徳永エリ議員

 参院本会議で22日、「国有林野管理経営法改正案」が審議され、国民民主党・新緑風会の徳永エリ議員が吉川農林水産大臣に法案の懸念点や問題点をただした。

 本法案の主な内容は、(1)樹木採取権の設置。国有林の一定の区域で一定の期間、安定的に樹木を採取できる権利を意欲と能力のある林業経営者に設定できるようにする(2)樹木採取権実施契約の締結。権利者は5年ごとに樹木の採取の具体的な条件について現行の国有林の伐採ルールに適合した契約を国と締結する(3)樹木採取権の取り消し。権利者が実施契約にかかる重大な違反行為を行ったとき国は樹木採取権を取り消す――などというもの。

 提出経緯に関連して徳永議員は、政府が閣議決定した「未来投資戦略2018」で、国有林や関連の法整備が「コンセッション重点分野の取り組み強化等」の項目に分類され、それを受けて本法案は「樹木採取権」を設置、国有林を伐採する権利を民間事業者に設定していることから、「コンセッションによる国有林の民間解放への第一歩と見えなくもない」との見方を示した。

 特に昨年5月、政府の未来投資会議で竹中平蔵氏が国有林分野でのコンセッション方式導入を提案していたため、「国有林は国民共有の財産であるから、改正案が成長産業化の名の下に公益的機能を損ない、地域の振興にも寄与せず、大企業の利益だけを図るためものであるならば、しかもコンセッションであるならば、決して賛成するわけにはいなかい」と強い懸念を表明した。

 また、樹木採取権を付与された民間事業者が樹木採取権実施契約の内容と異なる伐採を行った場合、国は事業者に対して損害賠償を請求できる点に関して、「国有林野の知識や経験が浅い事業者は、保残帯まで伐採してしまうことも考えられる。『違反だ、損害賠償だ』では済まされない、治山上大きな問題が生ずる」などと指摘、防止策の必要性を説いた。

 わが国の林業の現状について徳永議員は、大型国産材産業・バイオマス発電事業に木材を安価で大量に供給したり、木材輸出が5年連続で増加したりしているなど、「今、大きなビジネスチャンスを迎えている」と指摘。しかし新たな制度が「一部の事業者の利益のためだけになることがないように、今後の委員会審議を通じて政府の納得いく説明をさらに求めていく」と表明し、質問を終えた。

PDF「国有林野管理経営法改正案質問(予定稿)」国有林野管理経営法改正案質問(予定稿)