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 国民民主党の伊藤孝恵議員は27日、会派を代表して参院予算委員会で政府提出の2020年度予算案について反対討論をおこなった。

 伊藤議員は冒頭、「森友学園」国有地売却問題で、決裁文書の改ざんを強要され、自殺に追い込まれた財務省職員の手記などを紹介し、再調査は必要ないと強弁される安倍総理、麻生大臣はじめ安倍内閣の対応に強く抗議した。

 政府予算案の反対の第一の理由として「歳出予算」が実態とかけ離れているうえ、それを分かっていながら修正する努力を怠ったことを取り上げた。

 新型コロナウイルスの感染拡大への対応について「自粛要請によって、イベント関連事業や外食産業、観光業界のみならず、さまざまな分野の中小企業・小規模事業者への深刻な影響も鮮明となった。いま必要なのは、融資ではなく、返済不要の直接的な資金支援や、年度末における納税・銀行債務の大幅支払い猶予である。一斉休校により、仕事を休んだ保護者への所得補償、特にフリーランスの方々の支援に関しては、とにかく早く、とにかく家計に直接届く、緊急経済対策が必要である」と訴えた。そのうえで、「米国を始め多くの国々が迅速かつ大胆な財政出動に踏み切っているのと比べ、はるかに劣るスピード感、はるかに劣る規模、はるかに劣る具体性」政府の対応を批判した。

 第二の理由として「歳入予算」も実態に合っていないとし、過度に楽観的な経済見通しを前提とした予算である上に、ここには新型コロナウイルス感染症の影響が加味されていないと訴えた。「政府は2020年度の税収を過去最高の63.5兆円と見込んでいるが、この前提となっているのが、570.2兆円という名目GDP見通し。現実では、名目GDP成長率は、昨年7-9月期がプラス0.4%、10-12月期がマイナス1.5%と、駆け込み需要に対して反動減が非常に大きく、年率で見ると10-12月期には30兆円程度のGDPが吹き飛んだ計算になり、見通しの維持には今後3.7%という、非現実的な高成長が必要だが、1-3月期以降は当然、コロナウイルス感染症の影響が顕在化してくる」と予算が経済の実情を反映していないことを指摘した。

 伊藤議員は、予算委員会審議で取り上げられた東京高検検事長の勤務延長問題など、検察と警察の私物化を疑われるような事案に触れ、「偉くなりたい、豊かな老後を送りたい、個人が抱く欲望を逆手にとって、権力の濫用に利用する。一瞬、己の正義を封印すれば優遇される社会。政治や行政の核にいる者が皆、それを横目で見ている社会の行く先など、暗黒です」と断じた。最後に「国民の生命を守るための予算編成と、経済財政運営を抜本的に改めること」を政府に求め、討論を締めくくった。

 討論の後、2020年度予算案は与党等の賛成により可決された。