参院で7日に開かれた本会議で、「防衛計画の大綱」と「中期防衛力整備計画」の趣旨説明と質疑が行われた。国民民主党から川合孝典議員が質問に立ち、(1)省庁横断的な防衛大綱の必要性(2)グレーゾーン事態に対処する「領域警備法」の早期成立(3)イージス・アショアをめぐる諸論点(4)サイバーセキュリティの強化(5)日米地位協定における日本の警察権――などの諸問題について安倍総理らにただした。
川合議員はまず、冷戦構造が終結しつつある中で、かつて民主党政権が作成した「22(フタフタ)大綱」(2010年に決定した防衛計画の大綱)が先駆的な動的防衛力構想を打ち出していたにもかかわらず、自民党政権の復活後、それが一時棚ざらしにされた経緯を振り返った。その上で川合議員は、今回の大綱・中期防が「領域横断作戦」の重要性について触れていることに鑑み、複雑化する安全保障環境下で、より省庁横断的な、「真にオールジャパンの対応を記す防衛大綱とすべきではないか」と安倍総理に訴えかけた。
また隣国である中国が意図的に「平時でも有事でもないグレーゾーン事態」を作り出しているという防衛研究所の見方を紹介した上で、2012年の政権交代総選挙の際にも自民党が領海警備法の検討を進めると公約していたことを指摘。「あれからすでに7年。法制化の検討が進んでいるようには見えない」と政権の対応を批判。国民民主党がすでにこうしたグレーゾーン事態対処を念頭に「領域警備法案」を国会に提出していることを紹介。領域警備法整備の必要性について安倍総理の認識をただした。
イージス・アショアの配備計画については(1)配備候補地の調査データの誤りについて、その事実関係と今後の対応(2)イージス・アショアがロシアの攻撃対象となる可能性(3)イージス・アショア配備延期の必要性についての認識(4)イージス・システムの海上展開への転換についての認識(5)イージス・アショア及び次期早期警戒機(E2D)にあえて共同交戦能力(CEC)を付さない理由――などについて主に岩屋毅防衛大臣にただした。
さらにわが国が米英を中心とした諜報機関情報の共有メンバー(通称・ファイブアイズ)でもなく、情報インフラの中枢を占める国々との情報共有ができる環境にはないことに触れ、サイバーセキュリティ体制のさらなる強化の必要性について、安倍総理にただした。
最後に、日米地位協定について、この協定がそもそも日本の警察権を否定するような内容ではないこと、同じ敗戦国であるドイツやイタリアなども日本のような一般国際法の解釈を行っていないことなどを紹介した上で、「なぜ米軍に治外法権の特権を認めているのか」「安倍総理はこの疑問について参院議員選挙を通じて国民に明確に説明をする必要がある」と、現状について安倍総理の説明を求めた。