消費税
①『社会保障と税の一体改革』の評価
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超少子高齢化に対応し、生活者の安心を守る観点から、『社会保障と税の一体改革』の推進は基本的に必要であると考えます。
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消費税率を8%に引き上げた際、その引き上げ分を基礎年金国庫負担割合2分の1の費用に充てたことにより、生活者の老後の安心を確保するとともに、新規国債発行を抑制し、もって財政再建への第一歩となりました。
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高齢になっても人生を楽しめるよう、年金・医療・介護等の社会保障制度の安定性を確保し、安心を守らなければなりません。
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一方で、支え手となる子どもの減少への対策も打たなければなりません。また、子どもの未来のためにも、質の高い教育を確保しなければなりません。
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そうした施策を継続的に講じるためには、巨額の安定財源が必要です。しかし、年金・医療・介護等の社会保障制度にかかる費用を現役世代だけで支えることもできておらず、借金を重ね、将来世代にツケを回しているのが現状です。
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消費税のウェイトが高まる中、所得課税や資産課税、いわゆる霞が関埋蔵金による財源確保は追求すべきですが、なかなか安定財源を確保しきれません。
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消費税は、景気に比較的左右されない税目であるとともに、全世代で広く分かち合う税目であり、それを社会保障や教育等で国民に還元する公平なシステムを確立することにより、国民の納得と理解が得られると考えます。
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その意味で、超少子高齢化への対応を講じる観点から、『社会保障と税の一体改革』の推進は基本的に必要であると考えます。
②消費税率についての考え方
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消費が低迷し、景気も足踏みする中、今、消費税率の引き上げを行うべきではありません。
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消費税率引き上げの際の前提である、社会保障の充実・教育の負担軽減、議員定数削減・行政改革、家計支援対策を実施することも十分ではありません。
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軽減税率は混乱をもたらすだけであり、逆進性対策は「給付」で行うべきです。
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今後の引き上げについては、景気の動向を踏まえ、判断されるべきです。
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消費税率引き上げによる増収分については、社会保障の充実、質の高い教育の確保を含む子育て支援等、生活の保障に充てるとともに、年金・医療・介護等の社会保障費の不足分に充て、財政の持続可能性を高めます。
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消費税率引き上げの際には、立法府としては議員定数削減等の政治改革、政府としても行政改革を実施します。
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また、経済環境の整備や国民生活の向上が進んでいなければなりません。「家計支援」を重視した消費税率引き上げ対策の実施が前提と考えます。
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軽減税率制度は混乱をもたらすだけであり、逆進性対策は「給付」(給付付き税額控除)で行います。
所得税
①「日本型ベーシックインカム構想」
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所得再分配機能の強化、格差の固定化防止等の観点から「日本型ベーシックインカム(基礎的所得保障)構想」を提唱します。
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所得再分配機能の強化、格差の固定化防止等の観点から、「所得控除」から「給付」(給付付き税額控除)へと税体系を大きく変えていく「日本型ベーシックインカム(基礎的所得保障)構想」を提唱します。
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給付を社会保険料の支払いと相殺すること等により、実質的な可処分所得を底上げするとともに、無年金者、生活保護世帯を減らします。
②職業の違いによる不公平の是正
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職業の違いによる税制の不公平を是正する観点から、給与所得控除を見直しつつ、どうしてもかかる経費を実額控除の対象としていきます。こうした措置は、確定申告の機会を拡大し、国民の納税者としての意識を高めることにもつながります。実額控除拡大の第一歩として、特定支出控除を拡大していきます。
③給付及び所得税減税 【家計支援対策】
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消費税は全世代で広く分かち合う税ですが、所得の少ない家計ほど収入に占める税負担割合が高くなるため、「逆進性対策」が必要です。
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消費税率引き上げの際の「逆進性対策」には、軽減税率ではなく、所得に応じ恒久措置としての「給付」を行うべきです。これは所得税減税に給付を加え、ハイブリッドで組み合わせた「給付付き税額控除」の導入により実施し、課税最低限以下の世帯も支援します。
