2020年3月11日 衆議院内閣委員会
新型インフルエンザ等対策特別措置法の一部を改正する法律案に対する附帯決議
政府は、本法の施行に当たっては、次の諸点に留意し、その運用等について遺憾なきを期すべきである。
一 新型インフルエンザ等対策特別措置法(以下「特措法」という。)に定める新型インフルエンザ等緊急事態宣言(以下「緊急事態宣言」という。)に係る各種の措置は国民生活に重大な影響を与える可能性のあることに鑑み、定められた要件への該当性については、多方面からの専門的な知見に基づき慎重に判断すること。
二 政府対策本部長は、新型インフルエンザ等緊急事態が発生したと認める判断をするに当たっては、あらかじめ、感染症に関する専門的な知識を有する者その他の学識経験者の意見を聴取すること。
三 緊急事態宣言をするに当たっては、特に緊急の必要がありやむを得ない場合を除き、国会へその旨及び必要な事項について事前に報告すること。緊急事態宣言を延長する、区域を変更する、又は解除する場合も同様とすること。
四 特定都道府県知事及び特定市町村長並びに指定公共機関及び指定地方公共機関は、新型インフルエンザ等緊急事態措置を実施したときは、遅滞なく、その旨及びその理由を政府対策本部長に報告すること。政府対策本部長は、報告を受けた事項を取りまとめ、緊急事態宣言の実施状況について、適時に国会に報告すること。
五 課題の共有・解決に向け、与野党に対して必要な情報共有を適時、適切に行うとともに、与野党の意見を尊重して施策の実施に当たること。
六 特措法に定める政府行動計画に基づき、必要な措置を迅速かつ組織的に幅広く実施すること。その際、都道府県・市町村等がそれぞれの行動計画等に基づき迅速・的確に施策を実行できるよう、政府が持つ情報や学識経験者の意見を提供し、最大限の支援を行うこと。
七 各種対策を実施する場合においては、国民の自由と権利の制限は必要最小限のものとすること。また、関係機関に対しても、その旨徹底すること。
八 必要と認められる者については、早期にPCR検査を実施するとともに、健康観察を行うための体制を確立すること。
九 今回の事態により、大幅なマイナス成長になる可能性が極めて高いことを前提に、消費と雇用に重点を置いた万全の金融・財政政策を講ずること。その際、サプライチェーンの寸断等や風評被害を含む顧客の大幅減少により大きな経済的影響を受けている中小・小規模企業、個人事業主・フリーランスのうち、新型コロナウイルス拡大に伴う減収が一定程度を超える事業者に対して、事業継続が可能となるよう特に配慮すること。
十 特措法第四十五条における施設利用等の制限要請等を行うに当たっては、その実効性の一層の確保を図るため、当該要請等によって経済的不利益を受ける者への配慮を十分に検討すること。
十一 企業及び個人(奨学金を含む。)に対する貸付条件等について、国から金融機関等に対して柔軟な対応を要請すること。
十二 生活や経済に支障が生ずる国民や企業が相談できる窓口を開設し、ワンストップで各種支援制度の申請手続が行えるよう早急に検討すること。その際、緊急的かつ深刻な経済情勢に鑑み、申請手続における提出書類や各種条件を極力簡素化するとともに、審査は迅速かつ合理的に行うようにすること。
十三 過去の経験に照らせば、新型コロナウイルス感染症の影響が、健康問題にとどまらず、経済・生活問題、さらには自殺リスクの高まりにも発展しかねない状況となっていることを踏まえ、政府は一人の命も犠牲にしないという強い決意のもとに、全国の自治体と連携し、自殺対策(生きることの包括的支援)を万全に講ずること。
十四 国民、企業などが、不必要な混乱を避け、冷静で的確な行動がとれるよう、科学的見地からも正確で必要十分な情報発信を適時、適切に行うこと。特に、医療従事者、高齢者、学校関係者、訪日・在留外国人、海外等への情報発信には最大限留意すること。また、ウイルスの肺以外の臓器や血液への影響、排泄物を通じた感染、動物への感染などについて、医学的に検証し、その結果についてもきめ細かく情報提供するよう努めること。
