北方館を見学する視察団一行

 北方領土問題対策協議会の古川元久座長と斉木武志事務局長は、24日から25日にかけて根室市を訪問し、北方領土を巡る日ロ交渉が難航している中、住民の思い、地域の課題を聴き取った。視察と意見交換には、地元の根室市議会議員で党所属の千葉智人、小沼ゆみ、工藤勝代各市議が参加した。

納沙布岬から北方領土を視察

納沙布岬から北方領土を視察

 24日は、納沙布岬から沖合の北方領土を視察した。沖合の貝殻島、水晶島が間近に見え、日本の漁船やロシア船も肉眼で確認することができた。一番近い貝殻島は沖合3.7キロに位置し、小型船でも容易に到達しそうな距離だが、日本の領土でありながら、自由に近づくこともできないという現実を実感した。

 北方領土を眺めることのできる場所に北方領土問題の啓発を目的に開設された北方館では、小田嶋英男館長から北方領土の歴史的経緯、北方領土周辺での昆布漁、ビザなし渡航や交流事業、返還運動の状況等について説明を受けた。

 25日は、根室市役所で石垣雅敏市長との懇談を行った。日ロ交渉の状況について、市長は「国が責任をもって領土問題を解決すべきだ」とし、元島民が高齢化している中、少しでも早い解決が必要だとした。また、「北方領土の歴史、日本固有の領土であるということを若い世代に伝えていくことが大事だ」と述べた。

 古川座長は、強硬姿勢で交渉に臨むロシアに対し、「省庁間が一体化していないと相手に付け込む隙を与えてしまうので、一枚岩で向き合うことが大事。相手を刺激しないように北方領土返還への思いを抑え込むのではなく、国民の強い意志を表す方が外交の後押しになる」と語った。

 市長は、日ロサケ・マス漁業交渉で漁獲量、漁業法等に制限がされ、漁業だけでなく水産加工業などの地場産業にも影響が及び、地域経済全体に大きな影響が出ていることに懸念を示し、「環境への負荷が少ない漁業法の研究を開始するなど、両国の話し合いが良い方向に向かってほしい」と述べた。古川座長は、根室市の人口が全盛期の約半分にあたる2万5千人にまで減っていることを上げ、「根室市でも人口減少、高齢化が問題。海の問題を解決して豊かな漁業資源を活用した地域経済、暮らしを良くしていくことを考えなければならない」と応じた。

石垣雅敏根室市長と懇談

石垣雅敏根室市長と懇談

 続いて、北方領土の元島民3人や市の北方領土対策担当者と意見交換を行った。3人から敗戦時の情報の混乱、ソ連軍の侵攻、緊急避難や引き揚げ、戦後の返還運動等の体験談を伺った。元島民の平均年齢は84歳になり、いまだに北方領土問題が解決しない状況について「70年以上、期待と落胆の繰り返しだった」と苦悩を吐露した。「私たちに対して戦後処理は行われていない。島から避難する時に残してきた残置財産の補償は、国内問題として日本政府が実施すべきだ」「安倍総理は現地に来て元島民、地元の意見を直接聞くべきだ」と求めた。

 古川座長は、「お話を伺い、元島民の方々の苦労や思いがよく分かった。私たちは交渉が日本にとってプラスになるように、主張すべきは主張して外交を後押しする。経済協力だけ約束させられお茶を濁されるようなことは認められない」と応じた。

元島民との意見交換

元島民との意見交換