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軽減税率は、食料品を持ち帰るかその場で食べるかで税率が異なる点、対象品の線引きに根拠付けが困難で不公平や利権が生じる点、消費者を混乱させ、事業者に過度な負担をかける点、などから反対です。また、高額な財・サービスを購入できる人ほど軽減額が大きくなるなど、「逆進性対策」として適当ではありません。
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また低所得者への対応として、年金給付金の最低月5,000円への増額、総合合算制度の導入を進めます。
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前述の低所得者への給付とともに、消費税率引き上げの際には、特に給与所得者・個人事業主等の分厚い中間層を支援するため、臨時的な2年間の激変緩和対策として、定率減税など「給付・所得税減税」を実施すべきです。
④所得再分配機能の回復
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一般の家庭が少しでも余裕を実感できるようにする一方、富裕層には応分の負担をしてもらい、そのお金を社会に還元します。
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NISA等の拡大により、家計の金融資産形成を応援します。同時に、高所得者層は金融所得の割合が高いことから、金融所得課税により所得再分配機能を強化します。
⑤子育て支援等
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ひとり親家庭支援の観点から、寡婦(夫)控除については、未婚の方も対象とする改正を早急に行います。
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子育て・教育支援の観点から、教育無償化の進展状況も踏まえつつ、民間教育費等の実額を所得控除できるようにする見直しを行うこと等により、家計支援を充実させます。
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自助努力を支援・促進するため、生命保険料控除制度について、今後の社会保障制度の見直しに応じ現行制度を拡充します。
法人税等(企業負担のあり方)
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中小企業の社会保険料事業主負担軽減や雇用促進税制拡大等、企業活動を支援し、従業員の手取り増につながる政策を実施します。
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法人の7割が赤字であり、赤字法人には法人減税の恩恵が及びにくいのが現状です。地域の雇用を支える企業を応援する観点から、中小企業・小規模事業者の社会保険料事業主負担を軽減する法案を成立させます。
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余裕資金の労働者への還元をより促すため、賃上げを行った企業とそうでない企業との間で、法人税率に差をつけます。
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法人税については企業によってバラツキがあるとの指摘もあることから、有価証券報告書などに加えて、透明性を確保していくことも課題と考えます。
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国際協調を進め、法人税の引き下げ競争には与しません。一方で、わが国産業が厳しい国際競争を勝ち抜いていくため、研究開発税制などの拡充を図ります。
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「GAFA」と呼ばれる巨大IT企業などがビジネスを展開し利益を上げている国でほとんど納税していない実態を踏まえ、国際社会と協調してタックスヘイブンの悪用などの課税逃れへの対策を強化していきます。また、国際金融取引に係る課税制度(いわゆる国際連帯税)について検討を行います。
自動車関係諸税 【家計支援対策】
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自動車重量税の「当分の間税率」廃止、自動車重量税の国分の本則税率の地方税化、「新自動車税」「新軽自動車税」への簡素化により、1.5t未満のマイカーであれば1台当たり4,800円/年の減税を実施します。
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地方ほど生活必需品である自動車に対し、9種類もの不条理で過重な税を課している現状を抜本的に改め、ユーザー負担を軽減し、家計を支援する必要があります。
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自動車関係諸税は重要な地方財源であることにも留意が必要です。
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そこで、以下の通り、自動車関係諸税の改革を行います。
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【ユーザー負担軽減】自動車重量税の「当分の間税率」は廃止します。
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【地方財源の確保】自動車重量税の国分の本則税率は地方税化します。
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【簡素化】各税目を統廃合し、「新自動車税」「新軽自動車税」に集約します。
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上記改革により、1.5t未満のマイカーであれば1台当たり4,800円/年の減税になります。
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国としては0.4兆円の税収減となりますが、別途財源を確保します。