十五 農水産品の流通及び輸出入に支障が生じないよう努めるとともに、国産の輸出農水産品について科学的知見を踏まえて対応し、風評被害防止に努めること。
十六 中小企業金融の返済期限、雇用保険の給付期間の延長などについて、東日本大震災に伴って実施された期限延長措置にならい、その実施を検討すること。
十七 国が自治体等の事務に関し方針等を定めた場合には、国は自治体等からの質問に対して誠実に回答すること。
十八 専門的知見を活用し、感染症対策を一元的に担う危機管理組織の在り方(日本版CDC等の設置)を検討すること。
十九 今回の新型コロナウイルス感染症への政府がとった対応について、第三者的立場から、客観的、科学的に検証し、その結果を明らかにすること。
二十 特措法の適用の対象となる感染症の範囲(当該感染症に係る法令の規定の解釈により含まれるものの範囲を含む。)について、速やかに検討すること。
2020年3月13日 参議院内閣委員会
新型インフルエンザ等対策特別措置法の一部を改正する法律案に対する附帯決議
政府は、本法の施行に当たり、次の諸点について適切な措置を講ずるべきである。
一 新型インフルエンザ等対策特別措置法( 以下「特措法」という。) に定める新型インフルエンザ等緊急事態宣言( 以下「緊急事態宣言」という。) に係る各種の措置は国民生活に重大な影響を与える可能性のあることに鑑み、定められた要件への該当性については、ウイルスの病原性、感染力等の科学的知見に基づき、感染者の状況、感染地域を考慮し、慎重に判断すること。その際、医学・公衆衛生等の専門家の意見を十分踏まえること。
二 政府対策本部長は、新型インフルエンザ等緊急事態が発生したと認める判断をするに当たっては、あらかじめ、感染症に関する専門的な知識を有する者その他の学識経験者の意見を聴取すること。
三 緊急事態宣言をするに当たっては、特に緊急の必要がありやむを得ない場合を除き、国会へその旨及び必要な事項について事前に報告すること。緊急事態宣言を延長する、区域を変更する、又は解除する場合も同様とすること。
四 特措法に定める政府行動計画に基づき、必要な措置を迅速かつ組織的に幅広く実施すること。その際、都道府県・市町村等がそれぞれの行動計画等に基づき迅速・的確に施策を実行できるよう、政府が持つ情報や学識経験者の意見を提供し、最大限の支援を行うこと。
五 特定都道府県知事及び特定市町村長並びに指定公共機関及び指定地方公共機関は、新型インフルエンザ等緊急事態措置を実施したときは、遅滞なく、その旨及びその理由を政府対策本部長に報告すること。政府対策本部長は、報告を受けた事項を取りまとめるとともに、緊急事態宣言の実施状況について、適時に国会に報告すること。
六 課題の共有・解決に向け、与野党に対して必要な情報共有を適時、適切に行うとともに、与野党の意見を尊重して施策の実施に当たること。
七 新型インフルエンザ等が周期的に発生することに鑑み、政府対策本部、都道府県対策本部及び市町村対策本部等においては、新型コロナウイルスの感染拡大をめぐる事態が行政文書の管理に関するガイドラインに基づく「歴史的緊急事態」に指定されたことを踏まえ、特に、緊急事態宣言の決定に至り得る場合においては、会議録等の経過記録と科学的根拠となるデータ保存に万全を期し、国民への説明責任を果たすとともに、海外関係諸機関との情報共有を行い、次代への教訓として活用できるようにすること。
八 各種対策を実施する場合においては、国民の自由と権利の制限は必要最小限のものとすること。また、関係機関に対しても、その旨徹底すること。
九 放送事業者への指定公共機関の指定は限定するとともに、感染症に関する報道・論評の自律を保障し、言論その他表現の自由が確保されるよう特段の配慮を行うこと。
