に極めて重大な変化がもたらされる。しかし、政府は説明責任を果たさず、審議も十分に尽くそうとせず、水道民営化をゴリ押ししようとする姿勢は、到底許されるべきものではない」と述べた。