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自動車の任意保険についても、控除の対象とし、ユーザーの負担軽減を図ることを検討します。
住宅関連税制等 【家計支援対策】
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一部屋増やす余裕ができるような住環境の改善を図るため、賃貸に住む方々への負担軽減を実施します。
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マイホーム購入のため、包括的な「住まい税負担軽減パッケージ」を導入します。
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家賃は消費税非課税ですが、消費税率引き上げを口実にして、既存物件の家賃便乗値上げが起きないよう、対策を講じます。また、引き上げ後に貸主が貸家購入時に支払う消費税や固定資産税などが、家賃に価格転嫁される可能性は高いと考えられます。
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マイホーム購入のため、本来であれば住宅は消費税を非課税とすることも検討すべきですが、消費税の制度上、非課税としても累積した負担は消費者の負担とするか、販売側の負担とするかしかありません。消費税は、例えば価格3,000万円の新築物件のうち建物等の価格が2,000万円なら、消費税10%時には200万円にも及びます。そのほかにも、登録免許税、印紙税、固定資産税、不動産取得税等の諸税、登記手数料やローン保証料等の諸経費が数十万円単位でかかり、大変大きな負担となっています。
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政府与党が、軽減税率制度を導入するならば、大きな買い物となる住宅こそ軽減すべきです。しかし、軽減税率は制度自体に問題があることはこれまで指摘してきた通りです。
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そこで、不動産取得税・登録免許税・固定資産税軽減、すまい給付金拡充、住宅ローン減税、投資型減税拡充等、包括的な「住まい税負担軽減パッケージ」を導入します。
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空き家対策について、平成27年度、28年度税制改正で措置が講じられましたが、今後の空き家数の推移を見つつ、見直しを検討します。
相続税・贈与税
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雇用を支え、地域経済の中核となっている中小企業や、地域の医療を支える医療機関等の事業承継の円滑化を推進するため、10年限定の特別措置となっている事業承継税制の恒久化及び免除措置の創設を行います。
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国民民主党が主張してきた個人事業主の事業承継制度は、平成31年度税制改正で創設されました。
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昨今、経済政策の観点から、相続税は課税強化が行われる一方、生前贈与を促進する制度の創設、拡充が行われてきました。
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2013年に相続税の課税強化を行いました。一方、生前贈与を促進することにより経済活性化を図りました。
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引き続き経済活性化の観点から生前贈与について検討を行いますが、生前贈与を促進すれば、若年世代の格差が拡大することに留意が必要です。
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雇用を支え、地域経済の中核となっている中小企業や、地域の医療を支える医療機関等の事業承継の円滑化を推進するため、10年限定の特別措置となっている事業承継税制の恒久化及び免除措置の創設を行います。
医療・介護の控除外対象消費税
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医療・介護は消費税が非課税となっています。一方で、設備や医薬品等の仕入れには消費税がかかります。特に、高度医療機器や建設費等の消費税負担は大きくなっています。
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医療・介護の価格が自由に決められるのであれば、仕入れ時の消費税負担をあらかじめ価格に織り込むことはできます。しかし、診療報酬・介護報酬は公定価格であり、そうした負担を価格に転嫁できません。
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医療機関・介護施設等の控除対象外消費税問題については、課税対象とせずに、仕入れにかかった消費税の還付を含め適切な措置を講じ早期に解決を図ります。
地方税財政
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地方への再分配の観点から、税源の偏在性の是正は重要な課題です。平成30年度改正において、地方消費税の清算基準の見直しを行い、税収をより適切に最終消費地に帰属させるための見直しを行いましたが、大都市と、そうではないところの財源の奪い合いという構図では、根本問題の解決には至っていません。
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地域主権改革実現のため、基礎自治体を中心に、財源・権限の移譲、課税自主権の拡大、国が地方の財源の偏在を調整する地方交付税改革を進めていきます。
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地域の様々な知恵を活かし、活力ある地方を取り戻すという、本来の地域主権改革を果たさなければなりません。
新しい公共税制(寄付金税制)
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全ての国民に「居場所」と「出番」が確保され、市民や企業、NPO等様々な主体が「公(おおやけ)」に参画する社会を再構築していくことが重要です。クラウドファンディングやソーシャル・インパクト・ボンド等、続々「新しい公共」の新形態も芽吹き始めています。