十 必要と認められる者については、早期にP C R 検査を実施するとともに、健康観察を行うための体制を確立すること。
十一 今回の事態により、大幅なマイナス成長になる可能性が極めて高いことを前提に、消費と雇用に重点を置いた万全の金融・財政政策を講ずること。その際、サプライチェーンの寸断等や風評被害を含む顧客の大幅減少により大きな経済的影響を受けている中小・小規模企業、個人事業主・フリーランスのうち、新型コロナウイルス拡大に伴う減収が一定程度を超える事業者に対して、事業継続が可能となるよう特に配慮すること。
十二 小学校等の臨時休業により、仕事を休まざるを得なくなった保護者等への支援策や、放課後児童クラブ等の子供の居場所の確保に万全を期すること。
十三 特措法第四十五条における施設利用等の制限要請等を行う政令については、消毒液の設置、人数制限等のより人権制約の度合いの小さい措置が可能であることを明示し、集会の自由等の人権が過度に制約されることがないようにすること。その際、感染症の専門家及び現場の意見を十分踏まえること。
十四 特措法第四十五条における施設利用等の制限要請等を行うに当たっては、その実効性の一層の確保を図るため、当該要請等によって経済的不利益を受ける者への配慮を十分に検討すること。
十五 企業及び個人( 奨学金を含む。) に対する貸付条件等について、国から金融機関等に対して柔軟な対応を要請すること。
十六 生活や経済に支障が生ずる国民や企業が相談できる窓口を開設し、ワンストップで各種支援制度の申請手続が行えるよう早急に検討すること。その際、緊急的かつ深刻な経済情勢に鑑み、申請手続における提出書類や各種条件を極力簡素化するとともに、審査は迅速かつ合理的に行うようにすること。
十七 過去の経験に照らせば、新型コロナウイルス感染症の影響が、健康問題にとどまらず、経済・生活問題、さらには自殺リスクの高まりにも発展しかねない状況となっていることを踏まえ、政府は一人の命も犠牲にしないという強い決意の下に、全国の自治体と連携し、自殺対策( 生きることの包括的支援) を万全に講ずること。
十八 国民、企業などが、不必要な混乱を避け、冷静で的確な行動がとれるよう、科学的見地からも正確で必要十分な情報発信を適時、適切に行うこと。特に、医療従事者、高齢者、障害者、学校関係者、訪日・在留外国人、海外等への情報発信及び相談・支援体制の構築には最大限留意すること。また、ウイルスの肺以外の臓器や血液への影響、排泄物を通じた感染、動物への感染などについて、医学的に検証し、その結果についてもきめ細かく情報提供するよう努めること。
十九 農水産品の流通及び輸出入に支障が生じないよう努めるとともに、国産の輸出農水産品について科学的知見を踏まえて対応し、風評被害防止に努めること。
二十 中小企業金融の返済期限、雇用保険の給付期間の延長などについて、東日本大震災に伴って実施された期限延長措置にならい、その実施を検討すること。
二十一 感染症対策を一元的に担い、一定の権限を持つ危機管理組織の在り方( 日本版C D C 等の設置) を検討すること。
二十二 今回の新型コロナウイルス感染症への政府がとった対応について、第三者的立場から、客観的、科学的に検証し、その結果を明らかにすること。
二十三 特措法の適用の対象となる感染症の範囲( 当該感染症に係る法令の規定の解釈により含まれるものの範囲を含む。)について、速やかに検討すること。
二十四 感染国から在留邦人、 邦人旅行者を早期に出国させるため、 出国手段等の確保に万全を尽くすこと。また、船舶での感染症対策について、国際的な協議を速やかに行うこと。
二十五 新型インフルエンザ等対策等については引き続き国際的な連携を図るとともに、特に発展途上国での医療体制や公衆衛生の向上に積極的に貢献すること。
右決議する。
参院内閣委員会 新型インフルエンザ等対策特別措置法改正案附帯決議