国民民主党は10日、ハラスメント規制を強化する3法案を野党共同(国民、立憲、社保、社民)で衆院に提出した。国民民主党からは、岡本充功議員、大西健介議員が衆院事務総長への法案手交に参加した。
連合が2017年に行った「ハラスメントと暴力に関する実態調査」によれば、職場でいずれかのハラスメントを受けた・見聞きした人は56.2%にも上る。ハラスメントの種類別にみると、「パワハラ」などの職場のいじめ・嫌がらせは45%、セクハラは41.4%、マタハラは21.4%となっている。職場のハラスメントが原因で起こった生活上の変化については、「仕事のやる気がなくなったり、ミスやトラブルが多くなったりした」が47.2%、「心身に不調をきたした」が33.1%、「仕事をやめた・変えた」が18.9%などとなっており、ハラスメントは働く人に深刻な影響を与えている。また、UAゼンセンのアンケート調査で、客からの迷惑行為に遭遇した人の割合が7割を超えるなど、悪質クレームも深刻な社会問題となっている。働く人が心身ともに健康で、安心して働くことができるようにするため、ハラスメント対策の強化は喫緊の課題である。
しかし、政府提出の女性活躍推進法等改正案は、会社間で行われるセクハラ・マタハラ対策が不十分であったり、就職活動中の学生やフリーランサーに対するセクハラ・マタハラ、会社間で行われるパワハラや悪質クレームへの対策を盛り込んでいないなど十分ではない。
そこで、国民民主党などは、政府案の対案として、ハラスメント規制を強化する3法案を提出することにした。法案(PDFダウンロード参照)のポイントは、次の通り。
■「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律の一部を改正する法律案」(通称:セクハラ規制強化法案)
- 事業主に対し、自社の労働者から他社の従業者によるセクハラ・マタハラについて相談があった場合、必要があると認めるときは、加害側である他社の事業主に対してその従業者がセクハラ・マタハラを行わないようにする措置を講ずることを求め、又は厚労大臣に当該相談に係る事実を申告して是正のため適当な措置をとるように求めることを義務付ける。また、加害側の事業主は、措置を求めた被害側の事業主に対して不利益取扱いをすることを禁止する。
- 現行で措置義務の対象外となっている、自社の従業者から他社の労働者へのセクハラ・マタハラに関しても、事業主に措置を講ずることを義務付ける。
- 国は、セクハラ・マタハラに関する措置を講ずる事業者に対して援助することに努める(特に、中小企業に特別の配慮をする)。
- フリーランサー・就活中の者へのセクハラ・マタハラに関する施策について検討することを政府に義務付ける。
雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律の一部を改正する法律案(セクハラ規制強化法案)の概要
雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律の一部を改正する法律案(セクハラ規制強化法案)要綱
雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律の一部を改正する法律案(セクハラ規制強化法案)
雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律の一部を改正する法律案(セクハラ規制強化法案)新旧対照表
■「業務等における性的加害言動の禁止等に関する法律案」(通称:「セクハラ」禁止法案)
- 業務における性的加害言動(※)を禁止する。
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※(1)業務に関連し、又は業務上の地位を利用する被害者の意に反する性的な言動で あって、(2)被害者に、精神的・身体的な苦痛を与えるおそれがあるもの
- 国は、業務等における性的加害言動の具体的内容等を定めた指針を作成する。
業務等における性的加害言動の禁止等に関する法律案(セクハラ禁止法案)の概要
業務等における性的加害言動の禁止等に関する法律案(セクハラ禁止法案)
■「労働安全衛生法の一部を改正する法律案」(通称:パワハラ規制法案)
- 職場内でのパワハラ、取引先などの会社からのパワハラ、悪質クレームについて、労働者の保護のための措置を講ずることを事業者に義務付ける。
※2018年4月に参議院に提出したものの再提出
労働安全衛生法の一部を改正する法律案(パワハラ規制法案)の概要