農業問題を取り上げる舟山康江議員

 参院予算委員会で4日に始まった基本的質疑では、国民民主党・新緑風会会派から2番手の質問者として舟山康江議員が質問に立った。舟山議員は、対米物品貿易協定(TAG)・TPP・EPAなどの貿易交渉の問題や、農政の問題を主に取り上げた。

 冒頭、舟山議員は対米物品貿易協定(TAG)の日本側の交渉担当者である茂木敏充経済再生担当相が記者会見の席で、当交渉が「物品貿易に限定されたものであり、投資サービス等のルールを含まない」と説明したことを取り上げ「本当にそうなのか」とただした。

 茂木担当相は「物品以外にも、早期に結論が出るものについては交渉の対象となり得る」とした上で「金融保険等、交渉に時間がかかるものは、交渉対象とされることを想定していない」と答弁した。これに対し舟山議員は「だんだん言い方のトーンが下がってきている。最初は物品だけと言いながら、合意ができれば入ってくる、と。実際、共同声明の中にも『物品だけ』などという記載はない」と反論した。

 また舟山議員は、米国側が「22項目にわたり交渉する」と明確に表明していることを取り上げ、日本政府との姿勢の違いを指摘するとともに「米国やEUは(対外交渉に先立ち)パブリックコメントを求めたり、公聴会を開催したり、影響調査報告書を出すなど、自国民に対しさまざまな情報開示策を行っている。これに対し、日本は何もしていない」と自国民への情報開示に後ろ向きな日本政府の姿勢を批判した。そして「国民の声、それから国会・立法府の声を聞くなど、他国ではやっているそういった努力をすべきだ。日本はなぜやらないのか」と訴えた。

 さらに舟山議員は、すでに発効しているTPP11と日・EU EPAについて、貿易にどのような影響が出ているのか、政府にただした。

 舟山議員は、TPP11が昨年末に発効してからわずか1カ月間で牛肉の輸入量が約4割(TPP参加国では約6割)も増えたことを取り上げ、その影響について吉川貴盛農林水産大臣に問い質した。しかし吉川農水相は正面からは答えず、牛肉の輸入量の増加は、現時点では国産牛肉の価格には影響を与えてはいない、と回答するにとどめた。今回、セーフガードの発動ができる状況になかったという事実も踏まえ今後、舟山議員は発動基準の見直しを交渉する可能性についても問い質したが、茂木担当相からは否定的な答弁しか返ってこなかった。

 さらに舟山議員は、生産農業所得が過去19年間で最高となっている裏で、耕地面積・農業従事者・販売農家など、いずれも大幅に減少し、農本農業の足元が弱体化していることを指摘。「量が少ないから価格が上がっている。これは健全だろうか」と、政府が成果として挙げるデータに疑問を投げかけた。

 また現状では輸入の額が総輸出額を大きく上回っており、輸出で増えているのは水産物の加工食品であると指摘。純粋な農産物に限ると、輸入が輸出の約30倍であることを取り上げ「輸出するから大丈夫」と単に幻想を振りまくだけでなく、現実を直視すべきだ、と訴えた。そして「国際交渉の時と同じだ。本来は現場の声を聞き、議員の声を聞いてボトムアップでちゃんと議論して決めるべきものが、上で決めたものを全部下すトップダウン型となっている。規制改革推進会議にどのような権限があるのか」と現在の政府の政策決定のあり方に疑問を投げかけた。これについて「農業政策については現場を重視し、農業者の声に耳を傾けながら、さまざまな意見を踏まえて政策決定を行っている」と答弁した安倍総理に対し「種子法や外国人労働者の問題の時のように、与党の議論なんて実際には形骸化している。トップダウンはやめるべきだ。その辺が政策の間違いにつながっていく」と反論し、このテーマについての質問を締めくくった。

PDF「3月4日参院予算委・舟山康江パネル資料」3月4日参院予算委・舟山康江パネル資料