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そこで、新しい公共の担い手を支える税制をさらに拡充します。現物寄付へのみなし譲渡非課税特例の対象化等、NPO等に対する支援税制(市民公益税制)について改善を図り、大学等に対する寄附金税制を充実させていきます。
災害復旧・復興支援税制
①「災害損失控除」の創設
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近年、大きな災害が多発していることを踏まえ、雑損控除から災害による損失控除を独立させ、「災害損失控除」を創設します。「災害損失控除」は、それ以外の所得控除等を適用した上で、最後に適用する結果、所得税の負担軽減となります。控除しきれない金額は雑損控除同様に繰り越しができるものとします。
②ボランティア活動支援税制
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被災地支援のため、ボランティア活動を行うには、交通費等少なからぬ実費も掛かります。
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そうした活動を支援する観点から、自己負担分について税額控除を行うボランティア活動支援税制を創設します。
③火災保険等に係る異常危険準備制度の充実
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巨大自然災害への保険金支払いに耐えうる異常危険準備金残高の早期回復等のため、積立率・洗替保証率の引き上げ等の措置を講じます。
課税の公平性・利便性の確保
①金密輸への対応
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消費税の脱税を目的とした金密輸入が近年急増しており、相当程度の利益が犯罪組織等に流れているおそれがあります。
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また、密輸された金が輸出される場合、納められていないのに消費税が還付される現状があります。
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国に二重の損害が生じており、消費税率引き上げの際、この問題はさらに拡大します。
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水際対策を強化し、税関と国税庁の連携を強化するとともに、金輸出を担う商社に対し、入手ルートが不明な金の取引は慎重に相手先を調査する等、犯罪の抑止への協力を求めます。
②価格転嫁対策
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適正な価格転嫁や価格表示の改訂が円滑に図られるよう、価格転嫁対策に万全を期します。
③新しいビジネスへの対応
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近年、民泊、カーシェアリング等、シェアリングエコノミーが広がりを見せています。
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こうした新しい働き方により得た所得は、本業としてでも、副業としてでも、確定申告を行う必要がありますが、そのことが一般に知られているとは言い難い状況です。
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確定申告制度の周知に努めるとともに、確定申告がしやすい環境を整えるため、現在は手続きが煩雑かつ初期費用がかかるe-Taxの改善を図ります。
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広がりつつある仮想通貨(暗号資産)等についての課税のあり方についても、上場株式等譲渡益が分離課税となっていることとの公平性や、商品を購入した場合の確定申告の煩雑さが指摘されていることを踏まえ、検討を行います。
④急激な所得減少への対応
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前年より大幅に所得が減少した方についても、住民税は前年の所得を基準に課税されるため、大変重い負担となっております。
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そうした方々の再チャレンジを応援する観点等から、住民税の現年課税化が理想ですが、現年課税化は税務上困難です。
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そこで、前年の所得税を返すことで所得税負担を平準化する制度を導入します。
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前年より大幅に所得が減少した場合、前年と当年の所得を合算して割り算をし、所得税を計算し直して還付等の対応を行います。
⑤印紙税のあり方
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印紙税については、税制抜本改革法7条に基づき、建設工事の請負に関する契約書、不動産の譲渡に関する契約書及び金銭又は有価証券の受取書(百貨店や飲食店等での領収書を含む)について負担の軽減を検討します。
その他
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「衆議院・参議院における税制小委員会の設置」、「国税1本、地方税1本と大括りで提出される税制改正法案の見直し」等、税制改革議論のあり方を見直します。
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租税特別措置等については、「租特透明化法」による国会報告に基づき、効果が不明なもの、役割を終えたもの等は廃止し、真に必要なものは恒久措置へ切り替えます。
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揮発油税のトリガー条項復活による負担軽減については、今後の原油価格の動向を踏まえながら、財政再建も考慮しつつ、設計(実施)します。