藤田幸久議員は3日午後、参院本会議で国民民主党・新緑風会を代表して「経済上の連携に関する日本国と欧州連合との間の協定の締結について承認を求めるの件(日EU・EPA)」及び「日本国と欧州連合及び欧州連合構成国との間の戦略的パートナーシップ協定の締結について承認を求めるの件(日EU・SPA)」について関係大臣に質問した。
藤田議員は河野外務大臣、吉川農林水産大臣および茂木経済再生担当大臣に「国益を守る大臣である」ことの確認を求めたうえで、今回の経済連携協定における問題点を以下のとおり挙げた。
(1)日EU・EPAでソフト系チーズ、ワイン、林産物など、多数の品目でTPPを上回る自由化を約束している。政府は今後の日米貿易協定交渉において、TPPと日EU・EPAに加え、米国との間でもTPP以上の自由化を約束すれば、国内農林水産業はもはや持続不可能な状況になる。
(2)日EU・EPAには、特定の農林水産品について、各締約国が第三国にこの協定よりも有利な待遇を与えた場合における見直し規定が盛り込まれた。しかも特定の農林水産品として日本は、重要品目である牛肉、豚肉、乳製品等を含む多数の農林水産品を掲げている。国内農業を破壊する懸念がある。
(3)日EU・EPAでは、EUが強みを持つソフト系チーズにおいて、国産チーズの価格が低下し、生産額は最大203億円も減少すると試算されている。チーズの生産減少は生乳生産も直撃するという構造にあり、生産基盤の弱体化が止まらない状態にある日本の酪農は、極めて深刻な事態に陥る。
(4)これまで安全面を理由に制限することが認められていた鉄道車両や線路等の物品の国際入札に、EUの企業が参加することが可能となり、日本の鉄道市場は完全に開放されることとなる。世界に誇る日本の鉄道の安全・安心の基盤がないがしろにされるのではないか。
(5)日・EU戦略的パートナーシップ協定(日EU・SPA)に規定された40分野にもわたる協力事項は、対話の促進、意見交換の促進など漠然と記載されているのみであり、協力事項の実効性がどの程度担保されるのかが不明である。
関係大臣らは国内の農林水産業や経済産業の将来を担保するための政策であるとし、明確な回答はなかった。
最後に、藤田議員は一連の経済連携協定は、新自由主義やマネーゲームが闊歩(かっぽ)する環境整備の要素が極めて強く、食料自給、農林水産業を含めた国のありかたや命や安全を失う恐れが極めて高いと懸念を表明した。11月20日に国連で採択された「小農の権利宣言(小規模農家の価値と権利を明記し、加盟国に対して小農の評価や財源確保、投資等の促進を呼びかけている)」の方向に歩むことこそが、日本の進むべき道ではないかと述べた。
質問要旨は以下のとおり。
- 日本国大臣としての責任
- 日EU・EPAはTPPを上回る自由化を約束
- 特定農林水産品の見直し規定が国内農業を破壊する懸念
- 乳製品の関税撤廃と酪農経営への影響
- 鉄道産品の政府調達に関する安全注釈の撤廃による影響
- 日EU・SPAの合同委員会のあり方
- 新NAFTA(USMCA)に盛り込まれた毒薬条項
- 日産自動車問題とコーポレート・ガバナンス
- 国連の小農の権利宣言